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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語⑦ “カタログ化”で先取り

2023-05-07 05:28:26 | 科学だいすき
竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語⑦ “カタログ化”で先取り

小惑星リュウグウ粒子から有機物や液体の水などが発見され、大きな科学成果があがりました。背景には、試料の科学的価値を損なわずに「カタログ化」するという世界を先取りした日本の巧みな技術がありました。

世界初の顕微鏡
リュウグウ試料が地球に持ち帰られた後、航空研究開発機構(JAXA)は、専門研究機関と協力して、粒子の顕微鏡画像や重量、大きさ、形などの基本的な情報を記録する作業「キュレーション」を行いました。



リュウグウ試料のキュレーション作業を行うクリーンルーム(JAXA相模原キャンパス)

作業を統括する臼井寛裕JAXA宇宙科学研究所教授は、注目ポイントについて「近赤外線顕微鏡を世界で初めて導入したこと」と強調します。水の存在を示す成分(水酸基)が含まれる所を赤色で検出できます。
真っ黒なリュウグウ粒子を近赤外線で見ることで「科学的価値が高い試料をえりすぐってサイエンスチームに渡すことができた」と振り返ります。
キュレーションでは、高度な科学データの記載や試料の保管、分配のための技術・研究開発も行われました。
岡山大学のチームは、元素や同位体組成、有機物の分析、構造や微細な組織などを総合的に解析できる「地球惑星物質総合解析システム」を構築。粒子を個別に解析し、詳細な科学データを記録したカタログを作成しました。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)のチームは、試料を地球大気に触れないよう密封した状態・で配れる特殊なコンテナを開発。大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県佐用町)などに運び、分析しました。



リュウグウ粒子が入っている輸送用コンテナ。ケース内には窒素ガスが封入されており地球大気に触れない状態で輸送できます(©JAXA)

次の計画に継承
カタログ化された試料は、各専門分野の分析チームから返還された分も含めて全世界に公開。国際公募を通じて、世界各国の研究機関へ貸し出します。
カタログの価値について臼井さんは「米航空宇宙局(NASA)に引けを取らないどころか凌駕(りょうが)していると自負している」と胸を張ります。
このキュレーション技術は、次のサンプルリターン(天体から試料を採取し、地球に持ち帰る)計画に引き継がれます。



ベンヌの試料を受け入れる部屋。解析装置の搬入に向けた準備が進められています(JAXA相模原キャンパス)

NASAの無人探査機「オシリス・レックス」が今年9月に、小惑星「ベンヌ」から採取した試料を携えて帰還します。250グラム以上の試料を採取できたとみられており、その一部は日本にも提供される予定です。
リュウグウとの違いを調べることで、地球生命や太陽系形成の起源の理解が飛躍的に進むと期待されます。現在、JAXA相模原キャンパスでは、試料の受け入れ準備を急ピッチで進めています。
またJAXAは、2024年度に火星衛星探査計画(MMX)のロケット打ち上げを予定。火星圏からの初のサンプルリターンを目指し、探査機は29年度に地球に帰還する計画です。キュレーションも「MMXに向けてまい進中」だとし、世界をリードしたいと意気込んでいます。
(おわり)(この連載は、原千拓が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月6日付掲載


真っ黒なリュウグウ粒子を近赤外線で見ることで「科学的価値が高い試料をえりすぐってサイエンスチームに渡すことができた」と。
カタログ化された試料は、各専門分野の分析チームから返還された分も含めて全世界に公開。国際公募を通じて、世界各国の研究機関へ貸し出します。
カタログの価値について臼井さんは「米航空宇宙局(NASA)に引けを取らないどころか凌駕(りょうが)していると自負している」と。
NASAの無人探査機「オシリス・レックス」が今年9月に、小惑星「ベンヌ」から採取した試料を携えて帰還。250グラム以上の試料を採取、その一部は日本にも提供予定。
リュウグウとの違いを調べることで、地球生命や太陽系形成の起源の理解が飛躍的に進むと期待。
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竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語⑥ “日焼け”が矛盾解決

2023-05-06 05:33:45 | 科学だいすき
竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語⑥ “日焼け”が矛盾解決

