きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

高齢者の自動車運転 安心安全には

2016-12-04 14:04:24 | 政治・社会問題について
高齢者の自動車運転 安心安全には

高齢者による自動車事故が増えています。一方で、都市部以外では車がなければ生活できないような交通環境が広がっています。安心して生活できる交通環境をつくるとともに、お年寄りの事故をなくすことは急いで取り組まなければならない課題となっています。(武田祐一)

「高齢者講習」の現場で~気づきにくい身体機能の低下



高齢者講習でシミュレーターを使った反応検査をする受講者

現在は、運転免許を持っている70歳以上の人は3年ごとに自動車教習所で3時間の「高齢者講習」を受けなければ、免許の更新ができません。最近の講習では、2017年3月12日に施行される改正道路交通法や、高齢ドライバーの免許証の自主返納制度などについても説明しています。
東京・世田谷区にある上北沢自動車学校で高齢者講習の受講者に聞いてみると「まだ現役で車を運転するアルバイトをしている」(77歳、男性)「毎日バイクで30キロ通勤しています」(75歳、女性)「運転免許証の自主返納は考えたことがないよ」(77歳、男性)という声が返ってきました。車の運転が必要だと感じている高齢者は少なくありません。
現在の講習では、高齢運転者の特徴などのビデオの視聴、動体視力や夜間視力、視野の検査、シミュレーターを使った運転時の反応検査、実車運転があります。75歳以上の人は「認知機能検査」も行われます。検査や講習を受けてみて「記憶力が落ちた」「反応が遅くなっている」「昔の自分と比べて運動能力の差を感じる」という人がいる一方で「全然問題がない」という人もいます。
指導員の有海幹宏(ありかいもとひろ)さんは講習について「心身両面の柔軟性のチェックの場です」と話します。しかし「気づきにくい身体機能低下や、それを補う運転を心掛けなければならないことをいかに自覚してもらうかが、難しいところです」といいます。



車庫入れをする、高齢者講習の受講者が運転する車=11月28日、東京都世田谷区

検査で3分類
改正道路交通法では、75歳以上の人が信号無視や逆走・歩道の通行、「止まれ」標識で止まらない、ウインカーを出さない、など18項目のいずれかの違反行為をした場合、3年を待たずに「臨時認知機能検査」を受けることになります。この検査結果で「認知機能の低下」があった場合に「臨時高齢者講習」を受けなければなりません。
検査では結果が三つに分けられ、「認知症の恐れあり」という第1分類だった場合、「診断書提出命令」などが出され、医師の診断を受けることになります。診断の結果「認知症」とされると免許証の取り消し、または停止になります。
第2分類は「認知機能低下の恐れあり」で3時間の高齢者講習、「問題なし」の第3分類で2時間の講習となっています。認知機能検査の内容は、通常の免許更新時も臨時の場合も同じです。
この改正道交法による免許取り消しの制度については関係者から疑問の声があがっています。



視野検査をする受講者(左)と指導員の有海さん

少ない専門医
教習所指導員の齊藤孝行さんはいいます。「現行の道交法でも、認知機能検査などで時間の認識などに問題がある第1分類の人は、運転に支障がある場合が多いのです。改正道交法では医師の診断を義務づけていますが、全国の認知症専門医は約1600人しかいません。診断が運転の可否を大きく左右するために、医師の責任が重くなりすぎ、システムがうまく機能するのかという心配があります」
さらに今後の課題について齊藤さんは、免許を持っている団塊の世代の760万人が70代になると、高齢者講習の対象者が一気に増えるため、「高齢者講習の対応は教習所だけでは足りなくなる」と指摘します。


高齢者が安全にすごせる交通環境を、どう保障したらいいのでしょうか。11月15日に「改正道路交通法施行に関する提言」を出した日本老年精神医学会理事長の新井平伊さんと、交通政策に詳しい立命館大学経営学部教授の近藤宏一さんに聞きました。



