シュロモ・ミンツはもう過去のヴァイオリニストなのか。
チャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールの審査委員、おまけにヴィニャエフスキ国際コンクールでは審査員長まで務めている、なんだかえらい”往年のヴァイオリニスト”なんだ、、、と私なんか思っちゃたりしていた。ところが、あの超絶技巧満載のパガニーニの「24のカプリス」を一夜で全曲を弾くというとてつもないリサイタルのチラシに興奮して飛びつけば、ヴァイオリニストは名声と評判、名前だけしか知らないシュロモ・ミンツ。しかも私の想像では爺さんだったのだが、1957年生まれの50代に入ったばかりのまだまだ若い!魅力たっぷりの?壮年ではないか。(この年齢でご隠居扱いをしたら、calafさまやromaniさまに失礼)
私がこのように年齢にこだわるにもわけがある。ご存知パガニーニのカプリスと言えば、短い時間の音符の中に最も高いヴァイオリンの技巧をダイヤモンドの如く散りばめて、尚且つ高い音楽性を要求される最高峰のヴィルトーゾだけが挑めるヴァイオリン音楽である。たとえて言えば、フィギュアの浅田真央ちゃんが難度の高いジャンプやテクニックを完璧にこなして何曲も滑るかの如く、芸術面も審査されるが体力とある種のカラダの軽さも必要である。今の、真央ちゃんだったら最高の演技が期待できるが、10年後、20年後の真央ちゃんに同じプログラムを期待するのも無理というもの。だから、パガニーニのカプリス全曲などというプログラムをこなすのは、体力・気力とももの溢れ、記録にチャレンジできる運動神経も抜群な若者(五嶋龍クンやってみる?)にまかせてもよいのでは、などと心配もしたりした。
案の定、最初の一発目の音だしから失敗して1~3曲はテクニック・音程も不安定、重音奏のスピカートも雑音が雑じる。これが世界的なヴァオリニストとして有名な、あのシュロモ・ミンツ?1曲終わるたびに、左手をさげて指の疲れをほぐすような仕草をする。しかも、遠目には年齢以上にもっと爺さんに見える。そして無伴奏ソナタの演奏時にありがちな演出として、ホール全体の照明をしぼり、ヴァイオリニストひとりだけほのかにあかりを照らしている効果もあり、拍手もなく会場は不思議な静寂と緊張が支配する。こんなマニアックなプログラムなのにホールはほぼ満席。ヴァイオリンケースをさげた学生の姿に混じり、プロのヴァイオリニストの姿も。そんな期待に応えてなんとか挽回してくれたのが、休憩をはさんだ後半。
前半から一転して、パガニーニ特有のねばりのある魔性を感じさせられる音楽をひきだし、シュロモ・ミンツらしい美音で難所もなんなくクリアー。しかもカプリスにふさわしい自由な雰囲気も感じられる。ようやく本来の実力と音楽性を発揮か。50代に投入して、ミラノ・スカラ座からスタートした「パガニーニ 24のカプリス」世界ツアーの最終公演にあたる。おりしもホールの外は、見事な満開の桜が咲き誇る。ようやくパガニーニにつかまったかと思ったら、終演。
しかし、侮ってはいけなかった。
アンコールで弾いた5番は、目も冴えるようなありえないくらいのとんでもなく速いテンポで、卓抜した高い技術と音楽性を披露。やっぱり、すごいヴァイオリニストじゃん、シュロモ・ミンツ!
一生忘れられない春の夜に感謝。
--------2009年4月7日 紀尾井ホール -----------
■シュロモ・ミンツ(Vn)
パガニーニ:24のカプリース Op.1 全曲
チャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールの審査委員、おまけにヴィニャエフスキ国際コンクールでは審査員長まで務めている、なんだかえらい”往年のヴァイオリニスト”なんだ、、、と私なんか思っちゃたりしていた。ところが、あの超絶技巧満載のパガニーニの「24のカプリス」を一夜で全曲を弾くというとてつもないリサイタルのチラシに興奮して飛びつけば、ヴァイオリニストは名声と評判、名前だけしか知らないシュロモ・ミンツ。しかも私の想像では爺さんだったのだが、1957年生まれの50代に入ったばかりのまだまだ若い!魅力たっぷりの?壮年ではないか。(この年齢でご隠居扱いをしたら、calafさまやromaniさまに失礼)
私がこのように年齢にこだわるにもわけがある。ご存知パガニーニのカプリスと言えば、短い時間の音符の中に最も高いヴァイオリンの技巧をダイヤモンドの如く散りばめて、尚且つ高い音楽性を要求される最高峰のヴィルトーゾだけが挑めるヴァイオリン音楽である。たとえて言えば、フィギュアの浅田真央ちゃんが難度の高いジャンプやテクニックを完璧にこなして何曲も滑るかの如く、芸術面も審査されるが体力とある種のカラダの軽さも必要である。今の、真央ちゃんだったら最高の演技が期待できるが、10年後、20年後の真央ちゃんに同じプログラムを期待するのも無理というもの。だから、パガニーニのカプリス全曲などというプログラムをこなすのは、体力・気力とももの溢れ、記録にチャレンジできる運動神経も抜群な若者(五嶋龍クンやってみる?)にまかせてもよいのでは、などと心配もしたりした。
案の定、最初の一発目の音だしから失敗して1~3曲はテクニック・音程も不安定、重音奏のスピカートも雑音が雑じる。これが世界的なヴァオリニストとして有名な、あのシュロモ・ミンツ?1曲終わるたびに、左手をさげて指の疲れをほぐすような仕草をする。しかも、遠目には年齢以上にもっと爺さんに見える。そして無伴奏ソナタの演奏時にありがちな演出として、ホール全体の照明をしぼり、ヴァイオリニストひとりだけほのかにあかりを照らしている効果もあり、拍手もなく会場は不思議な静寂と緊張が支配する。こんなマニアックなプログラムなのにホールはほぼ満席。ヴァイオリンケースをさげた学生の姿に混じり、プロのヴァイオリニストの姿も。そんな期待に応えてなんとか挽回してくれたのが、休憩をはさんだ後半。
前半から一転して、パガニーニ特有のねばりのある魔性を感じさせられる音楽をひきだし、シュロモ・ミンツらしい美音で難所もなんなくクリアー。しかもカプリスにふさわしい自由な雰囲気も感じられる。ようやく本来の実力と音楽性を発揮か。50代に投入して、ミラノ・スカラ座からスタートした「パガニーニ 24のカプリス」世界ツアーの最終公演にあたる。おりしもホールの外は、見事な満開の桜が咲き誇る。ようやくパガニーニにつかまったかと思ったら、終演。
しかし、侮ってはいけなかった。
アンコールで弾いた5番は、目も冴えるようなありえないくらいのとんでもなく速いテンポで、卓抜した高い技術と音楽性を披露。やっぱり、すごいヴァイオリニストじゃん、シュロモ・ミンツ!
