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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

再エネの力 長崎・五島市① 洋上風力 島の恵みを一大産業に

2025-06-05 19:37:12 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
再エネの力 長崎・五島市① 洋上風力 島の恵みを一大産業に

海にたくさんの風車を浮かべて、島の恵みである風の力で生み出した電気を一大産業にして発展してゆく壮大な未来像を描く自治体があります。長崎県の西方100キロメートルに浮かぶ63の島々からなる五島市です。浮体式洋上風力発電や太陽光発電を推進し、市内の電力需要の60%を再生可能エネルギーでまかなう再エネの先進地を訪ねました。
(細川豊史)




長崎市から高速船で1時間半弱、五島列島最大の福江島が近づくと、海に浮かぶ大きな風車群が遠目に見えてきます。東京電力福島第1原発事故が起き、従来の電力政策からの転換が迫られた2011年、五島市は環境省による日本初の浮体式洋上風力発電の試験地に選定されました。
試験後に現在も商用運転中の1基(出力2メガワット)に加え、26年1月には新たに五島フローティングウィンドファームによる8基(同各2・1メガワット)が完成し、商用運転を始めます。これによって市内の電力需要の80%をまなかえる発電能力となります。



福江商工会議所の清瀧誠司会頭=長崎県五島市


海上に浮かぶ浮体式洋上風力発電の風車=長崎県五島市

電気で経済循環
五島フローティングウィンドファームは、準大手ゼネコンの戸田建設など大企業が出資する合同会社。そのままでは、五島の再エネ資源が大企業に利益をもたらすだけになってしまいます。そこで五島市民は地域新電力の五島市民電力株式会社を立ち上げ、電力の販売による収益が地域経済を循環するしくみをつくりました。
「風力発電は設備の規模が大きく、大手にしかできない。地元は海を貸すだけで、利益をすべて持っていくのは東京や大阪の大企業では面白くない。島からお金が流れていくだけです。発電で生まれるお金を五島に残したいと思いました」
五島市民電力社長の橋本武敏さんはこう語ります。
五島市の再エネ推進の特徴は、地元経済界、中小企業、漁業者、行政の連携した力―島をあげてのとりくみです。それぞれの立場から再エネの大きな可能性に情熱を傾けて尽力してきました。中でも、経済人としてリーダーシップをとってきたのは、福江商工会議所の清瀧誠司会頭です。
「脱炭素は時代の流れとして間違いない。850の会員企業がどうこの変化を乗り切るか。商工会議所の責任者として、一日でも早く着手することで有利になるのではと考えました」
現在84歳の清瀧さんは、20代の頃に石炭から石油へのエネルギー転換で人々が翻弄されるのを目の当たりにしました。ガソリンスタンドの経営者として、今後の需要の減少、化石燃料から再エネへの新たなエネルギー転換に危機意識を持ち、ピンチをチャンスに変えようという思いを強くしてきました。
洋上風力発電設備の建設を担う戸田建設は当初、風車を乗せる浮体部分を長崎県の本土で建造予定でした。しかしそれでは「五島の経済にプラスにならない」と考えた清瀧さんらは同社に要請し、五島市に建造拠点を誘致することに成功しました。
コンクリートは地元企業から調達。同社と商工会議所が連携し、建造に必要な資機材なども市内で調達しました。風力発電の運転管理も市内企業を採用。
これらによって新たな雇用が生まれました。
清瀧さんらは関係者の間で議論を進めるうちに、五島で洋上風力発電をやるのなら、建造と維持管理だけで終わっては不十分だと考えるようになりました。「五島で発電した電気を五島で使って、資金を循環させよう」と、地域新電力の設立に動きました。
それが18年に設立された五島市民電力です。当時、清瀧さんは代表取締役会長を務めていました(現相談役)。市内53の企業・団体・個人が出資し、地域に密着した経営を行っています。
26年1月に完成予定の洋上風力8基の電気はすべて特定卸供給契約にもとづき五島市民電力が直接買い取り、販売します。
市民には九州電力よりも5%安くなる契約プランを販売。洋上風力と太陽光でつくられた「五島産の電気」によって、地域経済の循環が始まっています。