大気のない小惑星リュウグウの表面は、太陽風や宇宙線を浴び続け、マイクロメートル(1000分の1ミリメートル)サイズの微小な隕石(いんせき)が銃弾よりも速い速度で衝突するなどの影響をじかに受けています。こうした過酷な宇宙空間にさらされている下で、どのような物質変化(宇宙風化)を起こしているのか。リュウグウならではの“お肌事情”が見えてきました。

二つの特徴発見
分析チームは、100マイクロメートル以下の約900粒の粒子を分析し、宇宙風化による“日焼け”の痕を探しました。チームリーダーの野口高明京都大学教授は「表面の特徴を見つけることから始め、2カ月間を棒に振った。このまま見つからないのではと思ったが、その後に見つかり始めた」と振り返ります。その結果、粒子全体のうちわずか6%だけが表面組織を維持していることが分かりました。
表面組織を詳しく解析したところ、宇宙風化を受けていない組織(写真1)のほか、二つの特徴を発見しました。一つは、比較的滑らかな表面上に約0・1マイクロメートルの穴が部分的に形成されたもの(写真2)。太陽風によって砂や石の鉱物が破壊され脱水が起きたと考えられました。



写真1(京都大学、九州大学提供)


写真2(Noguchi et al.,2022)

もう一つは、石や砂の表面(2~3マイクロメートルの層)に、鉱物が溶融し激しく泡立った痕が見られる組織(写真3)です。野口さんによると、リュウグウ粒子は隙間が多い粘土鉱物で、加熱されると熱が逃げにくいため、溶けやすい性質を持ちます。チームは、微小な隕石の衝突による摩擦熱で、粒子表面が水蒸気を放出しながら溶けだして形成されたものと考えています。



写真3(Noguchi et al.,2022)

現地観測と相違
探査機はやぶさ2による現地観測では、天体表面において、水を含む鉱物(含水鉱物)の存在量は、わずか1%以下と見積もられていました。一方、地球に持ち帰ったリュウグウ粒子の分析では、鉱物内部に相当量の水が見つかるなど、食い違いがありました。
この二つの結果の矛盾を解決に導いたのは、粒子表面に見られた“日焼け”でした。
水や有機物を含むリュウグウでは、隕石衝突などの宇宙風化によって脱水した層が表面を覆ったために、現地観測では水が検出されにくかったと考えられます。
約50人からなる野口さんのチームの7割は海外の研究者。もともとはライバルだったメンバーが今回、一丸となって取り組んだ成果だと述べました。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月5日付掲載


表面組織を詳しく解析したところ、宇宙風化を受けていない組織(写真1)のほか、二つの特徴を発見。一つは、比較的滑らかな表面上に約0・1マイクロメートルの穴が部分的に形成されたもの(写真2)。太陽風によって砂や石の鉱物が破壊され脱水が起きたと。
もう一つは、石や砂の表面(2~3マイクロメートルの層)に、鉱物が溶融し激しく泡立った痕が見られる組織(写真3)。
水や有機物を含むリュウグウでは、隕石衝突などの宇宙風化によって脱水した層が表面を覆ったために、現地観測では水が検出されにくかったと。
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竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語⑤ 太陽系材料の物質も

2023-05-05 07:10:17 | 科学だいすき
竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語⑤ 太陽系材料の物質も

人類が手にした最も始原的な試料である小惑星リュウグウの粒子。その砂や石から、液体の水や多種多様な有機物などが発見されました。各分野の専門チームの分析結果から、太陽系誕生から間もない時の記録や、太陽系形成以前の未知の物質が含まれていることが垣間見えてきました。

磁場の痕跡残る
粒子の化学的特徴や物性などを分析した東北大学の中村智樹教授は、リュウグウ粒子から、樹木の年輪のような同心円状のしま模様を持つ球状の磁鉄鉱の結晶を見つけました。
しま模様は、リュウグウの元となった天体(母天体)内で、水と鉱物の反応が起こった時の磁場環境を反映していると、中村さんは説明します。
母天体が太陽光の届かないガスやちりから成るガス星雲の中で生まれた可能性を示すもので、ガス星雲内で生じた磁場の情報が結晶に刻まれたのではないかと考えています。
「過去の磁場を記録した天然のハードディスクといえる。母天体の中で化学反応が進んでいた頃、周辺にはまだ原始惑星系円盤があったと推測できる」
有機物を分析したチームの結果でも一部の有機物は、ガス星雲や原始惑星系円盤の外側といったマイナス200度以下の低温環境で形成されたことが分かっています。
有機物の分析チームを率いた奈良岡浩九州大学教授は、ガス星雲にある低分子の有機物や氷がリュウグウ母天体に集まり、氷が解けた水と反応した結果、2万種もの有機分子が形成されたと考えています。



