【別名「一両」、洒落に「千両万両有り通し」】
アカネ科アリドオシ属の常緑小低木。高さは30~60cmで、山地のやや乾いた林の下に生える。国内では関東以西から沖縄にかけて自生し、海外では朝鮮半島南部や東南アジア、インドなどに分布する。枝に針のように尖った長さ1~2cmのトゲを持つ。和名はこのトゲが小さなアリさえ突き通すほど鋭いことから名付けられた。学名は「Damnacanthus indicus(ダムナカンサス・インディカス)」。属名はギリシャ語の「立派な、優れた」と「トゲ」の合成語、種小名は「インドの」を意味する。
5月頃、先端が4つに裂けた長さ1cmほどの漏斗状の白花を付ける。その後、秋から冬にかけて小さな球果(径約5mm)が赤く熟す。別名に「一両」。これは同じような赤い実を付けるセンリョウ(千両)やマンリョウ(万両)に比べると、実付きが悪くて印象が地味なことから。上には別名「百両」のカラタチバナ、「十両」のヤブコウジもある。ただアリドオシは実が長く枝に残るため、赤い実と白い花を同時に観賞できることもある。
縁起のよい植物とされ、関西などでは正月の床飾りに使われることもあった。洒落に「千両万両有り通し」。縁起を担いで庭にアリドオシをセンリョウ、マンリョウとともに植えると、年中お金に困らないというわけだ。都道府県のレッドリストでは山梨や埼玉、福井県などで絶滅危惧種に指定されている。変種に葉が大きいオオアリドオシ、樹高が低いヒメアリドオシ、日本固有種でトゲのないリュウキュウ(琉球)アリドオシなどがある。