飛行機のパイロットがUFOを目撃することは、民間の航空でもよくある。
でも、週刊誌にUFO目撃談を語ったおかげで、「精神状態がおかしいのではないか」と疑われ、飛行停止になってしまった人も、実際にいた。このため、パイロットはなかなか語りたがらない。
自衛隊でも、「UFOを見た」という話は、長いこと、表に出てこなかった。
でも、「日本の上空で、未確認飛行物体を見た」というのは、それ自体が大きな問題のはずだ。どこかの国が飛ばしたものかもしれないし、軍事的にも無視できない。
ご存知のとおり、日本近海の上空では、北朝鮮がミサイルをちょくちょく飛ばしている。中国の無人偵察機も飛んでいる。つまり、「未確認飛行物体」は、増える一方。
そのためにも、こういう目撃情報は、やはりチェックしておかなければいけない。米軍にUFO資料の蓄積があるのも、ひとつには、そのせい。
もちろん、自衛隊は日夜、レーダー管制に取り組んでいる。レーダーに探知されるのは、航空機の他にも、渡り鳥とか、気象観測用のバルーンとか。そういえば、あの有名なロズウェル事件でも、アメリカ政府の発表では、「真相は、気象観測用のバルーンでした」ということになった。
逆にいえば、そんな鳥や風船でさえ、レーダーには探知される。そのくらい、現代のレーダーの精度は高い。そんなレーダーに、「未確認飛行物体」が映ることが、ときどきある。逆に、「レーダーには探知されないけど、パイロットには飛行物体が見えている」というナゾの現象も起きることがある。
そんな体験談を集めたのが、佐藤守氏の著書、「実録・自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO」。米軍による長年の調査研究と比べたら、ささやかな内容だけど、日本では画期的な本だ。
この本に登場する自衛官OBによると、民間航空に勤めた同期の元機長が、UFOを見たとして新聞で報道されたことがあった。その機長には、誇大妄想狂だというウワサが立って、長いこと、飛行停止になってしまったという。
他にも、元機長のエピソードとして、「未明のホノルル便で、真っ暗な中、ハワイ方面の空中に白い輪ができていたのを見た。その白い輪は、まったく動かなかった。コックピットにいた3人全員が確認したので、会社に報告したところ、翌日に回答があり、『米軍がレーザー兵器の実験をしたのだ』ということだった」と語っている。その機長は、「そんな問題には、深入りしないほうがいい」とも言われたんだそうな。
これこそ、この手の話がなかなか表に出てこない、2つの大きな理由だろう。ひとつには、「パイロットとしての信用にかかわる」と懸念して、語りたがらないケース。もうひとつは、「軍事機密にかかわるから話すな」というケース。
それでも、不可解な現象はしばしば起きる。
F14の優秀なパイロットも、そういう体験談を語っている。
夜間の東シナ海上空で、二機編隊で飛んでいたところ、ほぼ同じ高度で、同じ方向に向かって飛んでいる、白い光が見えたという。それも、蛍光灯に近い青白い光で、点滅せずに、ずっと光り続けている。そんな飛行物体は、自衛隊や米軍にも、中国軍にも存在しない。
まるで、幽霊船ならぬ、幽霊飛行機みたい。サン・テグジュペリの小説、「夜間飛行」には、真っ暗な中を小さな飛行機で飛んでいるうちに、どっちが上で、どっちが下なのかも分からなくなり、気がつけば逆さに飛んでいたパイロットの話が出てくる。そんな真っ暗闇の中の飛行で「幽霊機」に遭遇したら、さぞかし、ゾッとすることだろう。
二番機が自分の横を飛んでいるわけもないし、もしそうだとしても、ライトは点滅しているはずだ。
無線でストレンジャー(正体不明機)情報を聞いても、「ユーハブ・ノーストレンジャー」(周辺に他機はいない)という答が返ってきた。念のため、飛行諸元(高度、速度、針路)を伝えて確認してもらったが、それでも、他機はいなかった。二番機に、「私の右横方向に、何か見えるか?」と聞いてみても、「何も見えない」という。
この事件以来、優秀なパイロット氏は、すっかりUFOの存在を信じるようになった。そして、「もしも、UFOが飛来する目的が地球侵攻なら、遥かに進んだ技術を持つ彼らに、とても勝ち目はない。できれば、友好的に飛来してもらいたい」と考えるようになったという。
こういう話は、なかなか表に出てこないが、気心の知れたパイロット同士では話題になる。やがて、「自分も見た」という話が、続々と出てきた。
(続く)