2017年3月の改正道路交通法や免許自主返納についてのチラシ

日本老年精神医学会の提言 新井平伊さん
尊厳守り生活の保証を

2015年度の交通安全白書によれば、自動車に乗車中の事故死者の4割は高齢者でした。事故を減らすために、今回の改正道路交通法には賛同ですが、同時に、高齢者の尊厳を守り、生活の質を保証することが大事だと思います。
提言の一つめは、交通事故の防止と事故が起きた際の被害を最小限にすることです。具体的には、高速道路パーキングエリアなどでの逆走防止ゲートの設置、通学路への自動車進入禁止とガードレール設置、そして自動ブレーキとペダル踏み間違い防止装置を標準装備した車の購入補助制度をつくることです。視覚、聴覚など感覚機能低下に配慮した交通標識をつくることも必要です。
二つめは高齢者の生活を守ることです。運転免許証の取り消しや自主返納で生活が困難にならないように、タクシー利用券やバス乗車パスを支給するなど、各地域の実情に合わせた交通支援のしくみづくりが大切です。
これらはいうまでもなく急いで実行すべきですが、国や自治体がやる気になればできる課題だと思います。
三つめは、路上での実車テストを導入するなどして、運転技能をさらに厳密に評価すべきであるということです。そして免許証の取り消しは、認知症の有無ではなく、運転技能評価をもとに、国土交通省や警察庁が判断すべきです。
というのも、認知症の原因疾患も多数あるので、医学的にみれば必ずしも「認知症」=運転制限とはならないからです。物忘れがあっても安全な運転技能を持つ人がいる一方で、認知機能に問題なくても安全な運転が困難な人もいます。この解決はわれわれが担うべき責務であり、今後の医学研究と事故の分析などに基づいて検討し解明されるべきだと考えます。


年齢層別自動車乗車中の交通事故死者数
65歳以上600人
60~64歳113人
50~59歳162人
40~49歳146人
30~39歳112人
25~29歳66人
16~24歳150人
15歳以下21人
(内閣府2015年度版「交通安全白書」2014年中の状態別・年齢層別交通事故死者数から作成)



交通環境をどう保障するか 立命館大学経営学部教授 近藤宏一さん
住民の足確保 柔軟に

都市部では公共交通機関がある程度ありますが、高齢者にとって「乗り換えが多い」ときや「大きな荷物を運ばなければならない」ときなどは大変です。東京都立川市の病院で自動車事故を起こした女性は夫が入院したために車を運転するようになったといいます。高齢者の生活を支えるバリアフリー化や、移動のサポートが求められます。
過疎地域では鉄道やバス路線が廃止され、あっても本数が少なく、非常に不便です。タクシー会社すらない地域もあります。自治体が中心となりバスや乗り合いタクシー、デマンド交通(予約があった時のみ運行する公共交通)などで住民の足を守る取り組みを進める必要があります。
国もようやくそうした取り組みを支援するようになってきましたが、まだまだ充実が必要であり、国が責任をもって柔軟に補助していくことが求められます。例えば今後は、公営タクシーのようなものが必要になるかもしれません。
事故防止のために、高齢者に対して運転免許の自主返上するように勧めていますが、車がなくても生活できるようにする代替措置が必要です。宮崎県西米良村では免許を返上した高齢者に14万4000円分のタクシーチケットを渡しています。しかし、これも1年限りです。ただ車の維持費は毎年結構な金額になるので、マイカーをやめればいくらお金が浮くのか、といったことも考えてほしいと思っています。
また、安全技術も進んできていますが、障害物検知などの安全装置を搭載した車は高価になりがちです。普及のためには低公害車の「エコカー減税」のように、60歳以上の人に対して「安全車減税」をすることや、安全車にした場合の自動車保険料を値下げなどすることも考えられます。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年12月3日付掲載


高齢ドライバーが起こす交通事故がマスコミでよく取り上げられ、高齢ドライバー=危険ドライバーのように勘違いされそうです。
しかし、高齢者講習で身体機能の低下を自覚して、しっかり安全運転すれば大丈夫なんですヨ!
コメント
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