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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安保改定60年 第一部⑨ 伊の米軍機事故と地位協定 “主権は我々にある”

2020-02-13 11:47:55 | 平和・憲法・歴史問題について
安保改定60年 第一部⑨ 伊の米軍機事故と地位協定 “主権は我々にある”
1998年2月、イタリア北東部のスキー場で低空飛行訓練中の米海兵隊機がロープウエーのケーブルに接触・切断し、ゴンドラが落下して20人が死亡する事故が発生しました。アメリカの裁判でパイロットは無罪となり、イタリア国民の怒りが沸騰。米・イタリア両政府は99年4月16日、米軍機の飛行はイタリア当局の許可を必要とすることで合意しました(表)。当時、イタリア側の交渉代表者だったレオナルド・トリカリコ元イタリア空軍参謀長・NATO(北大西洋条約機構)第5戦術空軍司令官に交渉の経緯や日米関係、日米地位協定について聞きました。(ローマ=伊藤寿庸)

元イタリア空軍参謀長・NATO第5戦術空軍司令官
レオナルド・トリカリコ氏に聞く

イタリア空軍参謀総長、イタリア首相軍事顧問(1999~2004年)、NATO第5戦術空軍司令官などを歴任。現在は、安全保障問題シンクタンク「情報文化・戦略財団」議長。



―事故当時、どう対応しましたか。
悲劇であり、イタリア人として心が痛みました。しかし、パイロットとして本能的に、山地での低空飛行の通常の事故だと考えました。そのような事故は、それまでにも起きていたからです。
1年後、私は、政府から事故原因の調査を行うよう任命されました。当時のダレーマ首相がクリントン米大統領との間で、事故調査委員会の設置で合意したからです。
私は米側代表のプルアー提督に、「一緒に合意した報告を作ろう。そのことが国際社会に重要なシグナルを送ることになる」と呼びかけました。彼はもちろん同意しました。
「トリカリコ・プルアー報告」ができたとき、最初、米国は署名を渋りました。米国は、報告書を、イタリアでの米軍の飛行活動に対する「罰」だと解釈したからです。報告書を何度も送り返してきました。米側が報告書のもっとも重要な一文―「米軍がイタリア国内で低空飛行を行おうとするいかなる場合も、イタリア当局の許可を得なければならない」という文言を受け入れなかったからです。
報告書の締め切り期限3日前の99年4月中旬、私はワシントンの米国防総省で米国の委員会と話し合いを持ちました。しかし、彼らの主張は、先ほど述べた文言を受け入れるつもりはないということに尽きていました。
私はこう言いました。「あなた方はイタリアで20人を死なせたが、米国の司法は乗組員を無罪にしたということであり、われわれはルールを改定した。それはあなた方に送った通りだ。あなた方はこれを受け入れなければならない。わが国においては、われわれが全面的に主権を持っているからだ」
結局、彼らは署名したのです。ただ、ここからがあなた方(日本人)にとって重要だと認識してほしい。
会合の後、プルアー提督は、少し離れた部屋の片隅で私にこう言いました。「あなたは正しい。しかしあなたは米国を理解しなければならない。あなたが今日やったことを、他の国々もやるかもしれない。そうなると、われわれにとってとても不都合なのだ」と。それが理由で、米国は署名したがらなかったのです。



イタリア北部カバレーゼ近くのスキー場で、米海兵隊機の低空飛行訓練によるロープウェイ切断で墜落したゴンドラを共同調査する米軍とイタリア当局=1998年2月5日(ロイター)

国内法免除考えられぬ
―1998年のイタリアのスキー場事故は日本にも衝撃を与え、99年1月、在日米軍の低空飛行訓練を規制するための日米合同委員会合意が発表されましたが、何の法的拘束力もありません(表)。米軍は低空飛行ルートを勝手に引き、日本政府にも知らせないまま、訓練を続けています。イタリアの場合はどうでしょうか。

イタリアにおける低空飛行に関する規則は、米国、あるいは他国も同様に、わが国の空域を飛ぶ許可を得るために、正確な飛行計画をイタリア空軍に提出するよう義務付けています。日本などでも、国家主権に基づいて、低空飛行にも通常飛行一般にも法的拘束力のある規則や法令の制定が認められるべきだと思います。
低空飛行ルールに関するいかなる規則や法令も、疑いなく法的拘束力を持つべきであり、すべての航空機はそれを順守すべきです。


