きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

軍事依存経済 宇宙編⑦ 働きかけたのは経団連

2016-02-20 20:05:18 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編⑦ 働きかけたのは経団連

安倍政権が定めた長期的な宇宙基本計画に、軍需産業界は色めき立ちました。三菱電機の下村節宏相談役(経団連宇宙開発利用推進委員長)は、すかさず賛辞を送りました。
「宇宙産業基盤の強化にもつながるものとして評価できる」(月刊『経団連』2015年1月号)
軍事スパイ衛星(情報収集衛星)や準天頂衛星を製造する三菱電機は、宇宙分野の中核的な軍需企業です。
下村氏は、今後10年間の宇宙事業規模を「累計5兆円」に引き上げるという安倍政権の長期計画を高く評価しました。「重要課題」の「第一」に「安全保障の強化」をあげ、「米国との宇宙協力を推進すべきである」と迫りました。
「経団連では今後とも、わが国の宇宙開発利用の推進に向けた方策を実現するため、関係各方面と連携して働きかけを行っていく」
実際、宇宙の平和利用原則を覆して軍事利用を進めるよう働きかけ、実現させてきたのは経団連でした。



情報・通信の国際展示会シーテックに出展された準天頂衛星の模型=2015年10月、千葉県幕張メッセ

産業化推進要求
バブル崩壊後の1998年に出した提言で経団連は「わが国の宇宙開発はこれまでのところ比較的順調に進展」していると胸を張り、宇宙で将来の利益を確保する戦略を打ち出しました。
「経済が低迷しているこの時期にこそ、将来への布石として技術および新産業を創出する基盤となる宇宙開発を一層推進すべきである」(7月7日「わが国の宇宙開発・利用および産業化の推進を望む」)
2001年には「準天頂衛星システムの開発着手」を提言し、「関係方面に積極的な働き掛け」を展開しました。「その結果、政府において、関連省庁・公的研究機関・産業界からなる協議会が設置され」たといいます(02年7月「『準天頂衛星システム推進検討会』の新設について」)。
ところが05年、一転して苦境を訴えます。
「予算の削減により、宇宙産業は危機的状況」「競争力の低下が憂慮される事態」(3月2日「第3期科学技術基本計画に対する要望」)
この中で前面に押し出したのが、軍事の分野でした。宇宙技術は「総合的な安全保障を確立するためにも必須の技術」だと強調し、「国の取り組みを抜本的に強化すべきである」と迫ったのです。

国会決議が障害
06年には憲法に基づく平和利用原則を激しく攻撃しました。
「安全保障への活用」の「障害の一つとなっているのが、わが国の宇宙利用を『非軍事』に限定した1969年の宇宙の平和利用に関する国会決議である」(6月20日「わが国の宇宙開発利用推進に向けた提言」)。
この障害を打破するためには「『宇宙基本法』の策定が必要である」と、新たな法律の制定まで求めました。
07年にはさらに踏み込み、「宇宙基本法に期待される最重要課題」(7月17日「宇宙新時代の幕開けと宇宙産業の国際競争力強化を目指して」)をあげました。「第一」は宇宙政策の「一元的な実施体制」の構築。「第二」は「宇宙開発のあり方を規定している国会決議の見直し」です。
こうした働きかけを受けて08年、「安全保障に資する」目的を掲げた宇宙基本法が制定されたのです。
09年以降、経団連提言の重点は軍事利用の具体策に移ります。弾道ミサイルの発射を探知する早・期警戒衛星を「開発・整備することを明確にすべきである」。準天頂衛星については「将来の7機体制の構築の実現を明確にすべきである」(5月18日「宇宙基本計画に関する意見」)といった具合です。
14年には「政府の長期的かつ具体的な宇宙開発利用の工程表がなく、産業界が投資の予見可能性を高められないことが大きな問題」(11月18日「宇宙基本計画に向けた提言」)だと注文を付けました。
「投資の予見可能性」に配慮した安倍政権の長期的な宇宙基本計画は、経団連の言葉遣いまで引き写し、軍需産業界の欲望に気前よく応えたものなのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月18日付掲載


