く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<紐・縄・綱> 目に見えない神仏との〝縁〟も結ぶ

2012年06月15日 | 祭り

【奈良県立民俗博物館で開催中の「結びの民俗~ひも・なわ・つな」展】

 2010年から毎春開いている「モノまんだら」シリーズの第3弾。「クジ・袋」「太鼓とカネ」に続いて、今年は身近にありながら日ごろ特別意識もしない「紐・縄・綱」に焦点を当てた。企画展会場の入り口にデ~ンと鎮座するのは奈良県橿原市四条町の「綱組み」行事の主役「オツナサン」。毎年成人式の前日、南の春日神社でオスのオツナサン(写真手前)、北の春日神社でメスのオツナサン(写真奥)を歌に合わせて組み上げ、それぞれ五穀豊穣を願って本殿に奉納されるという。それにしてもすごい存在感だ。

  

 会場に入ると、結納飾りや牛の飾り綱、お百度紐、草履、腰紐、林業で使う木登り用のカルコ、木を加工するフタワリ、運搬用具のオイコ(背負い梯子)、農業用の長縄付き水汲み桶(2人で4本の縄を巧みに操って低地の水を田に跳ね上げる農具)などが展示されていた。常設会場の農林業にまつわる用具類にも実に多くの縄が使われており、紐・縄・綱が暮らしに不可欠だったことを改めて実感。同時に目に見えない信仰の場でも重要な役割を果たしていることを思い起こさせてくれた。

 注連縄や勧請縄は結界にかけられ、外からの不浄なものの侵入を防ぐ。その一例としてパネル写真で明日香村稲渕や平群町椣愿(しではら)の勧請縄、枚岡神社(東大阪市)の大注連縄などを紹介していた。長谷寺の結縁の五色線も展示されていたが、これはご本尊の大観音像が特別公開される時に、手首に着けて拝観すると仏様との縁を結ぶことができるという。

     

 上の写真は桜井市の「江包(えっつみ)・大西のお綱祭り」。江包地区からは男綱、大西地区からは女綱が担ぎ出され、素盞鳴神社で「入舟の儀式」(合体)を行う。男綱と女綱と言えば、2本を結んで引き合う古式の綱引き行事は今も各地に残っている。例えば、沖縄各地で行われる豊年祭や秋田県大仙市の「刈和野の大綱引き」など。綱引きの多くは豊作や豊漁を占う年占神事として長い伝統を持つ。

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<ハナショウブ(花菖蒲)>日本が誇る園芸植物 改良重ね5000種超とも

2012年06月14日 | 花の四季

【大別すると江戸系、肥後系、伊勢系の3系統】

  梅雨時を優雅に彩ってくれるハナショウブ。アヤメ科で、葉が長い剣の形をした端午の節句のショウブ(サトイモ科)に似て、華やかな花をつけるためハナショウブの名前がついた。原種は花弁がやや細く濃い紫色のノハナショウブ。これをもとに多くの園芸品種が生み出されてきた。花の色は紫、紅紫、青、白、ピンクなど、花の咲き方も平咲き、垂れ咲き、台咲きなど様々。これに「覆輪」と呼ばれる縁取りが入ったり脈が走ったり、刷毛ではいたようなまだら状の「絞り」が付いたりして花型・模様は実に多彩だ。                                 

 

 

(左上から時計回りに「和田津海」「白鴎」「緑葉黄金」「乙女の鏡」)

 大別すると、栽培された地域ごとに江戸系、肥後系、伊勢系の3つがある。江戸系は群生美を楽しむハナショウブ園向き、肥後系と伊勢系は主に室内観賞用の鉢植えとして改良されてきた。江戸系から派生した肥後系は大輪の花が特徴。伊勢系は花弁に繊細な模様が入り「イセショウブ」として三重県の天然記念物に指定されている。ハナショウブは三重県の「県の花」にもなっている。

 生け花の素材として室町時代の花道書「仙伝抄」にも登場するが、本格的に品種改良が進むのは江戸時代後半になってから。旗本、松平定朝(通称「菖翁」)は生涯に「宇宙」「和田津海」など300品種近くを生み出し、ハナショウブ中興の祖ともいわれる。肥後系は肥後熊本藩主が菖翁から栽培方法を記した「花菖培養録」と一緒に、門外不出を条件に自作の名花を譲り受けたのが始まり。「肥後花菖蒲」は椿、芍薬、菊、山茶花、朝顔とともに「肥後六花」と呼ばれる。古典園芸植物の多くに相撲番付のようなものが作られていたが、かつて「花菖蒲番付」も発行されていた。ただ戦中に多くの貴重な品種が失われたという。

 三重県のほか、ハナショウブを市の花に指定しているところも多い。大阪府堺市、滋賀県彦根市、京都府城陽市……。これらの各市がハナショウブ園を設けているが、そのほかにも名園が各地にでき市民の憩いの場になっている。同じ仲間にジャーマンアイリス(ドイツアヤメ)があるが、これは地中海沿岸地方原産のアイリスをもとに交配して作り出された。ハナショウブは湿地や水辺に生えるが、ジャーマンアイリスは乾燥した場所を好む。「はなびらの垂れて静かや花菖蒲」(高浜虚子)

 

 

(左上から時計回りに「座摩の美」「天女の冠」「花の雨」「揺籃」)=いずれも大和民俗公園で                              

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<BOOK> 「勝言 人生の励みになるアスリートたちの言葉」