生活が国土守る
商工会議所として、再エネを推進する取り組みも進めています。21年から始めた「五島版RE100」の認定です。「RE100」は使用電力を100%再エネでまかなうことをめざす国際的な企業の連合体。環境への負荷が少ないエネルギーを使う企業を取引や投資の対象として評価する動きが世界的に広がっています。
「五島版RE100」では、五島市民電力の電気を使い、今後5年以内に再エネ100%を達成することを宣一言し、その根拠となる長期行動計画を作成することを認定条件としています。市役所や市内の小中学校などの公共施設はすでに認定済みです。市内を歩くと、認定の証しであるステッカーが入り口に張られた飲食店が見られます。
第1次認定企業の一つで、かまぼこなどの水産加工品を製造する市内の企業が、五島産の電気を100%使用していることが商品の買い付けをするバイヤーに評価され、取引につながる事例も生まれています。
今年3月、認定企業が最初の目標である50を超え、52に達しました。同月31日付の長崎新聞には、このことを知らせる全面広告が掲載されました。
五島の再エネの取り組みを視察しに訪れる全国の行政関係者などの数は増え続け、昨年は1300人にのぼりました。来島者の増加は、雇用の維持などの経済効果につながり始めていて、清瀧さんは手ごたえを感じています。
「五島に住んで生活すること自体が国土を守ることになる。五島は栄えていかなければならない。地方には地熱、風力など、資源があります。五島みたいなことは全国でできるはずです」
(つづく)(6回連載です。次回から経済面)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月4日付掲載


清瀧さんらは関係者の間で議論を進めるうちに、五島で洋上風力発電をやるのなら、建造と維持管理だけで終わっては不十分だと考えるようになりました。「五島で発電した電気を五島で使って、資金を循環させよう」と、地域新電力の設立に動きました。
それが18年に設立された五島市民電力です。当時、清瀧さんは代表取締役会長を務めていました(現相談役)。市内53の企業・団体・個人が出資し、地域に密着した経営を行っています。
26年1月に完成予定の洋上風力8基の電気はすべて特定卸供給契約にもとづき五島市民電力が直接買い取り、販売します。
市民には九州電力よりも5%安くなる契約プランを販売。洋上風力と太陽光でつくられた「五島産の電気」によって、地域経済の循環が始まっています。
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デブリ2回目採取0.2グラム 全量回収長い道のり 福島第一原発2号機

2025-05-29 14:00:27 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
デブリ2回目採取0.2グラム 全量回収長い道のり 福島第一原発2号機
東京電力は先月、福島第1原発2号機で、事故で溶け落ちた核燃料デブリの2回目の試験的取り出しを完了しました。採取したデブリは研究機関で分析し、本格的な取り出し工法の検討などに役立てるとしていますが、全量回収には困難な長い道のりが予想されます。



今回採取したデブリは複数個あり、最大のもので5ミリメートル程度、重さは約0・2グラムでした。昨年秋に初めて取り出したデブリは原子炉圧力容器直下の領域内の比較的外側の場所から採取しましたが、今回は、中心により近い場所から採取することができました。つり下ろした器具に装着したカメラの画像から、原子炉格納容器底部にテーブル状の堆積物があることも判明しました。
取り出し作業は、「テレスコ式」と呼ばれる、伸縮可能な釣りざお状の回収装置を使用。この装置を格納容器の開口部から挿入し、原子炉直下の格子状の足場が事故で損壊して開いた穴の所まで“さお”を伸ばして、その穴から、デブリをつかむ爪のような器具を底部までつり下ろして採取しました。事故現場は放射線量が高いため、装置は遠隔で操作します。
昨年の1回目の取り出しでは、着手直前の8月下旬に準備作業のミスが発覚。カメラの不具合による中断もあり、作業が完了したのは11月7日でした。その教訓を踏まえて対策した今回は、4月15~23日の9日間で実施できました。2回とも、60~70人ほどの同じ作業チームで実施しました。



資料容器内のデブリ。赤色のマス目は1ミリメートル角(東京電力提供)