財界の圧力に負け、「宇宙利用を『非軍事』に限定」した国会決議さえ反故にして、「安全保障」へ道を開いた「宇宙基本法」を制定。
準天頂衛星などの軍事衛星打ち上げ。既成事実を積み上げています。
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軍事依存経済 宇宙編⑥ 軍需産業が乗っ取った

2016-02-19 21:30:22 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編⑥ 軍需産業が乗っ取った

「設備増強計画を立て始めた企業もある」
安倍政権の宇宙基本計画(2015年1月)で、日本の産業界がいかに活気付いたか。内閣府宇宙戦略室の小宮義則室長は熱を込めて話します。
「すごいよ、これは。政府の衛星がいつ何発上がるか見えたので、設備や技術開発や人に投資できるようになったと聞いています」

10年間で5兆円
宇宙基本計画は「今後20年程度を見据えた10年間の長期整備計画」です。前回計画(13年1月)が10年先を視野に入れた5年計画だったのに対し、期間を2倍に延ばしたのです。理由は「産業界の投資の『予見可能性』を高め、産業基盤を強化するため」です。
しかも「宇宙産業基盤」の「強化」が「喫緊の課題」である理由として、「我が国の安全保障上の宇宙の重要性が著しく増大している」ことをあげました。軍需産業の強化をめざす思惑があらわです。
さらには、「我が国の宇宙機器産業の事業規模として10年間で官民合わせて累計5兆円」をめざすと強調。前回計画時に宇宙関係予算が毎年度約3千億円の「横ばいで推移」していたのに対し、民需を含めて年平均5千億円規模へと拡大する目標を掲げました。
宇宙政策の進展は「安倍首相のイニシアチブ(主導権)による部分が大きい」。小宮氏は実感を語ります。
具体的なプロジェクトにも宇宙軍拡を進める姿勢がはっきりと現れています。宇宙基本計画の工程表に掲げられた九つのプロジェクトのうち、八つまでもが軍事に関わる内容なのです(別項)。安倍政権は15年12月8日に工程表を改定し、「宇宙協力を通じた日米同盟等の強化」などの目的を明記しました。
「宇宙は軍事に乗っ取られたといっても過言ではありません」
名古屋大学の池内了名誉教授は日本の宇宙開発の歴史を振り返って警鐘を鳴らします。
人工衛星やロケット開発を行う目的で科学技術庁に宇宙開発推進本部がつくられたのは1964年です。米国の技術供与を受けてロケット開発を行うために宇宙開発事業団(NASDA)が発足したのは69年でした。
宇宙開発事業団法の第1条は「平和の目的に限り」宇宙を利用すると明記していました。同年5月9日、衆院本会議も「平和の目的に限り」宇宙を利用すると決議。審議の中で政府は、「平和」とは「非軍事という解釈」だと答弁しました。「防衛目的」を掲げても平和利用原則に抵触することを確認したのです。
ところが政府は85年、米国の軍事スパイ衛星の情報を海上自衛隊が利用することを、“一般的に利用される衛星と同様の機能の衛星だから”という統一見解で合理化しました。2003年には同じ理屈で日本初の軍事スパイ衛星(情報収集衛星)を打ち上げました。



日本最大のロケット発射場である種子島宇宙センター=鹿児島県南種子町(JAXAのホームページから)

宇宙基本計画工程表のプロジェクト
①衛星測位 準天頂衛星の7機体制整備
②衛星リモートセンシング 軍事スパイ衛星の増強
③衛星通信・衛星放送 Xバンド衛星通信の軍事利用
④宇宙輸送システム 既存ロケットの軍事利用や新型ロケット開発
⑤宇宙状況把握 米軍との連携に向けた体制構築
⑥海洋状況把握 米国との連携を含め検討
⑦早期警戒機能 ミサイル防衛のための衛星開発を検討
⑧宇宙システム全体の抗たん性強化 敵の攻撃に耐える能力強化
⑨宇宙科学・探査および有人宇宙活動