2012年06月13日 | BOOK

【アスリート勝言研究会著、笠倉出版社発行】

 日の丸を背にした「勝言」というユニークなタイトルが目を引く。アスリートとして頂点を極めた勝者たちが残した言葉ということで「証言」をもじったものだろう。現役・OBも含め内外の一流アスリート100人を取り上げているが、果たしてどんな言葉を残してくれているのだろうか。

          

 最初に登場するのが女子サッカー沢穂希で、表紙の上部にもある「苦しい時は私の背中を見なさい」。4年前の北京五輪で劣勢に追い込まれた中、後輩宮間あやにこう伝えたという。日本の女子サッカー界をリードしてきたという自負が感じられる沢らしい言葉だ。男子サッカーの井原正巳は「体がついていかないのではなく、心がついていかなくなった時が自分の潮時」。日本を代表するディフェンダーで日本代表出場試合数は歴代1位。2002年に現役から退いた。

 W杯アジア最終予選でハットトリックを挙げるなど存在感を発揮している本田圭佑は「日本人初とか興味ない。僕が目指しているところは遥か上なんで」。長友佑都は「たとえ目指すべきことが達成できなかったとしても、成長に限界はないし、努力はね、裏切らないから」。元日本代表監督のジーコは、ある優勝を決める大一番でミスから相手に得点を奪われ肩を落とす選手に、試合後「気にすることはない。私はワールドカップでPKをはずしたことがある」と話したそうだ。その言葉に選手も救われたに違いない。同じく元日本代表監督のフィリップ・トルシエは「うまい選手を選ぶだけなら私でなくてもできる」。

 メジャーリーガーの松井秀喜は「調子が悪くなったときも、絶対に前の感覚を思い出そうとするのは嫌なんです。そう思った時点でそれは後戻りですから」。いつも前向きな松井らしい。国民栄誉賞を受賞した元柔道家山下泰裕も「現役の途中でもし一度でも(柔道人生を)振り返っていたら、登る力が弱まったかもしれないね」と同じような言葉を残している。ハンマー投げの室伏広治は「メダルの色は何色でも重要なのはそこに向かって努力していくこと」、王貞治も「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのなら、それはまだ努力とは呼べない」。

 女子バレーボールの栗原恵は「MVPはプレーだけに与えられるものではなく、〝人間的にも豊かな人になれ〟というメッセージも込められていると思う」。ロンドン五輪の代表選出は微妙だが、ぜひ活躍する姿を見たいものだ。プロゴルファー宮里藍は「人間って楽なほうに行こうとするんですが、〝ここで負けても次があるや〟って思ったら、もうそれで終わり」。プロバスケットのアレン・アイバーソンは「体のサイズは関係ない。ハートのサイズが大切なんだ」。メキシコ五輪銀メダルの君原健二は「紙一重の薄さも重ねれば本の厚さになる」。歩数の積み重ねのマラソンの元ランナーらしい言葉だ。本書で取り上げられたアスリート100人が100人それぞれに、さすが含蓄のある言葉を残していた。

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<フェイジョア> 南米原産の常緑熱帯果樹 別名「パイナップルグァバ」

2012年06月12日 | 花の四季

【食用花の白とピンクの花弁に、鮮紅色のオシベ】

 近くの高齢者福祉施設の生垣でフェイジョアの花が咲き始めた。フトモモ科の常緑果樹で、原産地は南米のブラジルやパラグアイなど。熱帯育ちだけあって、花にも華やかさがある。花弁の直径は4~5cm。長くて色鮮やかな数十本のオシベが目を引く。真ん中から1本のメシベがオシベの先端より少し頭を出している。

 エディブルフラワー(食用花)で花びらは食べることができる。内側はピンク色、外側は真っ白。少し肉厚で口にするとほのかに甘い味がした。秋になると、長さ5cmほどの楕円形や球形の果実ができる。実はゼリー状で生食のほかジャムやジュース、果実酒などに利用される。花や実の形は同じ仲間のグァバにそっくり。しかもパイナップルに似た味がするということで「パイナップルグァバ」の英名を持つ。だが、この福祉施設の方のお話によると、味はどちらかといえばナシに近いそうだ。ビタミンCを多く含み風邪の予防や疲労回復にいいという。

 フェイジョアの名前はスペインの植物学者フェイホアにちなむ。早生のユニーク、中生・中玉のマリオン、香りがいい晩生のドライアンフ、実が大きいマンモス、やや大きめのアポロなど、さまざまな品種がある。南米原産だが、最大の生産量を誇るのはニュージーランド。果肉がヨーグルトに加工されたり、フェイジョアティーとして愛飲されたりしているという。

 日本には昭和初期に入ってきた。寒さにも比較的強く育てやすいが、当初輸入されたのが自家受粉しにくい品種だったため、なかなか普及しなかったらしい。だが、品種改良でアポロやユニークなど自家結実性のある品種も増え、花も果実も楽しめることもあって、最近、庭木や生垣などとしてよく植樹されるようになってきた。

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<五輪女子400mリレー> 土井杏南、代表候補に決定!

