ゆきてかえりしひび――in the JUNeK-yard――

読書、英語、etc. jesterの気ままなおしゃべりです。(映画は「JUNeK-CINEMA」に引っ越しました。)

海の島 ステフィとネッリの物語 byアニカ・トール

2007-06-29 | 読書
jesterは幸か不幸か、幼稚園から大学まで途中転校の経験がありません。
(普通に卒業し受験して入学、というのはその都度していますが)

小学校の頃は、いつも同じメンバーのクラスメートとの遊びにも飽きがきて、新学期にはどきどきして転入生を待ち、晴れて転入生がきた折には、せっせと世話をしたものです。
(その頃からおせっかいだった・・・・)

しかし家族Bには、小学校から転々とさせてしまいました。
しかも国から国へと、友人も知り合いも一人もいない、環境も使う言葉も全く違う世界に、根こそぎ引き抜いては連れて行きました。

親である自分もつらいこともあったけれど、幼い彼女はどれほどつらかったでしょう。

けれど、子どもの順応性はすごいです。

どこの国の学校に行っても、彼女はなんとか溶け込みました。
文化も違い、言葉が全く通じず、手振り身振りしか意思を伝える手段がないところでも、いつの間にか馴染んでいました。

けっして活発なほうではなく、どちらかというと引っ込み思案で、声も小さく、おとなしい子どもだったのに、少しずつ少しずつ変化し、上手に場の雰囲気を読むようになり、自分から心を開ける人間になったようです。
今では、時には親に理を諭すほど生意気に育ちやがりました。

その姿を見ていると、こどもの持つ力ってすごいな~と思います。

取り巻く友人がとても心優しく優秀だったり、行く先々で素晴らしい先生に恵まれていた、というラッキーさもあったのかもしれませんね。
(感謝です



海の島―ステフィとネッリの物語海の島―ステフィとネッリの物語
さて、最近スウェーデンの児童文学を読み漁っておりますが、この物語は、第2次大戦の頃が舞台です。

その頃オーストラリアのウィーンに住む幼いユダヤ人の子どもたちが500人、弾圧をのがれてスウェーデンに『疎開』しました。
そのなかにいたステフィとネッリという姉と妹が主人公です。

ウィーンでは親と共に豊かに暮らしていた二人でしたが、スウェーデンの小さな島に住む漁師家族に別々に引き取られます。

7歳の妹のネッリは言葉を覚え、受け入れ家庭やスウェーデンにすぐ溶け込むけれど、12歳のステフィは受け入れ先の厳しい主婦メルタに、なかなか心を開けません。
ユダヤ人であるのに、キリスト教を強制されますし、学校でも友だちができません。
その上、意地悪なボスキャラ(?)のターゲットになってしまいます。

ステフィはどうなるのか、先が気になって、ページが止まりません。

戦局はどんどんオーストラリアとユダヤ人に厳しくなっていき、いつかは娘を引き取ってアメリカにのがれようとしていた親たちもゲットーにいれられ、次第に連絡も取れなくなります。

八方ふさがりの状態をステフィはどうやって切り抜けていくのか。
そして彼女を取り巻く人間は、彼女を受け入れることによってどう変わるのか。


著者のアニカ・トールさんは湿っぽさのないドライなタッチと深い人間観察で、少女たちの悩みと不安を抱えた生活を生き生きと描き出してくれています。

暗い時代の、悲惨な環境に置かれた子どもたちの話でありながら、読後感がすがすがしいのは著者の力量によると思われます。


スウェーデンでは数々の賞を受け、ステフィの物語は4作目まで出ているようです。
早く続きの本が読みたいな♪ 
翻訳がでないかしら~とおもっています。


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