主人公は栗原一止という名の、
夏目漱石を敬愛する内科医。
信州の小さな病院で働いています。
この病院は慢性的な医師不足で、
専門以外の診療をすることも常態化、
そして激務ゆえいつも睡眠不足。
そんな日々を送る栗原に、
最先端の医療を学ぶことができる、
母校の大学から誘いの声が…
でも、大学病院などに見放された患者、
その人たちに向き合うことができる今の病院で、
診療を続けることを選ぶ。
第十回小学館文庫小説賞受賞作。
文庫化されました。
世界で一番可愛い奥さん、ハルさん、
黒い化け物と評される友人の医師、
男爵、学士殿といった
古びた木造家屋に住む個性豊かな住人達、
看護師、先輩医師など…
主人公の周囲の人達も優しくて、
愉快で素敵な面々。
末期を迎えた患者、
安曇さんがこの世からの去り際に、
選択した治療法の是非は、
安らぎを得た穏やかな、
安曇さんの横顔が物語ります。
主人公の住む小さな町は
夜になると、たくさんの星の光で、
埋め尽くされたような美しい町。
その美しさに劣らない、
この小説に登場する人たちの、
きれいな心。
漱石に影響を受けたという、
主人公の独特で
古めかしい文章も、
最初は違和感がありましたが
慣れてくると楽しいです。
読みやすい小説でした。
櫻井翔、宮崎葵で映画化です。