チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 80「

2019年01月13日 09時53分56秒 | 日記
「ばっちゃん死んだ振り袖ケロ」
山形県天童市では「葬式に振り袖を着る」という話を耳にし情報を集めているときその地の呉服屋さんから電話を頂きカメラマンと共にすっ飛んで行った

もう35年くらい前の話だ
現場に着くとまさしく振袖を着た娘がお焼香をしていた
喪主は裃を身につけ故人の夫人は白喪服を着ていた
歴史の様子を見るようで目を見張ったものだ
火葬場まで参列者の行列、しかも餅をまく。その時袋のかに現金が入っている場合もあると教えてもらった

前もって断わり取材の許可も頂いていたので私も喪服を着て参列列の一番最後に付いて火葬場までご一緒させていただいた

道中町の人がお数珠を持って遺体に礼を尽くしている
生活したその場所のみんなに見送られて昇天するのだと心温まる様子だった
其の中に振袖を着た若い娘の姿が人目をひく
長老に話を聞く
「年頃の娘がいることを皆さんに知ってもらうことが1番の目的、そしてこれからの命をきちんと残してくれたことへの感謝の表現」と教えてくれた
(婚活だね)

亡くなった人に敬意を評して正装で送る習わしが続いているとも
喪主は裃 未亡人は白喪服(これは二度と他に嫁ぎません)という意味合いもあるらしい。
家族の中で人手が必要でありこの考え方も家を中心にしていた時代は正論だ

道中餅や現金を配るのは亡くなった人のお礼を意味しているので裕福な家ほどこの行事に力を入れているそうだ

白喪服の美しさと悲壮な姿が目に焼きつく
その中で華やかな振袖姿にホッとする

まさか火葬場の現場にまで立ち会うとは思わなかったが昔は「野焼き」と言ってた遺体を焼いていたらしい。そのため葬儀の儀式は町、村あげての喪に付す感じであったらしい

成人式に振袖を着るという風習ができたのは戦後のことだが
この天童の風習がいまも残っているのかと天童の方に聞いたら
「私の祖母の葬儀までは行列も残っていました」
今は行列こそ途絶えたが葬儀に年頃の娘がいれば振袖を着ているということだった

ああーまだその風習は残っていたかとホッとした
しかし後の言葉「最近はレンタルが多いみたいですよ」
時代だな

#振り袖 #天童 #白喪服 #裃 #火葬場 # チャコちゃん先生 #喪の行列
コメント
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