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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

株高の深層② 強まる株主資本主義

2024-02-19 07:11:46 | 経済・産業・中小企業対策など
株高の深層② 強まる株主資本主義

株高の背景にある二つ目の事情は、日本企業による「自社株買い」や株主配当金の増額(増配)です。
自社株買いとは、企業が過去に発行した自社の株式を市場から買い戻すことです。
SMBC日興証券によると、東証株価指数(TOPIX)を構成する企業が2023年に決議した自社株購入額は計9兆3860億円と、22年の9兆2221億円を上回り、金額ベースで過去最高を更新しました。(グラフ1)




株主還元の強化
自社株買いは発行済み株式、数を減らし、1株当たり利益を増やすので、株主還元の強化策とみなされます。計画発表後には市場で株式が買われて株価が上昇する傾向にあります。このため近年、自社株買いを企業に求める機関投資家が増えているといわれます。
一方、増配は直接的な株主還元策です。「日経」(23年12月24日付)の集計によると、上場企業2350社の24年3月期の配当総額は16兆円で、過去最高になる見通しです。23年9月末時点から4000億円上振れしました。
株高の背景の三つ目は、23年3月に東証が上場企業に呼び掛けた経営改革です。東証は上場企業に株価を意識した経営を求め、株価純資産倍率(PBR)の引き上げを迫りました。これが上場企業による自社株買いや増配の流れを加速させました。
PBRは「株価÷1株当たり純資産」で算出され、各企業の株式時価総額がその企業の純資産の何倍になっているかを示す指標です。PBRが1倍を下回る場合、「株価が安すぎて時価総額が企業の純資産より低く、会社を解散して資産を分けた方が株主の取分が多い」状態とされます。
東証は上場企業の多くがPBR1倍割れだと指摘し、「株価に対する意識改革」を要請しました。PBR引き上げのためには株価上昇か資産圧縮が必要です。自社株買いは株価上昇に、株主配当は株価上昇と資産圧縮の双方につながります。東証の要請後、シチズン時計やウシオ電機など、「異例の大規模自社株買い」(「日経」23年6月9日付)を打ち出す企業が相次ぎました。




従業員を犠牲に
長期的にみても、株主還元は急激に強化されています(グラフ2)。22年度の大企業(資本金10億円以上、金融・保険を除く全業種)の配当金合計額は1990年度と比べて8・6倍になりました。当期純利益は5・7倍。他方で従業員1人当たり給与はわずか1・1倍(物価上昇で実質マイナス)です。従業員を犠牲にして利益を伸ばした企業が株主への配当金を増やしたという構造です。
岸田文雄政権は「資産運用立国実現プラン」(23年12月13日策定)で「中長期的な企業価値向上のため、投資家と企業との実効的なエンゲージメント(対話)を促進する」と表明。企業経営における株主の優位をさらに推し進める姿勢です。「新しい資本主義」ではなく、貧困・格差と金融危機を招いた米国流の「株主資本主義」(株主の利益を第一とする資本主義)が、日本で強められています。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月16日付掲載


自社株買いは発行済み株式、数を減らし、1株当たり利益を増やすので、株主還元の強化策。計画発表後には市場で株式が買われて株価が上昇する傾向に。このため近年、自社株買いを企業に求める機関投資家が増えていると。
一方、増配は直接的な株主還元策。「日経」(23年12月24日付)の集計によると、上場企業2350社の24年3月期の配当総額は16兆円で、過去最高になる見通し。
「新しい資本主義」ではなく、貧困・格差と金融危機を招いた米国流の「株主資本主義」(株主の利益を第一とする資本主義)が、日本で強められています。

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