チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 83

2019年01月18日 18時12分12秒 | 日記
江戸小紋は「裃小紋」と「おしゃれ小紋」に分けられる
裃小紋は武士の正装だから私達が着ても礼装になると教えられた
しかしいかんせん柄が小さい遠目からは無地に見える
だんだん
生意気になってきたチャコちゃん先生
「ねえもう少し華やかに着たいと思うのそれで総裏柄付きはだめ?」
「楽しみできる分にはいいよ芸者さんたちがよくやってるよね」
「もちろん普段に着るものにそうしたい」
「例えば?」

「この角通しに文久小紋を裏にするというのは?」
「それはいいねただし条件がある」
同じ地色でまとめることそうしないと「お品」がない

菜の花色の地色の角通しに裏は少しくすんだ辛子色の地色が染め上がった
角通しを染める職人と文久小紋を染める職人は違うのでそれぞれ工房につれていってくれてその作業の違いをみせてもらった
表の着物を染めている文久小紋の職人さんに「裏地に染める」ことの失礼さをさり気なく私に伝えているのだ
「すみません」
という殊勝な気持ちでしばらくはおとなしくしているのだが
「こういう風に着たい」という欲望がふつふつと湧いてくる

事もあろうに人間国宝の小紋師のところに行ったとき
「比佐子さん両面染という手法をしっかり見ておきなさい」
「ハイ」
其處までは良かったあまりの美しさと面白さに
 「その型で長襦袢染めてください!」
嬉しくて嬉しくて仕方がないので声も弾んでいる
おやっさん一瞬「うっ」という感じだったが師は「いいさ結城紬など渋い着物にあわせるといいよきっと」
といってくれた
あとでおやっさんに
「ヒヤッとしたよ」
「どうしてえ?着る人がいて初めて染が生きるっていつも仰ってるくせに」
その頃の私は人間国宝だろうが普通の職人だあろうがいいものを染める人がいいのだと思っていた
その長襦袢は未だ健在大好、品が良くて色っぽい今になって人間国宝の凄さがわかる

端午の節句のときに着るということで矢羽の江戸小紋を染め
その時も裏が矢羽小紋(FBにてごらんください)仕立てかえる時
「ぼかし染めの無地を染めて比翼仕立てにしてほしい」
「おおそれは比佐子さんこり過ぎだよどこに着ていくの?」
「人前に立つ時ちょっと改まって見えるかなとおもって」
「そうかそういう立場になったんだねじゃあ一越ちりめんで染めて胸元に格をもたせようね?」
気楽に着るときは染めの帯、改まるときは織りの帯がいいねと妥協をしてくれた

これから生意気ざかりになる私への調教が厳しくなっていく(続く)

# 江戸小紋 #チャコちゃん先生 #織りの帯 #染帯 #人間国宝 #裃小紋

コメント
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