チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

#着物を繋ぐもの 47

2018年11月10日 17時16分29秒 | 日記
紅花染を知ったのはカネボウのポスターのスタイリストをしていたときだ
紅花の口紅は毒を殺菌する力があるとか
紅と金は同じ価格とか
古代紅は皇后の色だったとか
中国の皇帝は亡くなったとき全身を紅花で塗るとか(肉体が腐らない)

着物のポスター撮りをしているんだが
かねぼうの宣伝部の男たちはいろいろと紅花について知識を授けてくれた

紅花長者が居るという最上川流域特に山形に近い場所に取材に行くことになった
暑い日であった
その頃はもう365日着物を着るという実験期間だったので
暑い暑い日差しにもめげず着物を着てベニバナ畑を視察し
その紅花からどう紅を作り出すのか米沢の工房を尋ねる

まだ朝露のあるときに紅花を積み
それを水に浸して花をバラバラにししばらく足で踏んで臼で搗く
搗いて固まったら手で煎餅狀にするそれが紅花餠
それを天日で乾かし保存

一週間もいてその一連の作業を邪魔しながら手伝う
手が赤く染まりその後つるつるして色が白くなった感じがした
この紅花餠は保存がきくので夏の取材はそこまで
ここから口紅や食紅の工程と染織に分かれていく

染織の取材をしたいと宣伝のお兄さんに相談したら
滞在中に赤崩にある草木染工房を紹介してくれて早速尋ねる
「草木染めと名乗っているからには山崎斌さんか青樹さんとご縁のある方かな?」
やはりそうだった「山岸幸一さんとその師匠」おふたりとも山埼青樹さんを師と仰いでいた
「なんだなんだ」ともう100年の知己のように案内者をすっとばして草木染談義になっていく

「紅花染めはやはり寒染めに限るんですよ、この紅花は寒の入りから溶かします」
ということで小寒に入ったらまた伺うと約束する

あたり一面真っ白
その中に黄色と紅色の糸がほし竿に吊り下げられて寒風に揺れていた
約束通り小寒にやってきた
白と黄色と紅色に歓迎されその夜は紅花染めの実習

夜11時から準備をし明け方夜が白む頃に染め上げ
近くの小川で水すすぎ
日の出とともに糸を干す

紅花を染めるときは毎日がこの日課
初日は勇んで付き合ったが三日目は「もうごめん」と半分おこたでうたたね(根性がない)

紅花には2つの色がある
初めは黄色その色を先にとり紅色は全体の2割
人によっては1割しか取れない場合もあるという
貴重なのだ、高価なのだ、手間がかかるのだ、他の植物染料と格が違うのだ

しかも寒の水で染めて初めて色に艶が出るし退色もおだやか
ここまで手を煩わせても紅花は尊い
なぜなら殺菌効果、保温効果が高く、紅花療法というのもあり血液の病気の人には救世主であったらしい

ここでチャコちゃん先生はひらめいた
紅花染めは直接肌につける下着に一番
それ以来湯文字肌襦袢を寒染めしてもらっている



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着物が繋ぐもの 46

2018年11月09日 17時28分22秒 | 日記
着物の何を繋いでいくのか
深く考えてしまう

養蚕農家の減少
日本の絹の生産は風前の灯
いま現状にある着物の殆どの絹は中国やブラジルのもの

最近は育てたところではなく
糸の加工すれば「日本産」という名前がつくらしい

それと別に純然たる日本の絹を「日本の絹」としてラベルがはられている
日本の絹よその絹に比べて数段良いものだと胸を張ることができるのだろうか?

