チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繫ぐもの 79

2019年01月11日 18時39分40秒 | 日記
お正月新年会でのこと
高度成長時代は着物業界も景気が良くて高級料亭で宴会
二次会は高級バー

チャコちゃん先生は二次会に出席することを避けていたが
先輩女史たちから無理無理引っ張られ渋々ついていった
30代、40代は男の酒の席は嫌で嫌で仕方がなかった

週刊誌の記者時代のトラウマがある
タバコの煙がもうもうとした酒席では男は人が変わる
そういう姿を見るのが情けなくて嫌なのだ
男は強くて優しくて賢いと思っていたので姿が変わるともう正視できない

しかしその日は先輩女史たちに背中を押されいやいや高級バーに行く羽目になった
華やかな女たちが叫声を上げて出迎える
テーブルを一つにくっつけて総勢20人が居並ぶ

女学生みたいにジュースとは言えずちびちび飲めるブランデーを注文
ブランデーだと上から継ぎ足すということがないので安心

酔いが回ってきたおじさんたちは「お酌をしろ」と迫る
見ると先輩女史たちはにこやかに色気ったっぷりお酌をして回っている
(あーーやだやだ)
ある産地のお偉いさんがしつこく「お酌をしろ」と迫る
生意気盛のチャコちゃん先生
「私酌婦ではございあません!帰らせていただきます!」
「ちょっと待て君はこれからうちの産地には入れないからな」
「結構ですっ!」

その後本当に干された
その産地に足を踏み入れられなかった
しかしその会社が大きな企業と合併してそこの社長ではなくなってからは堂々と行けるようになった

それから30年
件の社長から仕事の依頼が来た
土地の名士になっていて行政主催の大きな講演会にチャコちゃん先生を指名してくれたのだ
ゆったりとにこやかな老紳士になっていた

ゆっくり静かにお酒を酌み交わしながら旧交を温め今でもお付き合いがある

お互いにあの日のこととそれに続く日々のことはわかっているのだが
日本人独特の水に流してしまう大人の対応
これもまた乙なものだと思った

#酌婦 #酒の席 #料亭 #高級バー
コメント
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