本日は白露、久しぶりの文楽
土砂降りかカンカン照りの妙なお天気、幸い雨にはぬれずにいた一日だった
着物の柄の流行が舞台から起きることは皆様よくご存じだと思う
歌舞伎からはそれぞれ役者の浴衣柄があり、それが江戸時代に爆発的に流行した
そのおかげで浴衣は日常着としての市民権を持った
文楽もそう。今月は「鑓の権三重帷子」近松門左衛門作が第二部
権三格子、権三縞として昔から人気のある縞と格子
主人公の権三が着る着物なのだがご本人はれっきとした武士、しかし色っぽい怪しい場面で格子、また切られる場所では縞という衣裳のおもしろさ。縞と格子は江戸の物と思っていた観客としては、その当時は驚いたであろう
しかし権三はまれに見る美男子で、姿もよく、また鑓の名手と誉れ高く、引く手あまたの人気者。ご本人も名誉欲、出世意欲が強く、その欲のために命を落とすことになるのだが、格子と縞の美男子系の着方がまたいい。遊び人風の着方が権三の優柔不断の気質も表している
この演目を初めて見たときは10年以上も前で桐竹勘十郎さん(当時はまだ吉田だったかな)すっきりとした美男を演じ、その為に誰もが許っておかない妖しい魅力を出していた
その時いい交わしたお雪が、つれない権三に比翼の帯(相手の家紋と自分の家紋を重ねた柄の帯)を渡してその帯を権三は格子の着物に締める。ということは「あなたをめとる、安心しなさい」という意味があるのだが、この帯がその後の悲しい事件を引き起こしていく
というようなことで、舞台で繋ぐ着物や帯のいわれは、芝居の筋のわき役をやったり主役になったりと、その柄の意味を知らないと芝居の深さが半減する
大夫の語る詞も意味深なことが多く、こんな時代になっても文楽を鑑賞する若い人たちが多いのもやはり日本人の遺伝子なのだろうか
今日は白露
まだ薄く透けた着物を着ている人がいた
それもありの日本なのだろう。なんて人事みたいだけどーー中途半端な着方だけはしたくないな
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