日本は昭和40年代を境に世界一の生産を誇った地位から落ちた
今は全世界の生産国の下の方になっているというより国名が上がって来ない
がしかし絹の消費国としては世界ランキングは上位にいる

先日養蚕農家の研究者と懇談をしたが
思いがけず「ナカタニさん驚いてはいけません全世界で生糸の生産量は中国の次が北朝鮮ですよ」
さもありなんとチャコちゃん先生は驚かなかった

北朝鮮に養蠶の技術をしっかり教え込んだ企業があり
おそらく北朝鮮はその優秀な技術をきちんと守っているのだと思っていた
桑はいろんな気候に合う種類がありその桑を日本から持っていっている
北朝鮮の絹はきっと日本の絹のように美しいのだろう
「見に行きたいでうね」

ブラジルの生糸もそう日本の技術者が精魂込めて伝授した
そのため白生地を専門にする方は
「今はブラジルの糸が世界で一番いい」
とまで言う

日本では繊維会社ではない別の企業が養蠶を始めている
「無菌養蠶」
蚕を無菌状態の部屋で一年中飼育する
桑は粉末にして人工飼料
こちらも何社か取材した
「良い糸を作る」というよりサプリメントや化粧品の材料としてのかいこの姿がある

しかし蚕は蛹になるとき糸を吐くので当然繭は残り糸にすることはできる
その糸を触ると風合いが少し違う
でもシルクの光沢は残る
糸の量産はできるだって一年中蚕に糸をはかせることができるから

こういう現状の中蚕の運命はどうなっていくのだろうと思う
もともとは蚕は桑の害虫として存在していた
繭を作り底の中に入って命を保ち蛾になって交尾し卵を生み命をつなぐ
その繭から糸を取り衣類にしたのは人間

その人間は次なることを考えて行動をしている
これを宇宙が許しているとしたらそうなっていくのだろう
最近こんなことをあれこれ考えていると
人智で残すものって無いのかもしれないと思ってしまう

悩みの中にいるチャコちゃん先生

#北朝鮮 #繭 #蚕 #無菌飼育 #養蠶 #ブラジル #中国 #蛹 #桑


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着物が繋ぐもの 45 

2018年11月08日 17時25分49秒 | 日記

決めた
今日は新月新しいことを決心するといいと聞いた
どう生きていくか青写真を作った

着物に携わって55年になる
この間逃げようとしても逃げられなかった
すごい年月だ
その間20年間は365日着物を着て過ごした(えらいよ)
だからこそ言えることがある
だからこそやれることがある

それはなにかといえば

24時間着物を着ていても楽で着崩れない着付けのコツ

これをこれからの歳月伝えていこうと決めた
チャコちゃん先生は着付けを極めたと思う
だってあらゆる素材を着てきたもの
更に色んな色のものを身に着けてきた
様々なコーデイネートを楽しんだし、いろんな着付けもやってみた

何も大変なことではなく
昭和初期までに生まれた日本の女がみんな身につけていた着方だ
それがかの敗戦以来なんだかややこしいことになっている
着物を着た多くの人たちが苦しいという

どうして?

着るのが面倒だという
だって5分できられるのに
初めて着物を着た若い子が「早く脱ぎたい」という

どんどん着物の着方が難しくなり
逆に洋服はどんどんカジュアルで下着のような洋服でも一流ホテルに入れるようになっている
こういう時代にどうして着物の着方を複雑にしてしまうのかチャコちゃん先生は理解できない

コスプレのような感覚で長襦袢をおモテギのようにして歩いている女の子を渋谷の歩道で見た
チャコちゃん先生の美学に反して素敵とは思わないけど
これも時代なのだと受け入れる

また本場結城紬を着ていて柄足袋を履いたり色半襟を付けている女性にもあった
色足袋を履くのは女中か女学生だった
でもそれもありと受け入れる
しつこく「どうして色えりなの?柄足袋なの?」と聞いたら
「私は口紅をつけないから顔が寂しいから色襟」
「なるほど」

だって室町時代や桃山時代はもっとすざましい破廉恥な着方が流行っていたもの
しかも男も女も一般人は思い切り弾けている
しかし上流社会の貴婦人達はオーソドックスこそ美しいというスタンスだ
階級制の社会ではそれでいい

これから変革の社会の中で
宇宙(神と言ってもい)はこの地球に必要のないものは消していくだろう
人の力なんて何の役にも立たない
人間は楽しく生きていればそれが正しい道となる
そういう時代がやってきたとき(もう来ているのだが)