左は磁鉄鉱の結晶の電子顕微鏡画像。
右のBとCは磁場環境の反映を示す解析画像で、粒子内部の同心円状のしま模様は磁力線が矢印の方向に巻いていることを示しています(©JFCC、北海道大学、日立、東北大学)

詳細は「分析中」
中村さんは、太陽系ができる前の時代に形成された小さな固体粒子状の物質「プレソーラー粒子」も見つけています。
「リュウグウの大部分は、水と強く反応しているが、わずかながら反応していない所がある。それは太陽系ができる前の物質であることを意味する。見つけた時は興奮した」
中村さんによると、見つけた物質は、大きさは1マイクロメートル(1000分の1ミリメートル)以下で含水鉱物がみられない小さな粒子の集合物だといいます。
「リュウグウが誕生した時は、太陽系の大本となった宇宙の物質がたくさんあったはず。水との反応で物質がだんだん変化していったと考えられる」と中村さん。「元素組成など詳細はよく分かっておらず分析中だ」と意気込みます。
気体の分析チームの結果によると、粒子中に太陽系誕生以前の希ガスが含まれていることが分かっています。
チームリーダーの岡崎隆司九州大学准教授は「リュウグウには、他の天体からやってきたちりなど、太陽系の材料物質が多く存在する」と指摘。その成分と希ガスの情報から新しい太陽系進化の絵が描けるかもしれないと期待を込めます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月4日付掲載


過去の磁場を記録した天然のハードディスクといえる。母天体の中で化学反応が進んでいた頃、周辺にはまだ原始惑星系円盤があったと推測できる。
太陽系が形成される以前、他の天体からもたらされたものもあるとか。そんな恵みの痕跡をだどる分析は始まったばかり。
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竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語④ “煙”から太古の“時”

2023-05-04 07:24:39 | 科学だいすき
竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語④ “煙”から太古の“時”

探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った着陸カプセルには砂や石のほか、小惑星由来のガスが含まれていることが確認されました。
地球圏外から気体状の物質を回収したのは世界初。玉手箱の“煙”から、太陽系ができる前の時代までさかのぼる“時”が見えてきました。
ガスは、2020年12月、カプセルが着陸した30時間後に採取されました。
分析の結果、希ガスの一つで、地球大気とは異なる同位体組成を持つヘリウムを検出。太陽から噴き出す粒子「太陽風」起源であることが分かりました。
分析チームは、太陽風起源のヘリウムは、リュウグウ粒子のごく表面(1000分の1ミリメートル)に多く含まれており、粒子表面が剥がれた際に、粒子から遊離したものである可能性が高いと結論づけました。



着陸カプセルから取り出した試料が入ったコンテナ(©JAXA、東京大学、九州大学、JAMSTEC)

シールが大活躍
揮発性が高い希ガスを逃がさずに地球に持ち帰ることに成功した裏には、試料が入ったカプセルを封じた特殊なシールの活躍がありました。
特殊なシールとは、密閉性が高い金属製のシール。開発に約10年かかったと、チームリーダーの岡崎隆司九州大学准教授は説明します。ベストな形状にたどり着くまで模擬品を作っては試しての繰り返しだったといいます。
「缶詰と同じで一度封をしたら二度と使えない一発ものなので、300回~400回試しながら形状を考えた。カプセル内のガスを採取した時は、一緒に開発してきた仲間と抱き合って喜んだ。泥臭いことをしてきたことが実った瞬間だった」

希ガスヒントに
チームはリュウグウ粒子中に含まれる気体成分の検出にも成功しました。
希ガスは、化学的に安定しており、他の物質とほとんど反応しません。岡崎さんは「希ガスを測ることで、リュウグウの材料物質の起源や、これまでの温度環境、太陽風の影響、宇宙空間にどのくらいさらされていたかなど重要な情報につながります」と説明します。
チームは、リュウグウ粒子を徐々に加熱しながら、粒子の中に閉じ込められていた希ガスなどの気体を抽出。同位体の分析から、太陽風や、宇宙空間を飛び交う高エネルギー粒子「宇宙線」を浴びて生成された希ガスが含まれていたことがわかりました。他にも太陽系形成時に取り込んだ希ガスや、太陽系誕生以前の希ガスも含まれていました。
また希ガスの量からリュウグウは約500万年間、宇宙線を浴びたことが判明。表層から地下1~2メートルの領域は、隕石(いんせき)衝突などで頻繁にかき混ざることはなかったと推定され、リュウグウは約500万年前に小惑星軌道から隕石衝突が少ない近地球軌道に移動してきたことが考えられました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月2日付掲載