核燃料デブリを器具でつかんだ様子=4月17日、福島第一原発2号機(東京電力提供)

戦略必要との指摘
事故対策の責任者を務める東電・福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は2回目の作業が完了した翌日の記者会見で、「前回の苦い経験を振り返ってしっかり反映して取り組んだ。作業の習熟度も上がり、スムーズに進んだ」と述べるとともに、周辺の映像が得られたことを「将来に向けても大きなポイントと思っている」と評価しました。
採取したデブリは、日本原子力研究開発機構(JAEA)に輸送されました。1年~1年半ほどかけて元素組成や結晶構造などを分析します。
デブリの試験的取り出しは当初、ロボットアームを使って2021年に実施する計画でした。しかし開発の遅れやケーブルの経年劣化などが見つかって延期を繰り返すなかで、テレスコ式の装置を使ったという経緯があります。東電は、3回目はロボットアームで今年度末までに着手したいとして準備中。その後、段階的に取り出し規模を拡大する計画です。
原子力規制委員会の山中伸介委員長は4月23日の記者会見で、2回のデブリ採取で多様性のある試料が得られたと評価する一方で、「やみくもに今取れる所から拾ってくるというのは意味がない」などとして、硬さやもろさなどの機械的な性質、分布などどのような情報が必要なのか、大規模取り出しに向けた戦略が必要だと指摘しました。



核燃料デブリが入った「運搬用ボックス」を取り出す様子=4月23日、福島第一原発2号機建屋内(東京電力提供)

総量推定880トン
炉心溶融を起こした1~3号機には、総量880トン規模のデブリがあると推定されています。政府と東電は2051年までに廃炉を完了させるとしています。
今回、廃炉推進カンパニーの小野代表は、工程について間われ「現時点で見直す必要はない」と述べました。しかし、事故発生から14年たった今、ようやく試験的取り出しが始まったばかり。本当にデブリの全量を取り出すことができるのか、実現性は不透明です

「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年5月26日付掲載


原子力規制委員会の山中伸介委員長は4月23日の記者会見で、2回のデブリ採取で多様性のある試料が得られたと評価する一方で、「やみくもに今取れる所から拾ってくるというのは意味がない」などとして、硬さやもろさなどの機械的な性質、分布などどのような情報が必要なのか、大規模取り出しに向けた戦略が必要だと指摘。
炉心溶融を起こした1~3号機には、総量880トン規模のデブリがあると推定されています。政府と東電は2051年までに廃炉を完了させるとしています。
今回、廃炉推進カンパニーの小野代表は、工程について間われ「現時点で見直す必要はない」と述べました。しかし、事故発生から14年たった今、ようやく試験的取り出しが始まったばかり。本当にデブリの全量を取り出すことができるのか、実現性は不透明。
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環境先進 ドイツの自治体(下) 各所に再生エネ設備

2024-05-14 07:12:24 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
環境先進 ドイツの自治体(下) 各所に再生エネ設備

ドイツで全原発が停止され1年が経過したのを機に、南西部の自治体フライブルクを訪ねました。1970年代に近郊の原発建設計画を住民運動の力で撤回させ、ドイツの反原発運動の先駆けとなりました。その後も環境に優しい街づくりを進めています。

自転車多く利用
人口23万人超のフライブルクは公共交通機関を中心とした都市設計、リサイクルなどの資源循環にいち早く取り組み、ドイツの「環境首都」に認定されています。2035年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロの実現を目指しています。
中世の街並みを残しながら、市街地の内外でさまざまな再生可能エネルギーの設備がみられます。新市庁舎は外壁が太陽光パネルの現代建築として注目され、風力・水力発電装置が各地で回っています。住宅にも太陽光パネルや断熱改修が施されていました。日本の稚内より高緯度ですが年間1800時間の日照時間に恵まれており、市が積極的に推進しています。
公共交通が発達し、市内の移動はおおむね路面電車やバスで完結することができます。また多くの人が自転車を利用していました。
フライブルク在住で環境分野の通訳・ライターの熊崎実佳さんに案内してもらいながら、電気自動車(EV)も環境にいいのではと尋ねると、こう答えてくれました。



