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観劇記録+日記@不定期更新。俳優・内野聖陽さんを勝手に応援中!時々サカナクション。

今後の観劇予定

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No.480 「東海道四谷怪談」

2015年06月11日 21時19分23秒 | 過去の観劇記録
2015年6月10日(水) ソワレ 新国立劇場・中劇場 1階 8列 29番

民谷伊右衛門=内野聖陽、お岩=秋山菜津子、四谷左門=山本亨、お袖=陳内将、佐藤与茂七=平岳大、伊藤喜兵衛=小野武彦、伊藤後家お弓=下総源太朗、伊藤家孫娘お梅=有薗芳記、乳母お槇=木村靖司、按摩宅悦=木下浩之、秋山長兵衛=大鷹明良、関口官蔵=酒向芳、中間伴助=釆澤靖起、小仏小兵=谷山知宏、利倉屋茂助=北川勝博、お熊=花王おさむ、他。
作=鶴屋南北、演出=森新太郎、上演台本=フジノサツコ、他。

塩冶(えんや)の浪人、民谷伊右衛門は、自分の過去の悪行故に離縁させられていた女房、お岩との復縁を舅の四谷左門に迫り、それが叶わぬとみるや、辻斬りの仕業に見せかけ惨殺する。左門の死体を見て嘆くお岩に伊右衛門は親切めかして仇討ちを誓い、それに乗じて復縁する。
民谷の家に戻ったお岩は、産後の肥立ちが悪く床に伏すようになり、伊右衛門はお岩を疎ましく思い始める。そんななか、隣家の伊藤喜兵衛から贈られた「血の道の妙薬」を飲んだお岩は、たちまち相貌が崩れ悶え苦しみ、放置してあった短刀に刺さり死ぬ。実は喜兵衛は、伊右衛門に懸想した孫娘のお梅の思いを叶えようと毒薬を渡していたのだった。伊右衛門は、家宝の薬を盗んだとして奉公人、小仏小平も殺し、お岩、小平の死骸を川に流す。
やがて、二人の怨念は伊右衛門を襲い、苦しめる。
(あらすじは公式HPより)

「東海道四谷怪談」は「仮名手本忠臣蔵」の外伝にあたるので、塩冶(えんや)=浅野家、高野(こうの)=吉良家です。
ちゃんとした(?)四谷怪談は、たぶん劇場中継で見たコクーン歌舞伎「南版」(かな?)と、数年前に観劇した「ボクたちの四谷怪談」くらいなんですけど(^_^;)

初日観劇。休憩20分込みで約3時間5分。
以下ネタバレ有り。

やたら奥行きが深い中劇場。この暗闇は随分と役立っていた。もう少しお岩さんの神出鬼没っぷりも欲しい気がするのは贅沢か。
セットは本当にシンプル(美術=堀尾幸男)。幕開きから暫くは白い布を舞台上に敷いて、白い稼働式の壁(大きい!横に縦にナナメに大活躍w障子にもなるぞ)。この白い所に照明が映えて、左門を殺す場面の緑色や、お岩が短刀に刺さって死ぬ場面などは壁に墨汁で飛び散る血を表現するなど、視覚も含めて想像力をかき立てる。

また音楽が…(音響=藤田赤目)。パーカッションが主で、時々歌舞伎でも良く聞く鐘の音(ゴォ~ん)や鈴(ちりん)もある。立ち回りなんかはちょっとツケ打ちが欲しくなるけど、それはココロの中で打つとして(笑)
容貌の変わったお岩が、伊藤家に詰めかけようと、お歯黒塗って髪を梳いて…のシーンで何故か「乙女の祈り」。いや、解るといえば解るけど…
さらに『なんでこの曲?』なのが2幕大詰、伊右衛門と捕手達の大立ち回りで「愛の挨拶」。え?みたいなw(←6月14日現在、曲名あやふや。済みませぬ→6月21日、「乙女の祈り」で確認終了。訂正してお詫びいたします)
なんだけど、この捕手の後に与茂七と伊右衛門の対決シーンで、急に曲調が変わり照明も抑えられて、とてもメリハリのきいた構成になったのは狙いか!