平和目的を削除
「宇宙の平和利用」の精神を葬り去った決定打は、宇宙基本法の制定(08年)でした。宇宙開発利用の目的として「我が国の安全保障に資する」ことを盛り込んだのです。さらにJAXA(宇宙航空研究開発機構=NASDAの後継法人)法の改定(12年)では、「平和の目的に限り」業務を行うという規定が削除されました。・池内名誉教授は話します。「『防衛目的』といえばどんな兵器でも持てるようになり、軍事衛星が次々に開発・生産されてきました。特に安倍政権は露骨です。内閣府を司令塔とし、JAXAを下請け機関として、トップ・ダウンで宇宙の軍事利用を進めています。政治的には日米安全保障のため、経済的には軍需産業援助のためです」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月17日付掲載


「はやぶさ2」や先日はブラックホールなどの観測をめざす観測衛星「ひとみ」が打ち上げているH2Aロケット。
「ひとみ」の打ち上げで、早30回目だとか。「はやぶさ2」や「ひとみ」の影で軍事衛星が打ち上げられているって事ですね。

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軍事依存経済 宇宙編⑤ 訪米し要望を聞き取り

2016-02-15 22:20:52 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編⑤ 訪米し要望を聞き取り

安倍晋三政権の宇宙基本計画(2015年1月9日)がいかに米国の望みにかなっているか―。政策立案の中心にいる人物が証言しています。
12年から内閣府の宇宙政策委員会で委員長を務める葛西敬之(よしゆき)東海旅客鉄道名誉会長です。宇宙政策委員会は、首相の諮問に応じて「宇宙開発利用に関する重要事項」を「調査審議する」機関です。審議内容は宇宙基本計画に反映されています。



準天頂衛星初号機「みちひき」のイメージ図(JAXAのホームページから)

7機体制へ拡充
葛西氏は、今後の宇宙政策の「最重要事項」は、「衛星測位、すなわち日本版GPS(全地球測位システム)をつくること」だと強調。その「背景」を赤裸々に告白しました。
「(日本の安全保障には)米国の協力が不可欠であり、協力を得るためには米国が最も望む内容を把握する必要があります。そこで私自身、昨年9月に米国に赴き実際に関係者と意見交換したところ、中国が米国のGPS機能を破壊しようとする可能性がある、したがって日本がそのバックアップ機能を保有してくれることがたいへん重要であるとの意向でした。すなわち、日本版GPSである準天頂衛星の充実・強化です」(月刊誌『時評』15年6月号)
米国の「意向」が判明した結果、「以降、準天頂衛星の7機体制を早急に具体化していくことが必須となりました」と、政策決定に至る因果関係を明快に論じました。
GPSは全世界の位置を測定する測位システムです。予備機を含めて約30機の人工衛星を運用しています。
他方、準天頂衛星は地域的な測位システムです。日本のほぼ天頂(真上)を通る軌道を持つ人工衛星を複数機組み合わせるのが特徴です。測位信号を出してGPSと同様の機能を発揮するとともに、GPSの誤差を補正することができます。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、GPSの誤差を数十メートルから1メートル程度へ、さらには数センチ程度へ縮める目標を示しています。
衛星測位には準天頂衛星が4機以上必要ですが、現在は初号機「みちびき」だけを運用している段階です。安倍政権は宇宙基本計画で、17年度に4機体制へ、23年度に7機体制へ拡充する工程表を示しました。
準天頂衛星の軌道は南北に大きく8の字を描くため、7機そろった場合、オーストラリアのほぼ全域で日本と同様の精度での測位が可能になります。中国と東南アジアも広範囲でカバーします。米国が重視するアジア太平洋地域で、GPSを補完・補強することになるのです。

日米同盟に寄与
前述のインタビューで、葛西氏は「この宇宙基本計画の内容については米国も非常に高く評価してくれました」と語っています。「日本の宇宙政策が安全保障を機軸としている点が明確化されたのは非常に喜ばしいとのことでした」
とりわけ、準天頂衛星を充実する意義を強調しています。
「宇宙から衛星で正確な位置を測定すること、これに高度情報通信を組み合わせることで、たとえば効率的な部隊の運用が可能となり、安全保障体制が大きく向上します」
「衛星測位に関する日米の協力体制、相互依存体制をどう構築していくかが、これからの宇宙政策の大きな課題となるでしょう」
米国の意向に沿い、米国の戦争システムを支える目的で、宇宙基本計画が策定されたことは明白です。葛西氏がしめくくりに述べた言葉は、安倍政権の宇宙政策の本質を言い表すものでした。
「日米協力体制の構築に寄与するということが、まさにこの宇宙基本計画の真価なのです」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月13日付掲載