一生忘れられない春の夜に感謝。
--------2009年4月7日 紀尾井ホール -----------
■シュロモ・ミンツ(Vn)
パガニーニ:24のカプリース Op.1 全曲
パガニーニでミンツがミスを!ミンツも人間になったのでしょう。
私は個人的にはミンツはとても好きですが、あの音のために人様にはかつて奨めたことは一切ありませんでした。 理由は簡単です。おの音にはまってほしくなかったのです。
例えば大変悪いですが「豚の角煮」がありますでしょう。ミンツの音はこれなんです。こんな馬鹿な例えは私ぐらいなものですが、これにはまるとサーロインもただの肉に感じるから不思議です。ですから食べ過ぎは当然よくありません。
そうです、あのミンツです。終演後のサイン会は長蛇の列で、ミンツのファンの熱意を感じましたが、ちょうどcalafさまのようなお方が、カプリースのレコードをもって並んでいました。ここで、往年の・・・と言ってはミンツに失礼でしょう。
近くで拝見したシュロモ・ミンツは、舞台よりずっと若々しく堂々たる体格の品のよい紳士という雰囲気。
>無茶苦茶うまい割には技巧をほとんど感じさせず
最近は、難所こそ、簡単そうに楽しそうに弾くのは、試験やコンクールでのお約束なんですよ。^^
>あの音あのなまめかしい音はヴィルトゥオーゾ中のヴィルトゥオーゾ
初めて聴いたシュロモ・ミンツですが、確かにその音は今でも健在です。
ただ、私も含めて「パガニーニのカプリス」の最初の体験が五嶋みどり世代になると、彼女のあの演奏が基準になってしまうのです。あらためて五嶋みどりは確かにモンスターだったということを感じました。
勿論、ミンツにはミンツ独特の素晴らしさもあります。
遅くなりましたが、今年はスプリング・コート大活躍の春でした。
calafさまの結婚記念を祝し、お父様のご冥福も祈りつつ、それぞれの春ですね。
忘れませんよ。^^
そう言えば、昨年もまた1着、スプリングコートを買ってしまいました。。。
ご無沙汰しています。
ミンツは実は私と同い年なんです。
DGからデビューしたときのジャケットが、まだ少年らしいあどけなさを残していたので、私の中では彼はずっと万年青年です。
そんな20代のミンツが録音したカプリスは、今でもベストを争う名盤だと信じています。
しかし、一晩のコンサートで全曲演奏ですか・・・。
でも、精神性云々で勝負できるほど甘くない相手と知った上でチャレンジする彼の姿勢に、私は拍手を贈りたくなります。
>アンコールで弾いた5番は、目も冴えるようなありえないくらいのとんでもなく速いテンポで・・・
目に浮かぶようです。
男子たるもの、かくありたいと思わずにはいられません。
ブラーヴォ、ブラーヴォ!
ええ、バッハの無伴奏ソナタ演奏会というのもありますが、パガニーニ24曲というのは本当にめったにないコンサートなので、とても楽しみにしていました。主催者の方のお話しによるとミンツの体力的にもこれがおそらく最後、というのも当然ですよね。申し遅れましたが、すべて暗譜でした。
果たしてチケットは売れるのか。こんなマニアックなプログラムで、、、なんてさすがに東京なので、ほぼ満席でした。
>男子たるもの、かくありたいと思わずにはいられません。
ブラーヴォ、ブラーヴォ!
プロのヴァイオリニストの方の姿も見かけるのも納得の演奏会でした。実力は衰えていません。
二コロパガニーニといえば私は24のカプリズ
が好きです。
ミンツといえばパガニーニコンチェルト
の1番ロンドがお勧めです。
もうゆうまでもない名曲ですよね。
後は巨匠では有名なユーディイメニューイン
のコンチェルトもいいです。
日本人ではパガニーニコンクール
で入賞した庄司紗矢香が有名です。
最近も日本人の方で24のカプリス
演奏していましたね。
さすが、シュロモ・ミンツの貫禄がありました。
>パガニーニコンチェルト
私もイタリアの青い空のようなこの曲が大好きです。革新的な技巧をこらし、後にピアニストによる編曲もうまれたことから、パガニーニの才能がわかります。
>最近も日本人の方で24のカプリス
演奏していましたね
佐藤俊介さんのヴァイオリンもよかったでよ。