おけぴさんの特集サイトで「東海道四谷怪談」の稽古風景を、さらに詳細Upして下さいました。
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「未来永劫見捨てる心か、伊右衛門さん」
作・鶴屋南北、演出:森新太郎
色悪・伊右衛門に内野聖陽、怨念を抱くお岩に秋山菜津子
こ、こ、これは最強!!
あえての敬称略でご紹介したくなる!それくらい興奮とゾクゾクが抑えられない
新国立劇場『東海道四谷怪談』の稽古場の様子をレポートいたします。
『四谷怪談』と聞いて、「はいはい、うらめしや~でしょ。知ってる知ってる!」と思ったのですが、実のところ、そのお話の筋自体は若干あやふや。
そんな方もいらっしゃるかと思いますので、まずは作品紹介から。
作者は、ご存じ江戸期を代表する歌舞伎作者・四世鶴屋南北。
当時すでに古典だった『仮名手本忠臣蔵』の世界を南北がその外伝として芝居にしたてたのがこの『東海道四谷怪談』。
表に当たる『忠臣蔵』が忠義の世界なら、その裏にある無頼の男、底辺に生きる人々を主人公にした、情、欲、業の世界を描いたのがこの『四谷怪談』なのです。
この日の稽古は冒頭、序幕からスタート!まずはこちら↓の伊右衛門と左門の言葉の応酬からの…という場面。
-あらすじ(HPより)-
塩冶(えんや)の浪人、民谷伊右衛門は、自分の過去の悪行故に離縁させられていた女房、お岩との復縁を舅の四谷左門に迫り、それが叶わぬとみるや、辻斬りの仕業に見せかけ惨殺する。左門の死体を見て嘆くお岩に伊右衛門は親切めかして仇討ちを誓い、それに乗じて復縁する。
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その騒動を遠巻きに見ていて、満を持して助けに入る一人の男!
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舅である左門にお岩との復縁を迫る伊右衛門、しかし左門にかつての罪をとがめられ…。
ここで突き詰められていくのは、言葉(セリフ)、気持ち、動き、そして相対する二人の関係。
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お岩を返してもらうため、左門の圧を受けながらも下手に出ていた伊右衛門が逆切れ!
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圧倒的な上から目線で押さえつけられ、ときには軽くあしらわれ、そこから一気に!
そのエネルギーの解放が気持ちイイのです。
もちろん気持ちイイだけではなく、台本上数ページのやり取りの中で伊右衛門の人間性を色濃く舞台に立ち上げる冒頭の大切な場面だけに、試行錯誤が続きます。
演出の森新太郎さんと内野聖陽さんは昨年の『THE BIG FELLAH』に続いてのタッグ!
噂にたがわぬ(!!)緻密で妥協のない芝居作りです。
「違う動きで、もう一回、やらせてください」
「武士(浪人)はこの距離感で話さないよね」
「この6行(のセリフ)で二人の力関係をもっと出していきたいんですよね」(内野さん)
さまざまな動きを試し、キャラクターの心情と動きの一致を組立、さらにそれがお芝居の流れの中でどう見え、客席にどう伝わるかを徹底的に追及する稽古場です。
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左門が伊右衛門に放つあるセリフでは、相手にプレッシャーをかけながら言うより、無感情に近く「このやりとり、無駄に時間をつぶしているな」という気持ちで言うほうが相手はイラっとするよね。
そんな森さんの言葉などを受け、次第に出来上がっていくこのシーン。
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その後、伊右衛門は左門を追いかけ…
歌舞伎でも色悪(ルックスは二枚目、性根は悪人)の代名詞ともいえるこの役、伊右衛門は確かにひどい、ひどすぎるんです。
でも、物語の主人公としてど真ん中にいて、そしてなんだかとてつもない引力で見る者の目と心を惹きつける内野さんの伊右衛門。
それこそ見ないともったいないお化けが出そうなほどの色気ですよ。
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と、ここからは次の稽古場面へ!
やって来たのは、お岩さん(秋山菜津子さん)と妹のお袖(陳内 将さん)。
陳内さんがお袖なのです!
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新国立劇場版『東海道四谷怪談』にはさまざまな仕掛けが用意されているのですが、その一つともいえるのが女優はただひとり、お岩役の秋山菜津子さんだけということ!
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歌舞伎のように男性が女性役も演じる、虚の世界の中で、紅一点、お岩だけはリアル女性が演じる。そのなんともいえないコントラストは物語が展開するにしたがってどんな効果を生むのだろう。その先がとーっても気になります!
まだこの時点では身重の弱き女性、そこから業の深いあの“お岩さん”に…、秋山さんの変貌も想像するだけでゾクゾクです。
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今回の上演では歌舞伎の言葉をそのままセリフとして用います。
それを現代劇の俳優さんが発する面白さも見どころのひとつ。
とはいえ…なかなか普段は耳にしない言い回しもたっぷりございます。
出番の前に口慣らしというか、口の準備運動のようにセリフを唱える陳内さんが印象的でした。
その後、二幕の伊藤喜兵衛宅の場面では、喜兵衛(小野武彦さん)、その娘のお弓(下総源太朗さん!)、伊右衛門に思いを寄せる孫娘にお梅(有薗芳記さん!)、乳母のお槇(木村靖司さん!)という、ベテラン男優のみなさんの織りなす世界に引き込まれます。
有薗さんの乙女の恥じらい、小野さんや下総さん(『エドワード二世』に続き、強烈です!)のお梅の溺愛っぷりなど、キャラクターの宿り具合にゾクっとすること一度や二度ではございません。
このように、「本」良し、「人」良し、「仕掛け」良しの『東海道四谷怪談』。
普段は歌舞伎でしか耳にしないような、
「サア」「サア」「サアサアサアサア」の掛け合い、この気持ちよさは演劇でも健在です!
日本語のリズムと響きの美しさ、豊かさに乗せて、人間の本質をえぐるように描き出す物語、内野さんの言葉を借りれば「日本にもシェイクスピアがいた!」。
まさにその通り!それを実感する稽古場でした。
スタッフ、キャストと最高の布陣で届けられる2015年の『東海道四谷怪談』、新国立劇場・中劇場という空間で繰り広げられる南北の世界を存分に味わいましょう。