2012年06月11日 | スポーツ

【日本女子、東京五輪以来の出場有力に】

 日本陸連は11日午後、ロンドン五輪の代表選手39人(男子25人、女子14人)を発表した。同時に「日本が参加資格を獲得した場合」の条件付きでリレー種目の代表候補男女7人も発表。東京五輪以来の出場が有力な女子400mリレーの代表候補には、9日の日本選手権100m決勝で第一人者福島千里(北海道ハイテクAC)と最後まで競った16歳、土井杏南(埼玉栄高2年)も選ばれた。土井は1985年8月24日生まれで五輪開催時点で16歳11カ月。五輪出場が正式決定すれば戦後最年少という歴史的快挙となる。

 福島は100mと200mで代表に決定。女子400mリレーの代表候補には土井のほか高橋萌木子(富士通)、佐野夢加(都留文科大職員)、市川華菜(中京大)も選出された。高橋、佐野は日本選手権100mで福島、土井に次いで3位、4位。市川は100mでは決勝に進出できなかったものの、200m決勝では福島に次いで2位だった。市川は今年の女子100mのベストタイムでも福島の11秒34、土井の11秒43に次ぐ11秒45で3位につけており、その点も評価されたとみられる。「個人種目にエントリーしている選手はリレーのリストに含まれなくてはならない」(選考要項)と決まっており、福島と代表候補4人の計5人で400mリレーを戦うことになる。

【11秒60→11秒53→11秒50→11秒43】

 今年に入ってからの土井の快進撃を改めて振り返ってみると――。昨年までのベストは11秒60だったが、4月29日の織田記念予選で11秒53を出し、高校先輩の高橋が持っていた高校記録を破ると、決勝で11秒50まで伸ばした。さらに5月13日の高校総体埼玉県予選の100m予選で11秒43、決勝でも11秒45を記録した。そして今大会の予選で11秒47、決勝で11秒51。わずか2カ月の間に高校記録を次々と塗り替え、確実にステップアップしてきた。まだまだ伸びしろは大きそうだ。

 ロンドン五輪女子400mリレーには7月2日までの2レース(3カ国以上参加)の平均タイムで上位16カ国が出場する。日本チームは昨年5月にゴールデングランプリ川崎で出した日本新記録の43秒39とアジアグランプリの43秒65が持ちタイムで、世界ランキングは5月末現在で11位。この2つのリレーメンバーはいずれも第1走から北風沙織(北海道ハイテクAC)―高橋―福島―市川だった。

【スタートダッシュ買われ五輪でも第1走?】

 リレーは「種目の特性上、適材適所がある」(高野進強化委員長)。単に直線スピードだけでなく、コーナーワークやバトンパスなど4人の連係がカギを握る。土井は今年5月3日の静岡国際で初めて400mリレーの代表に起用され、第1走者として出場した。雨と低温の中で日本チームの記録は43秒79と昨年の2レースを上回れなかった。さらに同6日のゴールデングランプリ川崎では第1走者を北風に戻し昨年の日本記録メンバーで臨んだが、この日も強風にたたられて44秒29と低調な記録に終わった。

 ただ、土井は静岡国際での走りでリレーでも存分に走力を発揮してくれることを示してくれた。日本女子がこのまま世界ランク11位をキープできれば五輪出場は有力だが、日本陸連では他国の状況によってはランクアップのため期限内に改めてベストメンバーを組んで走る可能性も否定していない。日本女子の出場が正式に決まると、土井は日本選手権や静岡国際での走り、自ら「スタートは得意」というスタートダッシュを買われて、第1走として起用される可能性が極めて高い。16歳土井がロンドン五輪の大舞台を疾走――。ついに夢が現実となる!

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<平安時代の緑釉瓦> 大極殿や東寺など官造営の屋根の「縁取り」に使用

2012年06月10日 | 考古・歴史

【なのに、大極殿を模した平安神宮の社殿は屋根全体が緑釉瓦!】

 瓦はおもしろい。全く同じ文様を持つ古代の軒瓦が何百キロも離れた場所から出土したりする。これは「瓦当笵(がとうはん)」という瓦の型がわざわざ運ばれたことを示す。非常によく似た文様の〝兄弟瓦〟が見つかることも。その出土によって、同じ文様の図面を基に作られた型で瓦が生産されたことが推測できる。瓦技術は6世紀後半、飛鳥寺を建立する際に初めて百済から伝わった。出土する瓦の種類や文様、量などから、仏教文化の発展状況や建物を造った人の地位、勢力の大きさなども教えてくれる。まさに歴史の生き証人だ。

 その古代瓦の収集・研究で知られるのが奈良市の帝塚山大学。付属博物館と考古学研究所が共催して、古代瓦に関する市民大学講座を4月から連続開催している。9日に開かれた5回目の講座では、同大学の卒業生で現在、京都市文化財保護課で文化財技師を務める鈴木久史氏が「平安時代の緑釉瓦」をテーマに講演した。

 

 緑釉瓦は瓦に鉛を主成分とする釉薬を施し緑色に発色させたもの(写真は平安京豊楽殿跡から出土した重要文化財の緑釉軒瓦)。奈良時代から作られ、平城京・東院などの宮殿や大安寺、西大寺などの官寺の屋根を飾っていたが、大量生産されるのは平安時代に入ってから。平安京内では政治の中枢・大極殿、外国使節をもてなす豊楽殿、国家的儀式を行う神泉苑、国家鎮護を祈願する東寺と西寺の5カ所の建物に貴重な緑釉瓦が使われていた。出土したのは軒先を飾る軒丸瓦や軒平瓦が中心。このことは緑釉瓦が奈良時代と同様、屋根の縁取りを強調するような使われ方をしていたことを示す。ということは、大極殿を模して造られた平安神宮社殿の屋根が全面緑釉瓦で葺かれているのは間違いということになる。