伊右衛門がねー。ホント救いようのないヤローで。舅の左門は殺すわ、秘薬を盗んだと小兵の指を折って嬲るわ、産後の肥立ちが悪くて伏せっているお岩を邪険に扱い、産まれた息子さえ邪魔モノ扱い。お岩の亡霊に惑わされて新床のお梅、さらに喜兵衛も殺害、その罪を仲間になすりつけて逃げるし。
行き当たりばったり、その場しのぎ。だがどこか滑稽で、放っておけない魅力もある。
傘張り姿や、立ち回り時の白フンドシ&太ももがまぶしいぜ(笑)。チラリズムは大切よね(*^_^*)
伊右衛門の夢のシーンで見目麗しい姿も拝見できたし(このシーン含めての前後は何かもう少し…セットの関係だろうか)
念願のナマ立ち回りも見れた!雪が降りしきる中で足もとに注意が必要だろうけど、これはミモノですぜー。
あ、あと釣りのシーンでのサカナw(ハトヤ、と勝手に命名。解る世代には解るか)
お岩さん…随分と執念深いっすよねー。伊右衛門と伊藤家のみならず、関係者累々にまで及んでますよね(按摩宅悦は除外らしい)
伊藤家より「血の道の妙薬」を貰い、ありがたく飲むシーンはその後のお岩さんを思うと切なくて息が詰まる。「いただきます」と頭を下げ、大事に手の平にあけて飲み、薬包に残った薬や手の平に残った薬までも無駄にすまいと、白湯に溶かして飲む姿…
この辺を『たッぷり』とみせてくれるので、1幕はちょっと長い印象もあるものの、キャストの熱演で気にならなくなる。

四谷左門の山本さん、セリフの口跡の良さ!
お袖は直助との関係はバッサリ無いので、姉思いの妹のみの印象。陳内さんのお袖かわいい。
与茂七の平さん(おお、親子で共演させて頂きますた)。与茂七としては2幕からの登場です。最後の伊右衛門との立ち回りがやはりサマになる。
喜兵衛の小野さん、孫娘かわいさに金に糸目もつけずに伊右衛門に無理強い。なにで儲けてるんだ!(笑)小判洗ったり。伊右衛門にはキリモチ(十両)仲間には小判が入ったお椀出したり…すげーな。
お弓(お梅の母)の動きも大仰で面白いが、なによりお梅の有薗さん…花も恥じらう乙女っすよー!いちいち笑いを取ってたけど、だんだんとカワイく見えてくるから不・思・議♪ お梅を見つめる内野さん、よく笑わないでいられるなw
それとお梅の乳母お槇の木村さんが素晴らしい。ゴツイんだけどきっちりと良家の乳母。
2幕に伊右衛門の母お熊として出てくる花王さんの婆っぷりも見事。この母にしてこの子あり!

お岩と小兵の亡骸を戸板に打ち付けて川に流しちゃうんだけど、伊右衛門に迫るその戸板がね…壁なんだよね。舞台奥からズンズン手前に!
斬新と言えば斬新。
伊右衛門達を苦しめるネズミは黒子さん達が操縦(?)2幕最後の立ち回り中に、伊右衛門に襲いかかるネズミは身体にプロジェクションマッピングっぽい。
戸板に打ち付けた小兵の指が蛇に!とかちょっと忙しくて「あれ?今の何?」と思っている内に次のシーンになってたり。
まだ初日なんで、これからさらにブラッシュアップされるのかな… また間があいて観るのが楽しみです。

ストプレでは珍しいけど1幕終わりに拍手あり。
舞台に近い席は結構寒いです。ひざかけ・羽織ものなど必要かな。2幕始めはドライアイスのスモークが襲ってきます(^_^;)
あと、出来ればセンターブロックで観た方がいい感じ。

↓写真は新国立劇場・公式HPより頂いてきました。お岩の母の、形見の櫛までも取り上げて質草に出そうとする伊右衛門