ややこしい着物の着方をしていたら宇宙に取り上げられてしまう
人間の細胞すら変わっている
最近生まれる赤ちゃんの顔何もかもご存知の表情だ

ややこしいのはもう時代に合わない
やっとこさチャコちゃん先生の出番だね

お話どこでも行きますよ

#着物 #色襟 #柄足袋 #宇宙 #細胞 #本場結城紬 #長襦袢 #破廉恥 #安土桃山 #室町時代 #着付け #美学
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#着物が繋ぐもの 44

2018年11月07日 17時31分57秒 | 日記
どうもおかしいと思ったら左前に着ていた
朝6時の新幹線に乗った
中央線の急行が走っていないので総武線で東京駅まで
そうすると家を5時に出る
その頃は髪が長かったので結い上げるのに時間がかかる
そのため4時に起床

若いときは朝がきつい寝ぼけ眼で着物を着ていく
着物を毎日着ると決心して一年が過ぎていた

新幹線が東京駅を出発した
ぐっすり居眠り名古屋で目覚めトイレに行った
席を立ったとき足がもつれた「うん?」
トイレに行ったらなんと!
裾がめくれない!?!

「ややや?」
有ろう事か今日は左前に着物を着ている
すっかり目が覚めた
あの狭い洗面所で右前に着付け直す
「ああーーー良かった気がついて」
このまま京都に行き問屋さんに出向いたら目ざとく見つけられて笑いものになる
初めて本も出したばかり冷汗ものだ

着物の仕事を始めたばかりの頃
高松塚の発掘があり各新聞がカラー写真で大々的に発表をした
その時目についたのが女性たちを描いた壁画の女たちの襟合わせが左前だった
下は5色のスカートを履いているが
上はキモノスリーブのような今で言う半襦袢のような上着だ

「うわ~左前だあーー」
とびっくりして朝日新聞の友人に「オタクの写真逆版よーー」
「えええ~」と大慌て
しばらくして
「チャコ他の新聞も見た?」
「いいえ」
「みんなお前の言う左前だよでもそれがあってるらしいよ」
「何で左前が正常なわけ?」
「調べろよチャコの分野だろう?」

さーーて
この高松塚は奈良時代だその頃のことを調べればいいのだなと検討をつけ
図書館に行くと突然目に入ったのが律令政治の本
「目についたから見てみよう」なんたって雲をつかむような話だから自分の直感に頼るしか無い

なななんと!
養老律令の中に「天下!百姓皆右襟ノコト」という条文を見つけた!
つまり身分の高い人は左前の襟合わせということで当然高松塚に描かれた女性たちは身分の高い婦人

左前というのは前身頃が自分の左側が先に体につくということ
何事も左が位が高かった
右大臣より左大臣のほうが上とか
尾頭付きは頭が左、ご飯は左でおつゆ腕が右

死んだ人が左前に着物を着るのは
亡くなってから人として位が上がるから

いやはや時代が下がると左遷とか会社が左前で危ないとか悪い方に使われ始めている

チャコちゃん先生かの国営放送で動きの激しい子供の着付けをしたときうっかり襦袢だけ左前に着せて以降ブラックリストに入っているらしい(笑)

#着物 #左前 #襦袢 #養老律令 #高松塚 #奈良時代 #律令政治 #直感 #図書館 #尾頭付き #右大臣 #左大臣 #襟合わせ #朝日新聞 #東京駅 #新幹線 #総武線 #左遷





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#お人好し

2018年11月06日 20時48分52秒 | 日記
人がいいと言う言葉は良くないらしい
「私は良い人間になりますありがとう」
と申し述べると身体中の細胞が綺麗になるのだとある人に教えられた

日本語は言霊なので楽しい言葉嬉しい言葉を使っているとその人の周りが幸せになるのだと聞いた
そうしてみんなを喜びの中に包みこめば戦争など起きない

でもそう言う人をお人好しと言うのだそうな
そうだろうか

お人好し
よくわからない言葉だ
今日はずっとこの言葉の意味を考えながら電車に乗って居た

どうもお人好しと言う言葉はその人を軽んじたり軽蔑している言葉らしい
「あの人お人好しだから騙されるのよ」
うーーん自分がないと言うこと?

