ジプリの新作映画の舞台は、東京オリンピックの開催を目前に、戦後の
復興から高度経済成長へと大きく時代が変わろうとしている時代です。
物語は明治時代に建てられた横浜の由緒ある高校の校舎を巡り、残す
か壊すかの紛糾が起こります。
そんな中で出会った16歳の海と17歳の俊はいつしか惹かれあうのです
が、自分たちが兄妹かも知れない事実に突き当たるのです。
戦争と戦後に出会ったそれぞれの親たちの青春に向き合い、若い二人
が見い出す未来とは・・・です。
原作は「なかよし」に連載された高橋千鶴・佐山哲郎の同名コミックで
すが、オリジナルと言ってもいいくらい原作から離れた物語に改変されて
います。
企画・脚本は宮崎駿で、監督は「ゲド戦記」の宮崎吾朗が5年ぶりのメガ
ホンです。
当時の学園風景やさまざまな船が行き交う港の描写、ゴタゴタした商店
街、舗装されていない坂道や住宅地、古きよき昭和の時代風景が懐かし
く描写されていて、ジプリの手書きによるアニメは相変わらず好感度が高
いです。
苦言を呈したい点もいろいろあります。
逆に懐古趣味に片寄リ過ぎる場面があること、肝心の物語があまり起伏
に乏しく面白くないことですが、一番気になるのは、従来のジプリ作品の
ような強い個性が見当たらないことで、アニメなのにこれだと実写でも充
分に撮れる内容です。
創造の世界が無限に広がって行くジプリ作品を期待していたのに、これ
では平凡過ぎます。