揮発性が高い希ガスを逃がさずに地球に持ち帰ることに成功した裏には、試料が入ったカプセルを封じた特殊なシールの活躍が。
開発に10年かかたっと。缶詰と同じで一度封をしたら二度と使えない一発ものなので、300回~400回試しながら形状を考えた。
地道な努力が、小天体から石だけじゃなくって、気体まで持って帰ってくる画期につながったのですね。

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竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語③ 生命の材料 宇宙から!?

2023-05-03 07:03:06 | 科学だいすき
竜宮の玉手箱 はやぶさ2 砂の物語③ 生命の材料 宇宙から!?

小惑星リュウグウの粒子から見つかった有機物は、なんと2万種類。その中にはたんぱく質の元となるアミノ酸も検出されました。分析チームを率いた奈良岡浩九州大学教授は「有機化合物が宇宙空間で行き交っていることを示している」と強調。ベールに包まれていた生命起源と宇宙とのつながりが見えてきました。

多数の有機物が
奈良岡さんらは、溶媒などに溶けやすい有機物を詳しく分析。「これほどの有機分子が見つかるとは思っていなかった」と驚きました。
アミノ酸には、構造が鏡に映したように対称な左手型と右手型が存在しますが、地球の生物が利用するアミノ酸はほとんど左手型です。これまで隕石(いんせき)から検出されたアミノ酸については、一部に左手型の方が多いという報告があり、リュウグウ粒子ではどうか、注目されていました。



リュウグウ試料から見つかった有機分子のイメージ図(©JAXAなど)

分析の結果、アラニンなど地球生命が利用するたんぱく性アミノ酸や、イソバリンなど非たんぱく性アミノ酸計23種類を検出。構造を調べたところ、左右ほぼ等量でした。
奈良岡さんは「(等量だったことは)アミノ酸がリュウグウの元となった母天体の中で、水と岩石成分が反応してできたことを示す」と説明します。
一方、広島大学の薮田ひかる教授らのチームは、粒子を酸で溶かすなどして、固体有機物だけを抽出して分析。石炭のように黒く、さまざまな分子が無秩序に結合した高分子で、形状や化学組成は多様でした。
こうした固体有機物もリュウグウ母天体内で生成されたことを示すものだと薮田さん。液体の水と鉱物、有機物との化学反応によって「新たな有機物が合成されたり分解されたりする反応を繰り返すことで分子の種類や形状、構造を多様化させたと考えられる」と話します。

【化学進化】
水やアンモニア、一酸化炭素などの無機物からアミノ酸や核酸などの有機化合物が合成され、最初の生命が誕生するまでの過程。

「左手型」のなぞ
地球の生命起源をめぐっては、アミノ酸など生体に関連する有機化合物が宇宙空間で生成され隕石などによって地球にもたらされたという説があります。
薮田さんは「(リュウグウには)地球生命が持つ有機物と異なった分子も含まれている。生命誕生に至る化学進化の最初の出発として、有機物が宇宙から地球にもたらされたことを示している」と指摘します。
地球の生命が左手型のアミノ酸のみを利用する謎について奈良岡さんはこう述べます。「リュウグウには地球生命が用いるものもあるし、そうでないものもある。その中からなぜ左手型を選び出したのか、探していかなければならないピース(欠片)だ」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年5月1日付掲載


アミノ酸には、構造が鏡に映したように対称な左手型と右手型が存在しますが、地球の生物が利用するアミノ酸はほとんど左手型。
リュウグウで見つかった有機物。分析の結果、アラニンなど地球生命が利用するたんぱく性アミノ酸や、イソバリンなど非たんぱく性アミノ酸計23種類を検出。構造を調べたところ、左右ほぼ等量。
リュウグウには地球生命が用いるものもあるし、そうでないものも。その中からなぜ左手型を選び出したのか、探していかなければならないピース(欠片)。
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