チャコちゃん先生はお人好しだそうだ
もっと利口になりなさいとも言われる

お人好しって何だろう?

お人好しって自分を大事に思うから人も大事にする
自分を騙さないから人も騙さない
自分を傷つけないから人も傷つけない
自分自身を褒めるから人も褒める
まず自分ありき
それがチャコちゃん先生のお人好しと言う意味

# チャコちゃん先生# 褒める#利口#言霊
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着物が繋ぐもの 43

2018年11月05日 16時09分20秒 | 日記
風がひんやりすると結城紬に手を通したくなる
母の懐の暖かさという感覚が結城紬にある

チャコちゃん先生の母は一年をほとんど着物で通していた
幼い頃座っている母の膝に登る
そのときつるつる滑る着物が大島紬
おしりが暖かくなるのが結城紬だった
ということは後に姉が教えてくれた

お尻感覚というのが面白い
大島紬を着ている母の膝には長時間駐在できないので父のところに行く
父は茶の間にいる時間はあまりないが父が座るとめがけていく
父の家庭着に大島紬も平織りの紬もなく
だいたい結城紬のような真綿紬が多いので父の膝は滑らない
時々あぐらを組むと座ってるこちらが落っこちるので不安定になって膝から去る

姉の膝にも乗っていた
お稽古から帰ったあとちょっと座ってお茶を飲んだりしているとき
つつつと膝に乗る
先日姉の遺品の中からその時の写真が出てきてびっくり
姉が着ていたのはお召であまり滑らないけど長居はさせてもらえなかった

その時の遺品の中から姉がお点前をしている写真もあり
それがなんと大島紬の振り袖を着ていた
飛び柄で華やかな感じが白黒写真でも伺える

前に「大島紬で振り袖を作りましょう」と提案したけど即却下
姉のこの写真を見たら当時反対した人の考えも変わったかもしれない

昭和40年後半から着物についてのあれこれを論じる人が増え
いろんな決まりをつけていったのは残念だ
こういう自由な感覚の写真はそれぞれのご家庭にあるはず
みんなでおおらかに着物を楽しみたい

さて
末っ子は誰の膝にも乗る
しかし父や姉たちが洋服を着ているときは膝にのらなかったそうだと姉は言っていた

着物には安定感があったのだろう
そして尻感覚の最高の着物が結城紬であった
皮膚感覚は疎かにはできないとつくづく思うものである

今頃の季節になるとその当時の我が家の風景を思い出す
おしりが着物に馴染んでいたにもかかわらず
着物を全く着ない青春であった
しかも一生着ないだろうと思っていた

みいつ語の魂100までというが
案外この尻感覚が着物の素材の本質を覚えていて
チャコちゃん先生を潜在意識の奥の奥の方から突き動かしているのかもしれない

そう考えると赤ちゃんのときの経験はどんな年代になっても生きているということだ
幼児体験をもっと思い起こすと本当の自分の使命が簡単に理解できるかもしれない

#着物 #使命 #結城紬 #大島紬 #膝 #お召 #魂 #素材 #幼児体験 #真綿紬 #振り袖
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#友と

2018年11月04日 18時09分25秒 | 日記
「友とは淡く付き合い深く思いやる」
という姿勢で今日まで来ている
そういう付き合い方をしたくない人は自然に去る

人の話は聞いて聞いて聴きまくる
自分のことは話さない
幼いときから聞き役に回っていたように思う
そのため情報がふんだんに集まる
その情報もほとんど素通りして自分が興味あるものだけが残る
取材という立場ではこの聴くという姿勢がプラスになったのだと思う
しかし仕事の話になると饒舌になる

聞いてよ聞いてよと仕事で得た知識を情熱的に話す
黙って人の話を聞いているときと一気に違う人間になっていく

反面自分のことをあれこれ話すのは苦手
自分のことはいつも計画的に自分で壊している
だから話す時はもう現実がないということになる
自分を語らないのは語るものがもう過去になっているから話が古くって話すまでもない

