く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「ラオス 山の村に図書館ができた」

2015年05月05日 | BOOK

【安井清子著、福音館書店発行】

 著者安井さんは東京都出身で「ラオス山の子ども文庫基金」代表を務める。ラオスでの子ども図書館づくりは今から30年前の1985年、NGOのスタッフとしてタイのラオス難民キャンプでモン族の子どもたちのための図書館活動に携わったのがきっかけ。モン族はラオスの山岳民族。安井さんは長老から贈られた「パヌン・リー」というモン族の名前を持つ。そのこと1つをとっても、安井さんがいかに現地の住民の中に溶け込み慕われてきたかを示す。

     

 2001年夏、ベトナムとの国境近くにあるゲオバトゥ村を再訪したとき、テレビ番組の撮影スタッフの1人、武内太郎さんと初めて出会った。だが、太郎さんは翌年10月、パキスタンでNHK特別番組の取材中、車が崖から転落し亡くなってしまう。享年28。ニュースで事故を知った安井さんはゲオバトゥ村取材時に撮った太郎さんの写真をアルバムにして仙台在住のご両親に送った。

 それが安井さんと太郎さんの母親桂子さんの交流の始まりだった。大学の図書館に勤めていた桂子さんは安井さんの活動内容を知ると「ゲオバトゥ村に図書館を建てられないか」と提案する。こうして「たろうの図書館」と名付けた子どものための図書館づくりが実現に向かって動き出した。

 2005年11月、安井さんは桂子さんを現地の建設予定地に案内する。桂子さんは地元住民の歓迎の席でこう挨拶した。「息子が初めての海外で来たのがこの村だったのですが、家に帰ってきた時『いい村だったよ。あんな村だったら、年とったら住んでもいいな』と言っていました……安井さんに会って話しているうちに、ここに図書館を建てたら、太郎がそこで生きていてくれるような気がしてきたのです」。

 そして村人総出による共同作業で建設が始まった。完成したのは2007年2月。オープニングにはもちろん桂子さんも出席した。安井さんはモン語とラオス語で、多くの出会いと協力があってできたこの図書館には2つの目的があると村人たちに話した。目的の1つは子どもたちに絵本やお話を通して新しい世界を広げてほしいということ、もう1つはモン族の文化や大切なものを次世代に伝えるために役立ててほしということ。

 2012年、電気のなかったゲオバトゥ村にようやく電気がつながった。「たろうの図書館」はすっかり村の風景に溶け込み、学校の昼休みや放課後には子どもたちでにぎわっているという。昨年春には図書館の隣に村のコミュニティーセンターも完成した。本書には図書館の建設風景や村人の日常の様子を撮った写真も満載。土壁に使うワラを運ぶ子どもたち、石運びを手伝ってくれた小学生、絵本が入った箱を運ぶ男の子……。そのキラキラと輝く子どもたちの笑顔が印象的だ。

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