スペインのデヴィド・リンチと称される監督アグスティー・ビジャロンガが、
エミリ・タシドール原作の「黒いパン」を自ら脚本を書いて映画化したもの
で、初めから言っておきますが暗くて複雑で謎に満ちた作品です。
昨年、スペインのアカデミー賞にあたるゴヤ賞で、作品賞゜のほか計9部
門を獲得してスペイン映画界の話題をさらった作品でもあります。
1940年代、スペイン内戦の傷跡が残る小さな村が舞台です。
村はずれのカタルーニャの森で、11歳の少年アンドレウは、馬車で崖から
落ちて血まみれになった瀕死の親子を見つけます。彼らが死ぬ間際に遺
した言葉は"ピトルリウア"という謎の言葉でした・・・。
少年と家族は、内戦によって心に深い傷を大人たちがひた隠す真実に否
応なしに巻き込まれ、少年は生きて行くために重大な決断を下すことに・・・。
ここでの謎・真実は大人たちが都合の悪いことを、子供たちに隠していて、
これを少年が解き明かして行く一種のミステリーとも言えるのですが、前に
も書いたように普通に言うところの娯楽的要素は皆無で、一般受けは難し
い作品です。
それでも複雑な人間関係、政治的対立、村の因習、それに憎悪が加わり
暗くて重い内容ですが、それを最初から最後まで上手く纏めているという、
別の意味での面白さを私は買います。
この作品についても賛否両論があるようですが、色々考えさせられる問題
作です。
(7/30 KBCシネマ 3日目 10:00の回 18人)