 平安時代の緑釉瓦の生産は官による一元的な監理の下で行われ、生産地は洛北地域に限定されていた。一方、緑釉の陶器類も元々官営工房で生産されていたはずだが、次第に東海、東濃(今の岐阜県東部)、近江など各地に拡散していく。尾張国で緑釉陶器の生産が始まった背景について、鈴木氏は「嵯峨天皇の存在があり、その流通には嵯峨源氏が関わっていたと推定することができる。利権が大きく関与していたのではないか」と推測する。

 だが、その緑釉など施釉陶器の生産も平安後期、平清盛が日宋貿易を始めて輸入陶器が入ってくるようになると次第に衰退していく。緑釉瓦の生産も11世紀に入って様相に変化が出てくる。絶大な権力を誇った藤原道長は52歳で出家して法成寺(ほうじょうじ)を建立するが、その金堂に緑釉瓦が葺かれた。法成寺は官寺と異なり、いわば貴族の私寺。しかも、その緑釉瓦を生産・供給したのは洛北ではなく丹波だった。緑釉瓦や緑釉陶器の生産・流通の背景にはその時々の権力が働いていたというわけだ。

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<日本陸上選手権> 女子10000m 吉川「A」突破でV 〝戦術〟の勝利

2012年06月09日 | スポーツ

【福士をペースメーカーに残り1000mでスパート】

 5000mが本命のはずの吉川美香が思い描いた通りのレース展開で、ロンドン五輪参加A標準(31分45秒)を上回る31分28秒71で優勝、五輪切符を手に入れた。五輪出場がかかる大一番で、昨年11月に出した自身のベスト記録を一気に26秒余りも縮める会心のレースだった。

 吉川が最初に注目を集めたのは6年前2006年のこの日本選手権。1500mで初優勝すると、2010年まで5連覇を果たした。1500mではまさに向かうところ敵なし。昨年からは距離を伸ばし、2月の香川丸亀国際ハーフマラソンでは1時間11分13秒(4位)の自己ベストを記録。昨年の日本選手権では初めて5000mに挑戦し、15分53秒19で7位入賞した。10月の新潟県選抜中長距離では10000mでも五輪B標準(32分10秒)を上回る自己ベスト31分55秒06を記録。さらに12月には5000mでA標準(15分20秒)を突破する15分15秒33を出した。

【〝本命〟の5000mでも主役に躍り出る!】 

 今年4月の兵庫リレーカーニバルの10000mでは31分58秒73で新谷仁美に次いで2位。その時、「5000mが大本命だが、去年の秋から10000mも楽しくなっている。2つとも両立できたらと思っている」と話していたという。吉川の持ち味は1500mで鍛えたスピードの切れ味。この日のレースでもその持ち味をいかんなく発揮した。小雨が降り、風が舞う悪コンディションの中で福士加代子の背後にぴったりつけ、残り1000mとなったバックストレートで一気にスパート。その時点で勝利とA標準突破を確信したのか、かすかに笑みを浮かべていた吉川の表情が印象的だった。

 福士は2位に終わったものの、積極的にレースを引っ張って31分43秒25で再びA標準を上回った。絹川愛は2人に徐々に引き離され32分20秒34で3位。昨年6月に出した自己ベストを1分以上下回るやや不本意な結果となった。ただ前回の北京五輪では上位3人がすんなり代表に選ばれており、福士、絹川の代表入りもほぼ間違いないだろう(11日追記=絹川は残念ながら代表に選出されませんでした)。5000mではこの日戦った吉川、福士、絹川に加え5000m1本に絞ってきた新谷の計4人がすでにA標準を突破ずみ。10日の5000m決勝がますますおもしろくなってきた。

【女子100m 予選トップは高校2年の土井杏南】

 女子100mの決勝進出者と予選タイムは次の通り。①土井杏南=11秒47②福島千里=11秒51③石田智子③高橋萌木子③今井沙緒里=以上11秒71⑥和田麻希=11秒72⑦佐野夢加⑦渡辺真弓=以上11秒74

 16歳土井が追い風に恵まれた面もあるが、予選タイムでは第一人者の福島を0.04秒上回った。2人は他の決勝進出者のタイムを大きく上回っており、決勝でも2人の対決が注目を集めそうだ。土井は4月29日の織田記念予選で11秒53、決勝で11秒50、5月13日の高校総体埼玉県予選で11秒43と11秒45、そしてこの日は11秒47と確実に11秒50を切っており、決勝では自己ベストのさらなる更新、できればA標準突破への期待もかかる。

 残念なのは昨年、2年ぶりに女子400mリレーで日本記録を塗り替えたメンバーが決勝進出を果たせなかったこと。その時の第1走北風沙織、アンカーの市川華菜、それにリレー代表候補の1人でもある岡部奈緒がそろって予選で敗退してしまった。陸連関係者も予想外だったのではないだろうか。ロンドン五輪でリレー選手のエントリーは最大で6人。代表の発表は少し先になりそうだが、まずは9日の決勝で福島、土井に加え、高橋、石田、渡辺らがどんな走りを見せてくれるのか注目したい。

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<シロツメクサ(白詰草)> 江戸末期、梱包用の詰め物としてオランダからやって来た!