GPSって聞くと、カーナビなどの民生部門の事かと思いがちですが、主な狙いは軍事部門での運用。
アメリカへその情報を提供する。
憲法9条を持つ国として、許されない事。
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軍事依存経済 宇宙編④ 米国の戦争体制を支持

2016-02-14 19:07:18 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編④ 米国の戦争体制を支持

無人機を利用した米国の「標的殺害」に対しては、現役の自衛官からさえ、疑問の声が上がってきました。
矢野哲也2等陸佐・陸上自衛隊第3師団司令部法務官(当時)は論文(「米国の無人機による新たな軍事行動について」)で次のように指摘しました。

紛争の原因にも
「標的とされたタリバン指導者が、多くの現地住民の集まる葬式会場に姿を現すことがあったという不確かな情報だけで、その場にミサイルを撃ち込むという行為が、イスラムの神聖な宗教儀式を破壊し、現地住民の反感を煽(あお)るだけでなく、親米国家とされてきたパキスタンを反米勢力の側に追いやりかねない重大な結果をもたらすことは自明の理」
「今や無人機の使用が紛争を終結させる手段ではなく、新たな紛争を引き起こす原因となっていると言われても仕方がない」(2012年10月『防衛研究所紀要15巻』)
論文によれば、無人機による標的殺害を導入したのは米国のブッシュ政権ですが、それを急増させたのはオバマ政権でした。「国防予算の削減を見越した戦争の低燃費化」が最大の動機でした。
ブッシュ政権は04~09年にパキスタン領内で44回の無人機攻撃を承認し、40日に1回の割合で実行しました。オバマ政権に代わると2年以内に、4日に1回の割合で無人機攻撃が行われるようになったといいます。
論文は、「武装無人機」が有人戦闘機に代わって「飛行禁止空域の監視という第一線任務」を担うに至っており、「今後あらゆる武力紛争において無人機による戦闘様相が常態化する」見通しだと指摘。「今後も米国が対テロ戦争を継続していくことは、本来その終着点となるべきはずの標的殺害が、いつのまにか対テロ戦争を継続するための新たな出発点となってしまう悪循環をもたらしかねない」との警告で締めくくっています。懸念はいまや、テロと戦争の連鎖として現実化しています。



人工衛星などを載せて三菱重工業が打ち上げている大型ロケットH2A(JAXAのホームページから)

泥沼化の教訓は
立命館大学の藤岡惇教,授は「戦争の泥沼化から導き出せる本当の教訓は、アフガニスタン戦争やイラク戦争をそもそも行うべきでなかったということです」と話します。
「しかしオバマ政権は根本的な方向を変えず、戦争の手法を見直しただけでした。進めてきたのは、アフガンとイラク自身に戦争を肩代わりさせつつ、従順な同盟国にコストを分担させる政策です」
安倍政権は、宇宙を利用した米国の戦争システムを政治・経済・軍事の全側面から支援する道を突き進んでいます。
象徴的なのは、14年3月28日に国際連合人権理事会が採択した決議に、米国と日本がそろって反対したことです。決議は「武装無人機の使用によって生じる民間人の犠牲に強い懸念を表明」し、国際法の順守や公平な調査を求めるものでした。
安倍政権が15年1月9日に決定した「第3次宇宙基本計画」は、「日米同盟強化に向けた取り組みの一環として、安全保障面での日米宇宙協力を強化していく必要がある」と強調しました。
同計画は、GPS(全地球測位システム)をはじめとする宇宙システムについて、「米国の抑止力の発揮のために極めて重要な機能」を果たしていると手放しで礼賛しました。そのうえで、「米国との衛星機能の連携強化などによりアジア太平洋地域における米国の抑止力を支える」方針を掲げました。
真っ先にあげた具体策は「我が国の準天頂衛星と米国のGPSとの連携を一層強化する」ことです。
全世界の位置を測定するGPS衛星こそは、無人機やミサイルの遠隔操作にも欠かせない、宇宙システムの要です。「新たな紛争を引き起こす原因」と批判される米国の戦争システムを「支える」ことが、安倍政権の宇宙政策の中心課題に据えられているのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月12日付掲載


