仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

サブカル的に論じる:オオカミと私

2008-06-29 14:21:14 | 議論の豹韜
iTunesのダウンロードランキングで1位を走っている『I LOVE TM NETWORK』。何を隠そう、ぼくはほぼデビュー当時からのTMファンである。『CAROL』以前のアルバムは、すべてLP盤で持っている。上のトリビュートアルバムは、最近流行のcapsule的アレンジ(perfume的、といった方が通りがいいか)だが、小室哲哉の楽曲のよさを再認識させてくれた。とくに、「self control」はよい。全アルバムをCDで揃え直そうか、という気になった。supercarの解散以来、実験的なテクノ・ユニットでお気に入りが少なくなっているので、この系統にはがんばってもらいたい。

ところで、最近書店で手に取った小説が案外に面白い。姜戎著『神なるオオカミ』である。文革時代、モンゴル高原に下放された著者の体験に基づいた、モンゴルオオカミとオオカミ・トーテムをめぐるセミ・ノンフィクションである。ちょうど、浅野忠信の『モンゴル』で神々しいモンゴルオオカミをみたばかりだったので、みごとにはまった。野生と人間との関係を考えるうえでも貴重な証言が含まれる。
ぼくらの世代には少なからずあることだろうが、ぼくも小学生時代からオオカミという存在に魅せられてきたひとりである。出発点は、『高安犬物語』で直木賞を取った戸川幸夫の長編、『牙王物語』だった(確か、日生ファミリースペシャルでアニメ化もされていた)。オオカミと秋田犬との間に生まれたキバが、アイヌの狩猟犬として成長し、人食い熊と戦うまでを描いた物語である。その元ネタが、ジャック・ロンドンの『白い牙』であると知り、これも小学生時代に読んだ。野生なるもの/人間なるものの葛藤を描いた難しい作品だったが、84年頃に安彦良和のキャラクターで作られたアニメ版は、原作のテーマを活かしつつ少年とオオカミとの友情を主体とした感動作になっており、一時期非常にはまったものだった(小室等の主題歌も素晴らしかった。複製の原画も持っているが、いまみると、どうも絵コンテかレイアウトを拡大したものっぽいな)。学生時代に出会ったジム・ブランデンバーグの『ブラザー・ウルフ』にも感動した。自分を環境史研究にまで引っ張ってきたさまざまな出逢いを回顧しつつ、通勤・帰宅の電車のなかで読み進めている。
しかしこの著者の名前、どうみてもペンネームだよなあ。獣とともに生きる遊牧民であることを標榜するネーミングだ。プロフィールをみると、「北京の某大学の準教授」とある。立場を公にできないのかな。

ここまで書いて、そうか、現在の環境研究の高まりを、アニメや小説を使ってサブカル的に論じることもできるな、と気づいた。ちょうどいま、某誌から「サブカルチャーと歴史学」という連載のオファーを受けており、第1回目の原稿を入稿したところなのだ。守り人シリーズや『電脳コイル』は扱うとしても、その後の展開が決まっていない。動物篇、植物篇に分けて、「環境史の成り立ちとサブカルチャー」をまとめてみるのも面白いかも。
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2 Comments

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いいですよねえ (いわい)
2008-06-30 13:45:45
TM NETWORK、やっぱりいいですよね!
僕がTMNを知ったのは「GetWild」がきっかけですね。やはり初期の楽曲のほうが好きかなあ。「Take it to the Lucky」「1974」「Be Together」「Human Sistem」とか。もちろん「Self Control」もです。
ちなみに僕が生まれたのが1987.3.7なんですが、「Self Control」がその1ヵ月前、「GetWild」がその1ヵ月後のリリースだったんですよね。

80年代にはTM NETWORK、バービーボーイズ、BOOWYの3つははずせません!
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いいねえ (ほうじょう)
2008-07-01 02:44:12
TMとTMNは違うのですよ。
なんてことはどうでもいいですが、年齢を感じさせるコメントですねえ。ぼくのなかではBestはなかなか決められないですが、最初に思い浮かんでくるのは「YOUR SONG(12inch ver.)」「TWINKLE NIGHT」「DRAGON THE FESTIVAL(12inch ver.)」「I WANT TV」「THIS NIGHT」「FOOL ON THE PLANET」「HUMAN SYSTEM」あたりでしょうかね。
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