2012年06月08日 | 花の四季

【幸運の四つ葉のクローバー、では二つ葉は?】

 ヨーロッパ原産で、マメ科シャジクソウ属。日本には江戸末期に、乾燥させたものがオランダから長崎・出島に運ばれてきたギヤマン(ガラス容器)の詰め物(緩衝材)として初めてやって来た。このため「ツメクサ」の名前がある。明治に入って牧草として輸入され、野生化して全国に広まった。同じ仲間に赤紫の花をつけるアカツメクサ(ムラサキツメクサ、下の写真㊧)。背丈がシロツメクサより高いのが特徴で、やや遅れて米国からやはり牧草として輸入された。

 シロツメクサの英名は「ホワイトクローバー」。一般にクローバーとして親しまれ、ひと昔前まで女の子たちが腕輪や首飾りを編む光景をよく見かけた。葉はふつう3枚の小葉から成るが、まれに四つ葉がある。これを見つけたら幸福に恵まれ、さらに五つ葉は金銭面の幸運につながるという。ただ二つ葉の場合は不幸が訪れるというジンクスがある。こうした変形クローバーは人によく踏みつけられる場所で見つかることが多いそうだ。成長点が傷つく結果〝奇形〟が生まれやすいらしい。3年前には岩手県でなんと56枚もの小葉をつけたクローバーが見つかり話題を集めた。 

 アイルランドの国営航空エアリンガスは尾翼にクローバーのような三つ葉のマークをつけている。これは「シャムロック」と呼ばれ、クローバーなど葉が3枚から成る野草の総称。アイルランドの国花にもなっている。紀元5世紀に聖パトリックがアイルランドにキリスト教を広める際、三位一体の教義を説明するため身近に生えているクローバーなどを使ったことに由来するそうだ。

 

 シロツメクサはミツバチにとって大切な蜜源植物。とりわけ寒冷地にはなくてはならないもので、国内でも北海道の石狩平野がクローバー蜂蜜の代表的な産地になっている。シロツメクサは山菜でもある。若葉はおひたしや胡麻和え、白和え、油炒め、てんぷらなどに。花を焼酎につけるとクローバー酒になる。

 以前「四つ葉のクローバー」として球根を売っていたので、早速買って庭の隅に植えてみた。十数年前のことだが、その後、毎年この時期になると芽を出し四つ葉を広げる(上の写真㊨)。葉の形からはまさに四つ葉のクローバー。だが、これはカタバミ科の「オキザリス・デッペイ」というもの。メキシコ原産で英名は「ラッキークローバー」。また花の色が青いものが「ブルークローバー」の名前で流通しているが、これもクローバーとは違って、原産地は中国からヒマラヤにかけた地域。こちらの英名は「ブルー・オキザリス」。草花の名前もなかなかややこしい。

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<6日金星の太陽面通過> 太陽にビーナスの〝ほくろ〟

2012年06月07日 | メモ

【次の観測は105年後の2117年】

 

【5月21日金環日食 次回の2030年6月1日は北海道のみ】

  

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<日本陸上選手権> 女子5000m、10000m 五輪代表入りへ有力選手が激突!

2012年06月06日 | スポーツ

【10000mは標準A突破が5人、Bも2人】

 8日開幕する日本陸上選手権(大阪・長居陸上競技場)。ロンドン五輪代表最終選考会を兼ねるが、女子の5000mと10000mには五輪参加標準記録のA、Bを突破している選手7人がそれぞれ出場を予定している。五輪参加枠は1種目で最大3人。A選手が優勝すると代表に即決定、その他の代表は大会終了後の11日に発表される。ロンドン行きの切符獲得を目指し、激しい駆け引きが繰り広げられそうだ。

 10000mにエントリーした選手21人のうち、昨年1月以降のレースで参加標準を上回っている選手は次の通り。A標準(31分45秒)=福士加代子(30歳、ワコール)30分54秒29、絹川愛(22歳、ミズノ)31分10秒02、新谷仁美(24歳、ユニバーサル)31分28秒26、杉原加代(29歳、デンソー)31分34秒35、清水裕子(26歳、積水化学)31分43秒25。B標準(32分10秒)=吉本ひかり(22歳、ヤマダ電機)31分45秒82、吉川美香(27歳、パナソニック)31分55秒06

【福士加代子、五輪3大会連続出場を目指す】

 A突破が5人、B突破が2人。最右翼はやはり福士か。10000mのベストも参加選手中最速の30分51秒81(日本歴代2位)で他選手を引き離す。これは10年前に出した記録だが、昨年5月の米カージナル招待でそれにわずか3秒に迫る自身2番目の記録でA標準を突破した。マラソンでロンドンを目指したが、1月の大阪国際女子マラソンで後半失速、9位に終わった。それだけに今大会にかける思いは強く、アテネ、北京に続いて3大会連続で10000mでの出場を目指す。

【復活絹川愛の悲願実るか、新谷仁美も上り調子】

 絹川は体調不良で長くレースから離れていたが、1年前の日本選手権の5000mで自己ベストで優勝し復活。その直後のホクレンディスタンスチャレンジ網走大会の10000mでも自己ベストの31分10秒02(歴代4位)で優勝、A標準を突破した。4年前の北京五輪でも有力代表候補の1人だったが、体調不良で最終選考会の日本選手権欠場を余儀なくされた。絹川にとっては4年後に巡ってきたこのチャンスを何としてもつかみたいところだろう。