心ある友人たちはそういう姿を肯定して静かに付き合ってくれる
幸せだと思う

久しぶりのお休み
友が自分でこしらえた弁当を持って来てくれた
4時間ほとんど友の話を聞いている
それがまた楽しい
その中で学ぶべきことがいっぱいあって有意義な時間

友は私の現状に思いを寄せてポイントで質問してくる
それもまた古き良き友だなと感嘆する
友は良いなあ

#弁当 #良き友 #取材

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歩行者天国

2018年11月03日 18時04分03秒 | 日記
久しぶりに銀座の歩行者天国を眺めた
喫茶店で3時間コーヒー一杯で良くも粘るものだ

その前に今年はじめて竹葉亭の鰻を御馳走になり
「お茶は私が」
と言って友人ご夫妻を案内したところが歩行者を観察する特等席
今日はうちに泊まった夫妻とお喋りをするだけのつもりだったからすっぴんジーンズという出で立ち
銀座など恐れ多くて行ける格好ではない

もともとは麹町の秋本で鰻ということだった
不思議なことに新宿区内はすっぴんでいいと思うチャコちゃん先生がいる
ところがそちらは休み
もう口の中が鰻になっているので急遽銀座竹葉亭となってしまった

銀座は人の波
日本人が4割程度あとはほとんど他所の国の方
そのフアッションを眺めている内3時間と相成った

ほろほろと目を瞠るような素敵なマダムが歩く
もちろん日本人「いい女ねえ」と言いながらその歩き方を観察
健康にも豊かさにも自信が伺える

時々着物姿の婦人たちプロの目で見てしまうので批評は控える
この時期の着物姿はいいなあと思う
来ている本人たちが自分の姿を誇らしいと思っている感じが現れていて微笑ましい

日産ギャラリーで1972年のスカイラインが飾ってあり
学生の頃スカイラインを運転し村山貯水池近くで畑に乗り入れて大変な思いをした頃を思い出してしまった

銀座という町もおしゃれして緊張気味に歩いていた時代遅れの懐想にふける
すっぴんでいると景色と一体化する感覚があってリラックスするものだと変に納得

今日は文化の日日の丸の旗が控えめに翻っているデパート
昔流にいえば明治天皇のお生まれの日であった





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#着物が繫ぐもの 42

2018年11月02日 11時26分19秒 | 日記
斎服

明治維新以来本物の斎服が作られていなかった

今回来年の大嘗祭に絡んで斎服を調達することになりあらゆる資料を調べ
また装束の研究家や仕立ての方々に取材してわかったことだ
本物ん斎服を作っていない!
しかも着ている方たちはそれに何の疑問を持っていない!

ひょんなことから女気(男気より向こう見ず)を出し
「私が作りますわよ」
と後先考えず宣言してしまった。
それからが大変

わからない方たちはそこらへんにある白生地を調達して作ればそれで事足りると思っている
そうではない!
こういうことは一生にめぐりあうかどうか女気出さないで女がすたる(バカだねえ)

というわけで現実の斎服の様子を調べた
広幅で袍は50尺 袴は40尺 白衣は33尺
しかも袍や袴はパリッといていないといけないので糊付けをするという

「なぬ?糊付け?」
ここからチャコちゃん先生深みにはまる
糊付けってどれくらいと糊付けされた布を手に取ると
「糸にセリシンがついたままでいいではないの!」と思った
そして過去の資料を調べたらなんと江戸時代前にできたものはセリシン付きであった

そうか
明治維新の富国強兵制度で大量の繭を生産し輸出できる生糸を作るには動力機を動かさなければならない

糸を攝るのも動力機その動力機にはセリシンがついていると糸の通りが悪い
だったらそのセリシンを取ってしまわなければならない
そのため薬品を使ってタンパク質であるセリシンを取り去る
糸のパリ感はなくなる
(このパリ感を着やすいようにする丈布を砧で叩いて調整する、砧っている町名だけが今は残る)