フライブルクで学生とエコな暮らしを考えるシュバンダー理事


フライブルクを走る路面電車

環境教育に力を
「1人や2人の移動のために1トン以上の鉄の塊を動かさないといけない。アップデートされたと買い直したり、気候危機を新たなビジネスチャンスにしたりする動きは本当にいいものでしょうか」
環境教育に力を入れるNPO法人「イノベーション・アカデミー」のハンスヨルク・シュバンダー理事は、フライブルクでは「政治家に任せきりにせず、持続可能な社会のために住民たちが学び行動を重ねている」と指摘します。
アカデミーは国内外からの視察を市と連携して受け入れつつ、学生を対象にエコな暮らし方や環境政策について授業をしています。公共空間の緑化や自転車での移動をより快適にする道路整備など、学生のアイデアを積極的に社会実験しています。
シュバンダー氏は、子どもたちへの教育が未来の社会を左右するとして「フライブルクの取り組みはこれから。若い人の発想をいかしながら持続可能な社会を実現したい」と話しました。
(フライブルク〈独南西部バーデン・ビュルテンベルク州〉=吉本博美 写真も)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月1日付掲載


人口23万人超のフライブルクは公共交通機関を中心とした都市設計、リサイクルなどの資源循環にいち早く取り組み、ドイツの「環境首都」に認定。2035年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロの実現を目指す。
住宅にも太陽光パネルや断熱改修が施されていました。日本の稚内より高緯度ですが年間1800時間の日照時間に恵まれており、市が積極的に推進。
環境教育に力を入れるNPO法人「イノベーション・アカデミー」のハンスヨルク・シュバンダー氏は、子どもたちへの教育が未来の社会を左右するとして「フライブルクの取り組みはこれから。若い人の発想をいかしながら持続可能な社会を実現したい」と。
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環境先進 ドイツの自治体(上) 利益追求しない共同体

2024-05-13 07:27:47 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
環境先進 ドイツの自治体(上) 利益追求しない共同体

ドイツで全原発停止から1年が経過したのを機に、原子力ではなく再生エネルギーの活用など環境分野で先進的なとりくみを進めて注目されている南西部の二つの自治体、ザンクトペーターとフライブルクを訪ねました。



ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州のザンクトペーターは、住民の消費電力と熱エネルギーの多くを自村の再生可能エネルギーでまかなう「バイオエネルギー村」と認定されています。標高500~1200メートルの里山の村で、環境保護と地域経済を両立させた自治体として知られています。
ザンクトペーターでは太陽光などの自然エネルギーから消費量の3倍の電力が作られています。村のあちこちに大型の風力発電装置が見られ、多くの建物の屋根に太陽光パネルが設置されています。
村のエネルギー供給を支える柱の一つが、住民がつくる協同組合です。住民たちの協同組合は、木質ペレットを燃料にして熱と電力を効率的に生産・供給するコージェネレーション設備を運営しています。熱エネルギーは温水として各家庭に運ばれ、給湯や室内暖房に使われます。



エネルギー協同組合のポーナート代表

地域住民の手に
協同組合のマルクス・ポーナート代表(55)は「石油や天然ガスなどの化石燃料に頼らず、環境に優しいエネルギーで暮らしたいと願う住民有志が立ち上がって今に至ります」と話します。
協同組合は2009年夏に発足。エネルギーを遠くの電力大企業から買うのではなく、地域住民の手に取り戻すことを目標としてきました。協同組合という形式にしたのも、収益が出たら住民に還元でき、資金繰りで透明な運営ができるから。暮らしに不可欠なエネルギーを企業のようにもうけの手段にしてはいけないという思いがありました。
ザンクトペーターの主要産業は林業と農業。協同組合のエネルギー施設に隣接された倉庫には、燃料となる木材が地域の農家らから運びこまれています。ボーナートさんは「村の資源を使えばエネルギーをつくる費用も抑えられるし、提供する人の利益にもなっている」と話します。
エネルギー設備は協同組合および組合員の所有。協同組合からエネルギーを受けるための接続費用は1世帯あたり2500~5000ユーロ(42万7000~85万4000円)です。
協同組合は欧州連合や州政府からの助成金も受け、設備のローン返済と投資に充てています。自然エネルギーによる循環型社会を推進するには、公的支援の充実も不可欠だとポーナートさんは強調します。