 新谷のA標準突破記録は自己ベストで、今年4月の兵庫リレーカーニバルで出したばかり。調子は上がっているとみられ、持ち味の上下動の少ないピッチ走法で五輪初出場を目指す。杉原は昨年5月の米カージナル招待、清水は同12月の日体大長距離競技会でそれぞれAを突破した。この2人もベスト記録だ。マラソン代表から漏れた中里麗美(23歳、ダイハツ)の走りも注目される。

【5000mも混戦。A突破が4人、Bが3人】

 女子5000m(エントリー22人)でも10000mのエントリー上位選手が参加標準Aを突破している。Aが4人、Bが3人。突破選手は次の通り。A標準(15分20秒)=絹川15分09秒96、新谷15分13秒12、吉川15分15秒33、福士15分18秒46。B標準(15分30秒)=木崎良子(26歳、ダイハツ)15分22秒87、西原加純(23歳、ヤマダ電機)15分23秒80、正井裕子(31歳、日本ケミコン)15分29秒69

 7人のうち福士のA突破記録は1カ月前の5月の「ゴールデンゲームズinのべおか」で出したばかり。自身が持つ日本記録14分53秒22(2005年)に約25秒遅いものの、今大会に調子を合わせてきた。それ以外の6人の記録はいずれも自己ベスト。昨年1月以降ではエントリー選手中最高タイムの絹川は、体調をレース当日までにベストの状態に持っていけるかがカギを握る。吉川は10000mでもBを突破しているが、Aの5000mのほうが本命か。

【西原加純や小林祐梨子にもチャンス】

 木崎は昨年11月の横浜国際女子マラソンで尾崎好美とのデッドヒートを制して優勝しマラソン代表に決定済み。5000mにはスピード練習の一環として出場か。西原はその木崎の京都・宮津高―仏教大の後輩に当たる。西原と正井はともに昨年11月の山口国体で自己ベストを出してB標準を突破した。このほかでは小林祐梨子(23歳、トヨタ自動織機)がまだ標準記録を突破していないものの、エントリー選手の中では福士に次ぐ15分05秒37のベスト記録を持っており、北京に続いて五輪2大会連続出場を目指す。

 女子10000m決勝は初日の8日午後8時5分、女子5000m決勝は最終日の10日午後5時5分にスタートの予定。重複してエントリーしている選手は、初日の結果やその日のコンディション、ライバルの調子などを総合的ににらみながら、両方に出場するか1つに絞るかなどを決めることになりそうだ。

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<ドクダミ(十薬)> 薬草の代表 半日陰に咲く十字架のような白花

2012年06月05日 | 花の四季

【庭の片隅の常備薬、山菜として食用にも】

 半日陰の路地などにひっそり咲くドクダミは、時にはっとさせられる美しさを放つ。花びらのように見えるのは葉の変化した総苞片。中心の黄色い花穂に無数の花を付ける。1個の花は雌しべ1本と雄しべ3本から成り、花びらもガクもないため〝裸花〟と呼ばれる。特有の臭いの正体はアルデヒドという精油成分。強い抗菌作用を持ち、ぶどう状球菌や白癬菌など細菌の活動を抑えてくれる。

 ドクダミ科ドクダミ属の一属一種の固有種。一属一種の植物にドクダミのほかイチョウ、シラネアオイ、コウヤマキなど。一重が一般的だが、八重咲きのヤエノドクダミ、斑入りのゴシキドクダミ(別名カメレオン)などもある。和名のドクダミは「毒矯(だ)め」または「毒痛み」が転訛したものといわれる。古くからゲンノショウコやセンブリと並ぶ薬用植物として、家庭の常備薬として庭の片隅に植えられることも多かった。

 葉は乾燥し煎じて飲むと、利尿や解熱、解毒、血圧降下、動脈硬化予防などの働きがあるという。腫れもの、にきび、水虫、傷口の止血などには生葉をすりつぶしたり火に炙ったりして貼る。蓄膿症には生葉を鼻に詰める。数え切れないほどの薬効があるため「十薬」や「重薬」の異名を持つ。古くから山菜として食用にもなった。若葉はてんぷらや胡麻和え、油炒めに、根はきんぴらや煮物に。

 口筆画家、星野富弘さんがドクダミの絵にこんな詩を添えている。「おまえを大切に摘んでゆく人がいた 臭いといわれ きらわれ者のおまえだったけれど 道の隅で歩く人の足許を見上げ ひっそりと生きていた いつかおまえを必要とする人が現れるのを待っていたかのように おまえの花 白い十字架に似ていた」。星野さんの描く花の詩画集には、生命への限りない優しさがあふれていますねぇ。

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<弥生時代の斑鳩> 壷や高圷、石器など多く出土 周溝墓や壷棺も

2012年06月04日 | 考古・歴史

【斑鳩文化財センターで春季企画展】

 奈良県斑鳩町の斑鳩文化財センターで開催中の企画展「弥生時代の斑鳩のようす―弥生びとのくらし」(26日まで)を3日見学。斑鳩といえば法隆寺をはじめとする飛鳥時代の古寺や藤ノ木古墳が有名だが、それ以前の弥生時代はどんな様子だったのだろうか。企画展では発掘調査で出土した多くの土器や石器を、遺構の写真パネルなどとともに展示し、弥生時代の斑鳩を紹介している。

    

