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自民・官僚、「共謀罪」創設に固執 元法相 平岡秀夫さんに聞く

2017-04-16 19:27:41 | 平和・憲法・歴史問題について
自民・官僚、「共謀罪」創設に固執 元法相 平岡秀夫さんに聞く

14日に衆院法務委員会で審議入りした「共謀罪」法案の問題点について、平岡秀夫元法相に聞きました。
(中祖寅一、前田美咲)




ひらおか・ひでお
1954年生まれ。内閣法制局参事官などをへて、2000年6月から民主党衆院議員。11年、法相に。98年に弁護士登録し、現在、日弁連共謀罪法案対策本部委員。


今の大きな流れを見ると、安倍政権は「戦争のできる国」へと、この国のありようを変えてきています。

「もの言わぬ国民」
安保法制で、武力紛争に巻き込まれる危険を高めました。特定秘密保護法は、大事な情報を国民に知らせず、知ろうとする国民を処罰します。「もの知らぬ国民」をつくるものです。そして共謀罪は、「もの言わぬ国民」をつくります。そこに大きな狙いがあるのではないでしょうか。
軍機保護法や治安維持法が、「もの知らぬ国民」「もの言わぬ国民」をつくった戦前の日本のありようと、非常に似てきています。
安倍首相は、決して口には出さないでしょうが、心の奥底では、「共謀罪」ができたら、「戦争のできる国」として、国民監視をはじめ、いろんなことに使えると思っていることでしょう。

首相が偽りの説明
安倍晋三首相が、「テロ等準備罪」と呼んで“これがないと東京五輪・パラリンピックが開けない”という脅し文句、うそ偽りの説明で法案を成立させようとしていることに、一国民として強い怒りを感じます。
政府は、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)に基づいて「共謀罪」をつくるとしていますが、この条約はテロ防止ではなく、マフィアなどの国際的な経済犯罪対策です。交渉の過程でテロを含むかが議論になったものの、最後は対象から外されました。
TOC条約を締結することで国際連携を可能にし、情報を共有することには意味があると思います。
しかし、条約締結のために、条約の文言通りに「共謀罪」をつくらなければいけないことにはなっていない。各国の国内法の基本原則に従うことが条約上許されているのです。
民主党政権時代に私が法相として共謀罪問題の検討を2011年11月7日に指示しました。その後、同月9日の衆院予算委員会で自民党の石破茂衆院議員から質問を受けました。
石破氏は私に「共謀罪」創設を迫り、私が「共謀罪」なしでもTOC条約は締結可能とこたえました。すると法務省刑事局長に対し執拗に、「政治主導が誤っているのであればそれをただしていくのが官僚の矜持だ」と、官僚を脅すような質問を繰り返しました。
当時、法務省、外務省はそれぞれ「共謀罪」創設に固執していましたが、特に外務省はその姿勢が強かった。私の印象では、米国と同じような「共謀罪」をつくろうという意思が働いていると感じました。
昨年8月、安倍政権が「共謀罪」法案提出の意欲を示すと、9月にキャロライン・ケネディ米駐日大使が金田勝年法相を表敬訪問し「大変勇気づけられた」「米国としてもできることがあれば、協力する」などと表明したと報道されています。やはり背景に、米国の圧力、意向が働いているのではないか。
政府は「テロ対策」を最大のうたい文句にしますが、「テロ対策」では、まず13本の「テロ対策条約」をすでに締結していて、日本はそれらに基づいて国内法を整備しています。
世界各地で現実に起きているテロに、「共謀罪」がないと日本で対応できないかといえば、そんなことは全くありません。
爆発物を使ったテロには、共謀の段階で処罰できる爆発物取締罰則があり、日本では銃刀法があって銃や刃物の所持自体を罰することができます。地下鉄サリン事件の例は、サリンをつくるための物質を手に入れた時点で摘発できます。「共謀罪」がなければ手を出せないとは言えません。
元警察庁長官は、「共謀罪」があったとしても、サリン事件を「防げた自信はない」といっています。それは、情報がなかなか集まらないからだと考えます。強固なテロ組織は、共謀の事実や合意の中身が外に漏れないよう細心の注意を払います。
世界で連鎖的に起こっているテロを防ぐためには、国際社会が、政治的・宗教的対立を武力で解決する姿勢をやめ、話し合いの姿勢に変えることが重要です。テロの根源といわれる貧困への対策も必要です。テロを実力で抑え込もうとすれば、かえって拡散させることになるでしょう。



共謀罪の危険性を訴える日本共産党の宮本徹衆院議員(左から2人目)=4月15日、東京都新宿区

監視社会を危惧
「共謀罪」法案の導入で私が強く危惧するのは、監視社会をつくり出すことになることです。
「合意」を処罰する共謀罪は、犯罪による被害も、犯罪の実行もない段階で処罰するので、犯罪が成立していることが客観的に非常に分かりづらい。
それでも「合意」が犯罪とされれば、警察当局としては、犯罪が発生しているのに摘発できなければ責任を問われるので、幅広く犯罪(合意)の発生を監視しなければならなくなります。
監視するのは会話の中身です。そうすると、盗聴法を適用したり、今は認められない室内盗聴や会話傍受も認めることになるでしょう。
また、自白や供述中心の取り調べが強まる危険があります。日本の刑事司法の悪い点として指摘されるところが如実にあらわれる恐れがあります。
さらに法案は、自首した者に刑の減軽・免除を認めることにより、「密告」を奨励しています。合意が成立すればその瞬間に、共謀罪は「既遂」となりますから、罪を逃れるか軽減してもらうには自首するしかない。スパイが共謀を先導し、自分だけ自首することもできないわけではない。
昨年には、司法取引制度が導入され、他人を有罪とするのに協力した人について、罪を軽減、または不起訴にする取引ができるようになりました。これらが合わさって、監視や密告をしあう社会になりかねないと心配しています。

恣意的捜査恐れ
「合意」の成立範囲も不明確です。判例で認められた共謀共同正犯の事例では、言葉に出さなくとも「黙示の合意(共謀)」が成立したと認定されています。何が犯罪になるのかが非常に不明確になるのです。
他方、一般人は処罰の対象とされず、「組織的犯罪集団」の行為だけが処罰されると言っていますが、どんな集団を「組織的犯罪集団」とするか、定義も全く不明確です。一般人である当事者にとってみれば、自分がそこに所属しているかすら分からない。それを決めるのは、実際に捜査する捜査当局なので、非常に恣意的・政治的な捜査が行われやすくなります。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年4月16日付掲載


元警察庁長官は、「共謀罪」があったとしても、サリン事件を「防げた自信はない」
それは、情報がなかなか集まらないから。
「共謀罪」によって、監視や密告をしあう社会になりなねない危惧。



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