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以下は,時事通信からです。記事で,裁判員に選ばれた方々の苦労や裁判所の工夫は理解できました。ただ,最終判断は,求刑に比べて軽かったという印象を持ちました。正当防衛等が争われた事案のようですので,過剰防衛の成否や殺害行為の態様などについて,論告や起訴事実とどの程度違うか知りたいところですし,報道もしてほしいと思いました(裁判員裁判では量刑がどうなるかという点も重要な論点ですので,軽々に判断しないために,判断の詳細が報道されるのが望ましいでしょう。)

「疲れた」「もっと時間を」=判決終えた模擬裁判員-3日間で集中審理・東京地裁

 裁判員制度実施に向け、東京地裁が企業の協力を得て、初めて裁判員選任手続きから実施した模擬裁判が1日、判決の言い渡しで終了した。「正直、疲れた」「評議にもう少し時間がほしかった」。6人の裁判員が3日間連続の集中審理と評議に臨んだ感想を話した。
 今回は殺人罪で起訴された女性被告を設定。飲酒で暴行癖のある愛人男性が被告宅を訪れ、別れ話をきっかけに男性から殴るけるの暴行を受け続けた被告が、台所の包丁で刺し殺したという内容だ。
 公判前整理手続きを経て、6人の裁判員を選任した先月30日から1日まで3日間で審理。正当防衛の成否が争点だったが、評議の結果は懲役4年(求刑懲役13年)だった。
 裁判員は男性4人、女性2人でいずれも会社員。模擬裁判を担当した合田悦三裁判長ら3裁判官と毎日の公判終了後、評議に臨んだ。1日午前中に結審。午前11時から最終評議をし、休憩を挟んで午後5時に判決を言い渡した。
 裁判員の一人で、キヤノンCE本部の室長加藤吉幸さん(59)は判決後「ものすごく疲れた。選ばれる前に裁判員のビデオを見たが、選任手続きが中心。調書とか最初は意味が分からず、もっと事前に裁判自体の説明があるといい」と語った。会社員女性は「もう少し評議の時間がほしかった。3日間で決めるのは難しい。ただ3日以上会社を空けられるかどうか。リラックスした雰囲気をつくってくれた裁判官には感謝したい」と述べた。合田裁判長は評議で一番苦労した点について「今、どういうことをやっているのか繰り返しお話しし、理解を得ていただくこと。正当防衛とか言葉の説明に配慮した」と話した。 



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コメント
 
 
 
一連の手続きから判決まで (コアラ)
2007-06-02 16:42:28
裁判員選出から審理、判決を行ったようですね。
今回の事案は正当防衛の成否が争点だったみたいですが、具体的な内容(証拠類)が分からないので、なんともいえませんが、求刑よりかなり減刑された判決だったようです。量刑判断で意見は分かれたのかも知れません。
体験談からも、審理時間について足りないという意見は貴重でしょうね。内容によってはこうした問題は多々出てくるでしょう。
今後は中小企業や自営業者などの協力を得て、模擬裁判を行うべきでしょう。
 
 
 
評議時間 (瑞祥)
2007-06-03 16:47:36
体験談から、評議時間についてどう確保するかは課題ですね。スピーディにやろうとすると,消化不良や不全感が残るでしょうし,難しいですね。ただ,こうした模擬裁判を何回もやって,裁判所側も問題点とその解決方策をストックしていくのが重要と思います。でも,こうした経験を,社会に持ち帰っていただくのは,司法の基盤を厚くし,法の支配をじんわりと広げていくことになるのではないでしょうか。
 
 
 
Unknown (コアラ)
2007-06-03 19:01:09
そうですね。机上の理論よりも「体験」が何事も重要ですし、かつ視野が広がるでしょう。大学時代、裁判員制度について議論したことがあります。そのとき、自分の考えは軽犯罪(窃盗など)から順次導入すべきではないか、と考えていました。また、刑事事件だけでなく、民事事件も視野に入れるべきではとの考えも(司法改革の趣旨とは脱線しますが)ありました。この考えは多少変化しつつも、将来的には民事への導入もあってもよいのでは(あくまでも、一定の事件についての参加という意味で)、と思うことがあります。とはいえ、安易にこれを広げ過ぎることも問題ですので、「将来」的に検討されることが望ましいかも知れません。
とりわけ今は、瑞祥さんのいわれる通り「司法基盤を厚く」することが大切ですね。
 
 
 
民事でも (瑞祥)
2007-06-03 23:43:24
コアラさんの言われるように,民事でも導入できればいいのですが,技術的にうまくできるかと考えます。ただ,現在でも,専門委員や労働審判員と一緒に訴訟や労働審判をしていると,とてもやりがいがありますし,勉強にもなります。法律家ではない人で,専門知識と現場のことが分かっている人の知恵には,「なるほど」と思うことが度々です。これらの制度を拡張していくのが現実的かもしれません。
 
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