その為新たに張を持たせるために糊付けをする(おかしいよね)
なるほどこれか

「斎服を着る人のためではなく、日本国本来の蚕の育て方糸の作り方布の織方を残そう!」
と丹田に力が入った
「そんなことをしたらいくらお金がかかるのか見当もつかない、馬鹿なことはやめなさい」
と諭されたが、思い立ったらあとに惹かないチャコちゃん先生
死んでもいいという覚悟で突き進んでいる

蚕の種類を決め在来種の桑の葉も定め
更に芽吹きの桑の木を一握りしその下の桑の葉16枚しか蚕に与えないという仲間の力を得て
真っ白い繭ができゆっくりと糸を引き輝くような経糸緯糸を機にかけて無心で降り続けている

今この国に二人といない人との巡り合いは35年の月日を数える
その間の彼の仕事ぶり思考すべてがこれからの日本つないでいかねばならないと思う
その手仕事の尊さが「斎服」という形で未来永劫残ることになった

その橋渡しができることを幸せと思う

#斎服 #繭 #桑の葉 #セリシン #装束 #砧


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#着物が繋ぐもの 41

2018年11月01日 13時40分01秒 | 日記
姑の話の話の続き
「ヒサ子さん今度の悉皆屋さんは伸子張り使ってないわ」
「どういうことですか?」
「アイロンで生地を伸ばしているようなのよ」
「いけないのですか?」
「いけなくはないけど縫いづらい」
「ほおー」

着物は汚れると全部解いて洗う
袖、身頃、衽、襟と端縫いしてもとの一反の布にして洗う
洗ったあと伸子張り(細い丸い竹の先に針をつけその針で反物をを横に伸ばしていく)
この作業はよく母がやっていて近所の子供達とかくれんぼするのにちょうどよい隠れ場だった

洗って12メートルの布を引っ張り横幅を統一するために伸子張りで幅を固定し
そこにふのりという海藻をとかしたもので糊付けして干す
ちょうど今頃の季節は乾燥しているので母は忙しかった家族の着物を洗っていたのだ
普段着は解いて端縫いはせずふのりで洗い洗濯板に貼り付ける
それも近所の子どもたちは面白がって小さい手で手伝う

姑の話から幼少の頃の庭の風景を思い出していた

「伸子張りで仕上げると布の目が平均していて針の通りがいい、しかしアイロンだと目が詰まっているところとそうでないところがあり縫いにくい」
「わかりますなるほどですね、前の悉皆屋さんにします」

芭蕉布を渡したときだった
「ヒサ子さんこれ産まれて初めて触るけどヘラは効かないしチャコもつかない、仕方がないからしつけ糸で仮縫いして本縫いに入るわね、時間がかかりますよ。
それにしてもこの布は普通の本仕立ての着物できるものではないのではないかしら」
「お母さんそのとおりです沖縄では琉装と言って半分引っ掛けたような形の伴天みたいに着ていました」
「そうすると出来上がっても着方が難しいかもねでもヒサ子さんはなんとかするでしょうけどねふふふ」
お見通しだ

「ヒサ子さんこの紬打ち込みが足りないわ、打ち込みがしっかりしたほうを後ろ身頃にするので、柄がいびつになるけどいい?」
「エッそれって人間国宝になろうとする人のものですよ」
「そうなの?結城紬のほうがよほどしっかりしてるわ、この方の膝も出るかもね}
案の定膝は出るわお尻はたるむわ、姑の慧眼恐れ入る

流石に姑のかけるアイロンは素晴らしく図々しく半襟はもちろん下着までアイロンを頼んでしまう
外出から帰ったら必ず着物にアイロンを掛けてくれるだからいつも着物がピンピン
「脱いだときにきちんとアイロンを掛けておくと汚れも一緒に取れるのでねこれ常識」
「テヘッ夕飯の支度します」
いつの間にか姑は私の着物の手入れ番、私は食事係と言う役割分担が決まって
着物にまつわる裏側の知恵をたくさん教えてもらった

#着物 #洗い張り #伸子張り #悉皆屋 #芭蕉布 #姑 #結城紬 #へら #端縫い#身頃
#衽

(つづく)
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