 斑鳩ではこれまでに東里、西里、岡原、服部、上宮などの各遺跡から弥生時代の壷や甕(かめ)、高圷(たかつき)、石器の石鏃(せきぞく)、石錐などが見つかっている。そのうち岡原遺跡では弥生後期の竪穴住居跡5棟や掘っ立て柱の建物跡2棟が発掘され、竪穴住居跡の周りからは〝投弾〟とみられる石も出土した。投弾は紐を巻き付け振り回して投げる武器の一種。このため軍事的機能を持つ集落ではないかとみる専門家もいるそうだ。

 服部遺跡からは約2200年前の弥生前期後半の壷(写真右側)がほぼ完全な形で出土。壷の胴部下側には中から開けたとみられる穴があり、水に関わる祭祀に用いられたと推測されている。西里遺跡からは方形周溝墓4基が見つかった。溝の中に木棺や土器棺を並べて埋めたもので、家族単位の墓とみられる。大きさは一辺数mから20m超のものまであり、被葬者の権力の大きさを反映しているのではないかという。藤ノ木古墳の下からも弥生中期の壷棺や高圷、壷などが見つかっている。壷棺は2つとも小型のため子ども用とみられる。

 奈良県内の弥生時代の遺跡としては国史跡にも指定されている唐古・鍵遺跡(田原本町)の環濠集落が有名。斑鳩ではそのような大集落は見つかっておらず小規模なものばかりだが、それらの遺跡の集落がいずれも現在の集落に連綿とつながっているという。法隆寺の境内の地下にも多くの弥生時代の遺物や遺構が眠っているに違いない。

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<日本陸上選手権8日開幕> 女子100m 16歳土井杏南、五輪A標準まであと「0.14秒」

2012年06月03日 | スポーツ

【5月に11秒43、福島千里の今季ベストにわずか0.09秒の差】

 第96回日本陸上競技選手権が8~10日、大阪・長居陸上競技場で行われる。ロンドン五輪代表最終選考会を兼ねており、その結果を踏まえ大会直後の11日、五輪代表選手が発表される。五輪を目指す選手にとってはまさに大一番。100m女子の16歳、土井杏南(埼玉栄高2年)もその1人だ。走るたびに高校新記録を塗り替え、5月には日本歴代7位タイの11秒43を出した。気がつけば、五輪参加標準記録A(11秒29)まであと0.14秒。48年ぶりの出場を目指す女子400mリレーの代表候補としても急浮上している。16歳での五輪出場となると陸上では戦後の最年少出場だ。

 陸上の五輪参加枠は1カ国で1種目最大3人。出場のためには昨年5月からのレースで標準記録を上回る必要がある。現在100m女子では日本記録保持者の福島千里(北海道ハイテクAC)が持ちタイム11秒24(昨年6月記録)で標準Aを突破ずみ。そのほかにはBを突破している選手もいない。福島は今大会で優勝すれば、その時点で五輪出場が内定する。

【今年に入って急成長、先輩高橋の高校記録も塗り替える】

 今大会の女子100mで最も注目を集めるのが土井(1995年8月24日生まれ)だ。埼玉・朝霞一中2年のとき11秒89の中学新記録を樹立、3年生になった2010年8月には11秒61という驚異的なタイムをたたき出し、陸上関係者を驚かせた。埼玉栄高に進学した11年5月には11秒60と0.01秒タイムを伸ばすが、急成長を遂げるのは今年に入ってから。2月に大阪城ホールで開かれた日本ジュニア室内の女子60mで当時日本タイの7秒40を記録した。(この記録は3月の世界室内選手権で7秒29を出した福島に破られる)

 その後、3月に沖縄で行われた女子短距離日本代表合宿に初参加。これがいい刺激になったのか、4月29日の織田記念100m予選で11秒53、決勝で11秒50を出す。女子高校記録は埼玉栄高の先輩でもある高橋萌木子(富士通)が3年生だった06年に出した11秒54だったが、2年生になったばかりの土井がこれをあっさり塗り替えた。さらに、その2週間後の5月13日、高校総体埼玉県予選の100m予選で11秒43(決勝でも11秒45)を記録した。これはジュニア(20歳以下)の日本新記録、日本歴代7位タイという快挙だ。日本のエース福島の今季ベスト11秒34(4月の織田記念)にわずか0.09秒差まで迫ってきた。

【持ち味はスタートダッシュと足の回転スピード】

 土井は身長が158cm(福島は165cm)と、女子短距離陣の中ではやや小柄。そのハンディをスタートダッシュと、ぶれない体の軸、足の回転速度でカバーする。とりわけ足の回転スピードは天性のものだろう。埼玉栄高女子陸上競技部の清田浩伸監督は昨年12月から始めた骨盤トレーニングの成果が出てきたとみる。骨盤のダイナミックな動きで推進力を得るジャマイカのウサイン・ボルト(100m、200mの世界記録保持者)の走りを参考にしたという。

 急成長の要因としてもう一つ、土井の「心の良さ」を挙げる。「土井にはヒントを与えると素直に受け止め徹底的にやり抜く強い意志と、いつも明るく前向きに取り組む姿勢がある」。土井は今大会で「標準記録Aを突破したい」と目標を高く掲げている。すでに福島がAを突破しており、100mでの五輪出場のためには土井も今大会でAを超えることが最低条件となる。

