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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

最低賃金の焦点(上) 地域間格差是正は急務 低い地域で人口流出 地域経済に打撃

2024-05-24 07:12:19 | 働く権利・賃金・雇用問題について
最低賃金の焦点(上) 地域間格差是正は急務 低い地域で人口流出 地域経済に打撃

山縣宏寿・専修大学准教授に聞く

最低賃金の引き上げをめぐる審議が夏から始まります。焦点になっているのが、大幅引き上げとともに、地域間格差の縮小です。最賃額の低い地域から高い地域への人口流出が指摘されており、その打開が急務になっています。最賃をめぐる課題について、専修大学准教授で、労働運動総合研究所(労働総研)常任理事の山縣宏寿さんに聞きました。
(行沢寛史)

近年、最低賃金が上昇していますが、その中で見逃せないのが、各都道府県で最賃の地域間格差が広がっていることです。
そこで、2019年時点の最賃額と各都道府県の人口移動の相関関係について調べました。表は、横軸に最賃の額、縦軸に転入・転出を示しており、ゼロより上が転入超過で人口が流入している地域、ゼロより下が転出超過で人口が流出している地域を示しています。




相関関係を確認
この表からわかることは、最賃額の低い地域がゼロより下に集中して転出超過となり、最賃額が高い地域で転入超過となっていることです。これは都道府県をまたいで引っ越しをした場合だけで、最賃額の高い地域に出勤する人たちは含まれていません。
注意してほしいのは、これは相関関係、つまり最賃額の格差と各地域の転入・転出がどの程度関係しているかを示したものだということです。最賃額が高い地域は転入超過になる傾向が高く、低い地域では転出超過になる傾向が高いということです。その点で、「最賃が低いから高い地域への人口移動が起きている」という因果関係ではないことです。
ただ、最賃額の高低と転出・転入の相関関係の強さ=相関係数は0・65となっています。各専門によって若干異なりますが、おおむね「0・2を超えると弱い相関関係がある」「0・4を超えると中程度の相関関係がある」「0・7を超えるとかなり強い相関関係がある」とされています。今回の結果は、相関関係を確認することができますし、その程度も小さくない数字といえます。
近年、最賃額の地域間格差が広がり、1995年の最高額と最低額の格差が96円から、昨年の改定で220円となりました。地域間格差が広がれば広がるほど、転出・転入の数字がさらに動く可能性があります。


労働力確保に影
この動きを具体的な地域として、山形県を例に考えたいと思います。山形県でも、各都道府県との最賃額の格差が大きければ大きいほど、その地域への転出超過となっています。東北地方は全国的にも比較的最賃が低い地域ですが、その中で宮城県だけは他県よりも相対的に高く、山形県から宮城県への転出の割合がかなり大きくなっています。さらに転出の割合が大きくなっているのが、東京都や神奈川県です。
そこで、東京などの首都圏を中心地域、東北地方を周辺地域、その間にある茨城県、栃木県、群馬県などを準周辺地域として、山形県での人口移動を見てみました。すると、東北地方内での転出・転入の差はあまりないのですが、宮城県への大きな転出があるという構造になっています。そして、かなり強い求心力となっているのが中心地域への転出です。その間に挟まれている準周辺地域は、最賃額に多少の差があっても、それほど大きく人が移動していないという結果になりました。
これはあくまでも引っ越しによる転入・転出が確認できる数字です。しかし、引っ越しを伴わない県をまたいだ通勤があり、山形県から宮城県まで通勤することは、かなりあることだと聞いています。同様に奈良県でも最賃額が高い大阪府などへの転出はしていないのですが、大阪府などに通勤しているといいます。つまり、最賃額の高い地域に労働力が集まり、低い地域では、労働力の確保がより困難になっていることがわかります。
また男女別にみた相関関係では、男性が0・64、女性が0・66と、ほぼ差がありませんでした。
現在の地域間格差でこれだけの人口移動があるわけですから、その格差が広がれば、低い地域から高い地域への転出はさらに大きくなります。



「最低賃金を全国一律1500円に」と訴える人たち=2023年10月2日、東京都渋谷区

全国一律でこそ
労働政策の基本的な役割の一つは、生産活動を行う上で必要な労働力をどう安定的に確保するかにあります。しかし、最賃の現状は、労働力の確保を困難にするばかりか、危うくする性格のものです。最低賃金法1条にある「労働者の生活の安定」にとって十分な額かというと、25歳・単身者世帯の最低生計費すら保障できていないわけです。このもとで若い労働者が、結婚して子どもを産み育てられるのか。この問題は、社会全体の中で労働力自体が縮小し、最終的には枯渇してしまうという事態を引き起こす性格があるのです。
問題を解決するには、最賃を大幅に引き上げることとあわせて、地域間格差を縮小し、全国一律にしていくしかありません。
政府は「地方創生」などと言っていますが、最賃の地域間格差は、政策として整合性を欠いています。一方で「地域の中で、安定・安心して暮らせる雇用を増やす」「労働力を確保する」といいながら、他方で地方経済が成り立たなくなるような地域間格差があるわけです。いまブレーキとアクセルを両方踏んでいるような状態です。
労働力の確保の観点からも、地方経済の観点からも、地域間格差を緊急に是正していくことが必要です。
(つづく)◇

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月22日付掲載


近年、最低賃金が上昇していますが、その中で見逃せないのが、各都道府県で最賃の地域間格差が広がっていること。
この表からわかることは、最賃額の低い地域がゼロより下に集中して転出超過となり、最賃額が高い地域で転入超過となっていること。これは都道府県をまたいで引っ越しをした場合だけで、最賃額の高い地域に出勤する人たちは含まれていません。
最低賃金法1条にある「労働者の生活の安定」にとって十分な額かというと、25歳・単身者世帯の最低生計費すら保障できていないわけです。

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