【京都文化博物館で10日まで開催】
京都を中心に活躍中の書家で構成する「辛酉会(しんゆうかい)」(佐藤煒水さん主宰)の第35回辛酉会書展が8日、京都文化博物館(京都市中京区)で始まった。1980年に会員7人で発足、第1回書展を開いた翌年81年の干支が「辛酉(かのととり)」に当たることから「辛酉会」と命名した。古代中国では辛酉の年には大きな社会変革「辛酉革命」が起き、新しい社会秩序が生まれる年といわれてきた。
そんな干支にちなんで誕生した辛酉会は既存の書道団体や社中の枠を越えて、各新聞社展所属の作家や在野の書道団体の主宰者・会員などで幅広く横断的に構成しているのが特徴。年1回の書展は公募展や社中展ではなかなか見られない革新的・実験的な作品発表の場としても注目を集めている。
本館5階の広い展示会場には会員25人の作品が3~5点ずつほど並ぶ。来場者の足を止めていたのが小筆凰外さんの作品群。「風神雷神」は縦104cm×横135cmの作品(上の写真は実物の10分の1の大きさ)で、その力感あふれた書は俵屋宗達をはじめ多くの絵師が描いた躍動的な風神雷神図を連想させる。「花」と題した作品は世界的なヒット曲、喜納昌吉の「花」の歌詞「泣きなさい 笑いなさい……」を、2mを超える横長の紙面を生かし「花」の文字に乗せて伸びやかに表現している。
宮澤華さんは書と水墨画がセットになった2つの作品「シェルブールの雨傘」と「霧たちのぼる」を出品。宮澤さんは過去に全国水墨画協会会長賞や雪舟絵手紙展雪舟大賞などを受賞している。上田悠雲さんの「刻」は部首りっとうの右側を長く伸ばして、その横に道元禅師の言葉「いたづらに過ごす月日の多けれど道を求むる時ぞ少なき」を添える。山根青坡さんの「轍 さみどりの風吹き出でて……」は360×180cmの大作で、力強く大きな「轍」の一文字が印象的。
会場向かいでは「生活の中の『書と表具』展」も同時に開催している。辛酉会を主宰する佐藤煒水さんと京表具の伝統工芸士、井上俊彦さん(井上光薫堂)のコラボ作品を展示中。住環境の洋風化に伴う床の間離れなどに対応して、狭い空間でも安らぎを与える書画を展示してもらおうと、小ぶりな床の間風の作品や掛け軸などを展示している。