【48年ぶり出場を目指す400mリレーの有力候補としても浮上】

 日本女子は400mリレーでも東京五輪以来48年ぶりの出場を目指している。土井が100mで好タイムを出すと一躍その有力候補としても躍り出る。ロンドン五輪の女子400mリレーの出場枠は16カ国。今年7月2日までの3カ国以上が参加したレースが対象で、ベストタイム2レースの平均でランクづけする。現在の日本女子のランキングは11位。前回北京は17位で惜しくも出場を逃しただけに、出場枠内を何とか確保したい。今後他の国の状況によっては日本選手権後ベストメンバーを組んでランキングアップへ再挑戦する可能性も出てきた。そのためリレーの五輪代表候補の発表だけはもう少し先になりそうだ。

 400mリレーでの五輪出場を目指す選手にとっては、今大会の100mで上位に食い込むことが絶対条件。福島、土井のほか高橋萌木子、市川華菜(中京大)、北風沙織(北海道ハイテクAC)、岡部奈緒(ミズノ)らがその大一番に臨む。果たして最年少土井の五輪出場はなるのか。注目の女子100mには24人がエントリーしており、8日午後7時半から予選、9日午後8時15分から決勝が行われる。

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<カモミール(カミツレ)> 「聖なる薬草」、ハーブティーとしても人気

2012年06月02日 | 花の四季

【童話のピーターラビットにも登場】

 キク科でヨーロッパ原産。ハーブの中ではラベンダーと並んで人気が高く、古くから民間療法にも用いられてきた。古代エジプトでは聖なる薬草として重んじられ、古代ギリシャでは負傷兵の傷を癒すための入浴剤として浴湯に入れていたという。解熱、鎮痛、消炎、発汗、消化促進、利尿などの作用があり、不眠症、神経痛、便秘、胃腸炎、腰痛、筋肉痛、歯痛、口内炎などに効き目があるといわれる。

  大別すると、白花で1年草のジャーマン種、花が少し大きく多年草のローマン種、黄花で草木染の染料になるダイヤーズ種(イエローカモミール)がある。カモミールといえば一般的にジャーマン種を指し、江戸幕府が19世紀初めにオランダから取り寄せた薬草の中に含まれていたという。和名のカミツレはオランダ語の「Kamille(カミルレ)」が訛ったものといわれる。

 花の中心にある黄色い花芯は成熟するにつれて盛り上がる。それを摘み取って乾燥させたものをハーブティーや生薬、入浴剤、安眠用の芳香剤などとして使う。カモミールティーは世界で広く愛飲されており、ピーターラビットの童話の中にもおなかの具合が悪いピーターに、お母さんウサギがカモミールで作ったティーを飲ませる場面が描かれている。

 精油はジャーマン種よりローマン種のほうに多く含まれる。水蒸気蒸留法で抽出して、シャンプーなどの化粧品やアロマテラピー、お菓子やデザート、アルコール飲料などの香料として使われる。カモミールはコンパニオンプランツの一つとして、害虫を寄せ付けず近くに生えている植物を健康にする働きもあるそうだ。

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<BOOK> 「美空ひばり ふたたび」

2012年06月01日 | BOOK

【新井恵美子著、北辰堂出版発行】

 5月29日夜、テレビをつけるとたまたまNHKの「歌謡コンサート」が始まったばかりだった。美空ひばりの誕生日ということで「ひばり特集」。女性演歌歌手たちがひばりの名曲を次々に披露したが、中でも田川寿美の「悲しき口笛」と伍代夏子の「みだれ髪」は心に染みた。演歌や歌謡番組はあまり見ないほうだが、ひばりの生前の映像や歌が流れるとつい目が行ってしまう。このコンサートを見なかったら、長い間埃をかぶっていたこの本のことも忘れていたかもしれない。

    

 著者は1939年生まれで平凡出版創立者岩堀喜之助の長女。娯楽雑誌「平凡」は戦後、ひばりの活躍とともに部数を伸ばした。ひばりが52歳の若さで亡くなってから随分たつが、多くの人の心の中になお不死鳥のように生き続けている。ファンの1人としてひばりの足跡を改めてたどった本書は、芸道にかける母子のすさまじいばかりの執念と、ひばりを取り巻く様々な人間模様などを浮き彫りにしている。

 昭和22年、ラジオののど自慢素人演芸会で「子供が大人の歌を歌ってはいけない」と諭され「ゲテモノ」とまで酷評された加藤和枝(ひばり)。だが、その2年後には初主演の映画「悲しき口笛」で一躍脚光を集める。生涯に出演した映画は165本。ひばりの相手役を務めたことがきっかけで大きく育った俳優も多い。中村錦之助、大川橋蔵、東千代之助、大友柳太朗、里見浩太郎……。生涯に発表したオリジナル楽曲は517曲に上るが、そのひばりが「私、恥ずかしながら楽譜が読めないから、新しい曲は音符の感じで覚える」と言っていたという。信じられないような話だ。

 ひばりの人生はまさに山あり谷ありだった。小さな歌姫へのバッシングから始まって、初巡業先四国でのバス事故、浅草国際劇場での少女ファンによる塩酸事件、小林旭との短い結婚生活、NHKとの確執と紅白歌合戦の落選、ひばりを支え続けた母喜美枝や弟たちの相次ぐ死……。ひばりが生まれた時、父増吉は魚屋だった。「ひばりの世話になんか絶対にならない」が口癖で、その後もすし屋、トンカツ屋、土建業などを手がけた。だが、どれもあまりうまくいかなかったらしい。ひばり25歳の時に亡くなるが、母喜美枝はある時、ひばりにこう言ったという。「お嬢のお父さんは偉い人だったよ。あの人はね。お嬢のお金には五厘だって手をつけやしなかったよ」。

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