イタリア日本
米軍は許可なしに低空飛行訓練できない低空飛行訓練の実施・中止は米軍に決定権がある
■米軍司令官は、毎日の飛行計画をイタリア空軍基地司令官に提出する。米軍司令官は、その任務がイタリアの飛行規則に合致していることを証明し、低空飛行訓練をおこなう資格があることを証明する。
■証明を受け、イタリア基地司令官の同意を得た米軍部隊は、1週間に認められる飛行
活動のうち25%を上限として低空飛行訓練を認められる。
■前進配備・ローテーション部隊は、イタリア国防参謀が許可した演習への参加か、イタリア側が許可した場合のみ、低空飛行訓練ができる。
■空母艦載機などの低空飛行訓練も、証明を受け、承認された場合に限る。
(1999・4・16 米国とイタリアの低空飛行訓練見直しに関する国防相合意)
■低空飛行の間、在日米軍は、原子力エネルギー施設や民間空港などの場所を、安全かつ実際的な形で回避し、人口密集地域や公共の安全に係る他の建造物(学校、病院等)に妥当な考慮を払う。
■在日米軍は、国際民間航空機関(lCAO)や日本の航空法により規定される最低高度基準を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高度規制を現在適用している。
■週末および日本の祭日における低空飛行訓練を、米軍の運用即応態勢上の必要性から不可欠と認められるものに限定する。→「不可欠」なら、いくらでもできる!
(1999・1・14 在日米軍の低空飛行訓練に関する日米合同委員会合意)
最低飛行高度
600メートル→事実上、イタリア国内では実施困難①人口密集地の最も高い障害物上空から300メートル②人けのない地域や水面から150メートル


法令全面尊重を
―日本の首都圏には「横田空域(ラプコン)」と呼ばれる、米軍が管制権を持つ広大な空域が存在します。東京を離着陸する民間航空機は原則として、この空域を避けるため、遠回りや急降下を余儀なくされます。イタリアでは、このような空域は存在しますか。

空域は、管轄する当局によって定められた一連の合意済みの条件と法令によって規制されなければなりません。イタリアの場合、これらの作業は、運輸省-民間航空局を通じて-と国防省-軍の上級司令部を通じて-によって行われます。その国の空域の使用は、常に受け入れ国と、空域を使用する必要のある諸国との間で合意しなければならず、その使用は、常にその国の法律や法令を全面的に尊重して行われなければなりません。



徳島県海陽町の入道山を背景に低空飛行とみられる戦闘機=2019年5月22日

辺野古の押し付けだめ
―日本政府はかつて、日米地位協定について「NATO(北大西洋条約機構)並み」にしてほしいと訴えていました。しかし、安倍政権は「NATO並み」を放棄しています。その理由は、「NATOは相互防衛条約だが、日米安保条約では日本が米本土を防衛する義務がなく、NATO諸国と同等の関係を得るのは現実的ではない」というものです。また、NATO諸国とは異なり、日米地位協定では、駐留米軍は「国内法不適用」が原則となっています。そこには、「日本は米国に守られているから、言うべきことを言えない」という意識があります。対米関係はどうあるべきだと考えますか。

日本の当局は、北大西洋条約といった米国が結んだ他の条約にかかわりなく、日本国民の期待により合致した形で主権領土内での(米軍の)行動のルールに関して自由に合意できます。米国との合意は、日本国民の利益を尊重するために立案し、協議すべきです。これらの合意は、米軍基地から近くても遠くても、日本の市民の必要性と権利に沿い、日本の利益ともっと一致したものであるべきです。
日本の米軍基地に駐留する米軍要員が日本の国内法の順守を免除されているというのは、考えられないことです。日米関係を守るためにも、新たな合意に書き換える必要性について真剣に検討すべきです。
また、二つの民主国家の関係は相互の尊敬に基づくべきだと理解することが重要です。したがってこのような文脈では、“道徳的な恐喝”(そんなものが存在するならば)などは考えるべきではありません。二つの国家の協力は、双方にとって有益で、共通の目的を共有するものであるべきです。日本に対する米国の保護政策は、アジア・太平洋地域の地政学的情勢といった死活的に重要な問題を話し合うときに、(米国に従わせるための)テコとして使われてはなりません。

住民の権利守れ
―日米両政府は、沖縄県の人口密集地にある米海兵隊普天間墓地の返還条件として、県内の辺野古沿岸部を埋め立てて代替基地の建設を進めています。圧倒的多数の住民・自治体は反対しています。辺野古新基地について、どう考えますか。

沖縄県民は、自らの慣習と伝統に基づき、平和的に暮らす権利を持っています。日米両政府と沖縄県は、そのような条件が守られるようあらゆる努力を尽くす必要があります。当該住民が、外国の意思の押し付けによって何らかの状況を耐え忍ばなければならないというような状況は、とりわけ平時には、いかなる理由でも許されません。
―来日したいという希望はありますか。
もし公式の招待を受ければ、喜んで十分な検討を行います。とりわけ、沖縄とその住民のために何らかの支援になるという理由ならなおさらです。(第1部おわり)
(政治部・竹下岳、柳沢哲哉、斎藤和紀、ベルリン支局・伊藤寿庸が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年2月12日付掲載


同じ第二次世界大戦敗戦国でも、米軍にたいする対応が日本とイタリアで全く違う。
イタリアでは、低空飛行訓練に対しても、国内の法律を守らないといけない。当然と言えば当然の事ですが、日本では米軍の好き勝手にされている。
たとえ日米安保条約があったとしても、まともな政治家ならアメリカに対して日本の法律を守れと言うべき。


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