2022年度予算案の焦点⑦ 社会保障 コロナ禍 教訓に逆行
2022年度予算案の社会保障関係費は、21年度比4393億円増の36兆2735億円で過去最大です。増額分は高齢化などで当然増える「自然増」などによるもので、新型コロナウイルス禍のもとで椙次いだ医療ひっ迫と「自宅療養」中のコロナ患者の在宅死を防ぐには、あまりに不十分な内容です。むしろ、社会保障費抑制ありきの姿勢をあらわにしています。
感染力が強い変異株「オミクロン株」が拡大する一方、22年度予算案と一体的に編成された21年度補正予算を含め、岸田文雄首相が掲げた感染拡大期の「無料検査の拡充」は「都道府県の判断」で実施をと、自治体任せだったうえ、中身も不十分です。自民党政治で半減された保健所については「専門人材の派遣体制の強化」などを示すだけで、恒常的な人員増に向けた新たな施策はありません。
※財務省資料をもとに作成。処遇改善分などを加えると、差し引き▲約2200億円に。▲はマイナス
「いのちまもる 医療・社会保障を立て直せ! 10・14総行動」の参加者=2021年10月、東京都内
特例加算も廃止
脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りとなった医療体制の再建どころか、公的医療保険制度の公定価格「診療報酬」の22年度改定は全体で0・94%も引き下げます。マイナス改定は5回連続(14年度の消費税増税対応のプラス分を除く。改定は2年に1度)です。医療機関の人件費や設備関係費に充てられる本体部分に限っても、感染拡大前に決めた前回20年度改定すら下回る微増です。6歳未満を診察する医療機関での感染対策に対する特例加算は廃止します。
診療報酬の引き下げ分を使って、自然増を概算要求時6600億円から4400億円へ2200億円も圧縮。安倍・菅政治が9年間で約2兆円も削り込んできた「自然増削減路線」を強化しています。
コロナ禍のもとでも病床削減も進めます。消費税増税は「福祉充実のため」と言いながら、増税分を充てて医療機関の病床削減や統廃合を促す「病床機能再編支援」を推進し、コロナ患者の治療で重要な高度急性期・急性期病床を計20万床削減する「地域医療構想」に固執しています。
一方、コロナ禍で疲弊した看護・介護・保育職などの10月分以降の賃上げを盛り込んでいますが、看護職は月1万2000円増、その他の職種は月9000円増にとどまります。しかも、看護職は半数以上が対象外。医療機関の判断で看護補助者(介護職など)や作業療法士、理学療法士らの賃上げにも財源を充てることができるため、1人当たりの賃上げ幅は減る可能性大です。
国民には負担増・給付削減の“痛み”を押し付けます。受診控え・健康悪化が危倶されるのに、75歳以上の医療費窓口負担(現行原則1割)への2割負担を10月から導入すると決定。国費290億円を削減します。
生活苦に拍車が
公的年金額は0・4%引き下げます。国民年金は保険料を40年間納めた満額で月259円減、厚生年金は夫妻2人のモデル世帯で月903円減です。食料品や灯油の値上がりとダブルパンチで、高齢世帯とともに、その生活を支える現役世代の生活苦に拍車をかけるのは明白です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月27日付掲載
社会保障関連費は36兆2735億円で過去最大。しかし、高齢化にともなう自然増を含んだもので、新型コロナウイルス禍のもとで相次いだ医療ひっ迫と「自宅療養」中のコロナ患者の在宅死を防ぐには、不十分な内容。
看護・介護・保育職などの10月分以降の賃上げを盛り込んでいますが、看護職は月1万2000円増、その他の職種は月9000円増にとどまる。
あまりにも不十分です。
2022年度予算案の社会保障関係費は、21年度比4393億円増の36兆2735億円で過去最大です。増額分は高齢化などで当然増える「自然増」などによるもので、新型コロナウイルス禍のもとで椙次いだ医療ひっ迫と「自宅療養」中のコロナ患者の在宅死を防ぐには、あまりに不十分な内容です。むしろ、社会保障費抑制ありきの姿勢をあらわにしています。
感染力が強い変異株「オミクロン株」が拡大する一方、22年度予算案と一体的に編成された21年度補正予算を含め、岸田文雄首相が掲げた感染拡大期の「無料検査の拡充」は「都道府県の判断」で実施をと、自治体任せだったうえ、中身も不十分です。自民党政治で半減された保健所については「専門人材の派遣体制の強化」などを示すだけで、恒常的な人員増に向けた新たな施策はありません。
2022年度社会保障費「自然増」分の削減 | ▲約2200億円 | |
主な内訳 | 診療報酬のうち医療体制の拡充に充てるルールだった薬価引き下げ分など | ▲約1600億円 |
75歳以上の医療窓口2割負担の導入 | ▲約300億円 | |
感染症対策に充てる診療報酬特例加算の廃止 | ▲約300億円 | |
安全面が懸念される「再診不要」の処方箋導入 | ▲約100億円 |
「いのちまもる 医療・社会保障を立て直せ! 10・14総行動」の参加者=2021年10月、東京都内
特例加算も廃止
脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りとなった医療体制の再建どころか、公的医療保険制度の公定価格「診療報酬」の22年度改定は全体で0・94%も引き下げます。マイナス改定は5回連続(14年度の消費税増税対応のプラス分を除く。改定は2年に1度)です。医療機関の人件費や設備関係費に充てられる本体部分に限っても、感染拡大前に決めた前回20年度改定すら下回る微増です。6歳未満を診察する医療機関での感染対策に対する特例加算は廃止します。
診療報酬の引き下げ分を使って、自然増を概算要求時6600億円から4400億円へ2200億円も圧縮。安倍・菅政治が9年間で約2兆円も削り込んできた「自然増削減路線」を強化しています。
コロナ禍のもとでも病床削減も進めます。消費税増税は「福祉充実のため」と言いながら、増税分を充てて医療機関の病床削減や統廃合を促す「病床機能再編支援」を推進し、コロナ患者の治療で重要な高度急性期・急性期病床を計20万床削減する「地域医療構想」に固執しています。
一方、コロナ禍で疲弊した看護・介護・保育職などの10月分以降の賃上げを盛り込んでいますが、看護職は月1万2000円増、その他の職種は月9000円増にとどまります。しかも、看護職は半数以上が対象外。医療機関の判断で看護補助者(介護職など)や作業療法士、理学療法士らの賃上げにも財源を充てることができるため、1人当たりの賃上げ幅は減る可能性大です。
国民には負担増・給付削減の“痛み”を押し付けます。受診控え・健康悪化が危倶されるのに、75歳以上の医療費窓口負担(現行原則1割)への2割負担を10月から導入すると決定。国費290億円を削減します。
生活苦に拍車が
公的年金額は0・4%引き下げます。国民年金は保険料を40年間納めた満額で月259円減、厚生年金は夫妻2人のモデル世帯で月903円減です。食料品や灯油の値上がりとダブルパンチで、高齢世帯とともに、その生活を支える現役世代の生活苦に拍車をかけるのは明白です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年1月27日付掲載
社会保障関連費は36兆2735億円で過去最大。しかし、高齢化にともなう自然増を含んだもので、新型コロナウイルス禍のもとで相次いだ医療ひっ迫と「自宅療養」中のコロナ患者の在宅死を防ぐには、不十分な内容。
看護・介護・保育職などの10月分以降の賃上げを盛り込んでいますが、看護職は月1万2000円増、その他の職種は月9000円増にとどまる。
あまりにも不十分です。
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