オバマはブッシュと比べるとソフトなイメージがありますが。無人攻撃機の活用って事では変わっていない。
日本の三菱重工業などの軍需産業が、その一翼を担っている。
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軍事依存経済 宇宙編③ 「ゲーム機感覚」で殺害

2016-02-13 16:11:55 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 宇宙編③ 「ゲーム機感覚」で殺害

無人航空機(ドローン)から精密誘導ミサイルを発射する米国の「ドローン戦争」が多くの民間人犠牲者を生むのはなぜか―。
国連人権理事会での特別報告「標的殺害に関する研究」(2010年5月28日)は、無人機の軍事利用の実態を踏まえ、構造的な問題点を指摘しています。
それによれば、無人機プレデターやリーパーを使った攻撃には、米空軍が指揮する作戦と、中央情報局(CIA)が指揮する作戦の2系統があります。
他国の領域で「標的」を殺害する「秘密政策」を米国が採用したのは、01年9月11日の同時多発テロ事件の直後でした。02年11月にはCIAが実行に移し、その後、急増していきました。
CIAはバージニア州にある本部で無人機を操縦し、「政府高官によって承認された標的のリスト」に基づいて殺害を実行しています。標的を選ぶ基準は公表されておらず、CIAは標的の名前を確認するよう命じられてすらいません。標的の決定は、監視によって把握した生活パターンの評価に基づいているとみられます。
一方、米空軍はアフガニスタン戦争やイラク戦争で無人機による爆撃を行ってきました。やはり標的リストを持っており、標的への武力の使用には何ら制限を設けていません。



米軍三沢基地の無人偵察機グローバルホーク

誤解で標的選ぶ
こうした標的殺害を行う無人機は、「一般市民の無差別な殺害を必然的に引き起こす」ため、「国際人道法で禁止された兵器にあたる」との指摘を受けています。特別報告は「無人機に関する重大な懸念」を三つの角度から掘り下げています。
まず、政策立案者や指揮官は「どんな状況のもとで誰を殺すことができるかについての法的制限を、あまりに拡張的に解釈する誘惑にかられる」ことになります。無人機を使えば、「自国の軍隊を何らリスクにさらさずに標的を殺害することが容易になる」ためです。
2番目に、無人機によって他国民を監視するチームは、「状況を正確に理解するために不可欠」な「地域の習慣に関する知識」を欠いたまま、標的を選ぶことになります。「標的がいる場所から数千マイルも離れたところに座っている」ためです。誤解に基づいて一般市民を標的に選ぶ恐れがあるということです。
3番目に、「標的殺害」を実行する無人機の操縦者は「プレイステーション感覚での殺害に染まっていく」危険性があります。あたかもソニーのテレビゲーム機プレイステーションを扱うような感覚で、殺人を犯しかねないというのです。操縦者は「戦場から数千マイルも離れた基地」の中で、「戦闘のリスクや過酷さにさらされることがない」まま、「コンピュータの画面だけをみて作戦を実行する」ためです。

殺害の9割別人
実際、米軍が標的として無人機攻撃で殺害した人の9割が別人だった、という衝撃の統計資料が明るみに出ています。米国のインターネット・メディア「インターセプト」が米軍の機密文書として15年10月15日に公開したもの。12~13年にアフガニスタンで無人機攻撃によって殺害した219人のうち、意図した標的はわずか35人だったといいます。
同メディアは情報提供者の次のような言葉を紹介しています。
「無人機攻撃は標的以外の人も殺す。狙われるべき人たちだとは限らないのに…。とんでもないギャンブルだ」
無人機攻撃は、米国が一方的に標的と決めつけた人だけでなく、標的にすらなっていない人びとを殺す、無差別殺害という悲劇をもたらすものなのです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月11日付掲載


無人攻撃機の「標的」の選び方も恣意的だし、たとえ「標的」が妥当だとしても、多くの市民の中から「標的」を見つけ出すのは至難の業。
実際に目視するのでわなく、テレビカメラで確認するのだから…。
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