ザンクトペーターの市民協同組合のエネルギー施設

村に新たな価値
ロシア産化石燃料輸入への依存が高まっていたドイツでは22年のロシアのウクライナ侵略を機に始まった対ロシア制裁によって、一般家庭の光熱費が高騰しました。
しかしザンクトペーターでは、組合に加入する世帯の光熱費を比較的低く抑えることができ、エネルギーを自給自足できていることへの満足度も高いといいます。協同組合が作られて以来、住民同士の連携も強くなり、村自体に新たな価値がついたとボーナートさんは語ります。
「環境に優しく、利益を追求しない共同体を自分たちの手でつくる。これも民主主義の実践だと思っています」
(ザンクトペーター〈独南西部バーデン・ビュルテンベルク州〉=吉本博美 写真も)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月30日付掲載


ザンクトペーターでは太陽光などの自然エネルギーから消費量の3倍の電力が作られています。村のあちこちに大型の風力発電装置が見られ、多くの建物の屋根に太陽光パネルが設置。
村のエネルギー供給を支える柱の一つが、住民がつくる協同組合。協同組合は2009年夏に発足。エネルギーを遠くの電力大企業から買うのではなく、地域住民の手に取り戻すことを目標。協同組合という形式にしたのも、収益が出たら住民に還元でき、資金繰りで透明な運営ができるから。
協同組合のマルクス・ポーナート代表は、「環境に優しく、利益を追求しない共同体を自分たちの手でつくる。これも民主主義の実践だと思っています」と。
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原発は強い地震来ない

2023-12-13 07:17:24 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
原発は強い地震来ない
『南海トラフ巨大地震でも原発は大丈夫と言う人々』
樋口英明 著
ひぐち・ひであき=1952年生まれ。元裁判官。『私が原発を止めた理由』

著者は元裁判官であり、2014年5月、福井地裁の裁判長として、関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を言い渡した。15年4月にも、関西電力高浜原発3・4号機の再稼働差し止めの仮処分決定を出している。原発の危険性に警鐘を鳴らしてきた人である。
本書のメッセージはタイトルに凝縮されている。少し言葉を補うと「南海トラフ巨大地震がきても原発は大丈夫と言う人たちがいるけれど、それって一般の市民感覚からするとおかしくないですか?」ということだ。



旬報社・1430円

一般に、原発差し止め裁判の争点は「強い地震がきても原発は耐えられるか否か」だと思われているだろう。しかし著者は、そうではないと言う。これはよくある誤解で、実際には電力会社も強い地震に耐えられないことは認めているが、「原発の敷地に限っては強い地震はきませんから安心してください」と主張しているのだ。
現在の科学的知見で「この場所には一定水準以上の強い地震が絶対にこない」と断言できるのか、おそらく多くの人が疑問に思うはずだ。司法には細かな知識ではなく、こうした一般の市民感覚に沿ったリアリティーのある判断が求められるのだと著者は言う。そうすれば「原発を止めるべきだ」という結論にごく自然に到達するであろう。
著者は元裁判官として、東電福島第1原発事故被害者の集団訴訟で最高裁が22年6月に国の責任を否定したことを、「不公平で無責任」だと厳しく諫めている。また、岸田政権による原発回帰と安保政策の転換に対しても、強く批判する。
時宜にかなった警告の著である。現状を憂う多くの人に読んでほしい。

除本理史・大阪公立大学教授

「しんぶん赤旗」日曜版 2023年12月10日付掲載


本書のメッセージはタイトルに凝縮されている。少し言葉を補うと「南海トラフ巨大地震がきても原発は大丈夫と言う人たちがいるけれど、それって一般の市民感覚からするとおかしくないですか?」ということ。
実際には電力会社も強い地震に耐えられないことは認めているが、「原発の敷地に限っては強い地震はきませんから安心してください」と主張。
これって、科学的じゃないですね。
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