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 寅さん映画の中では,第5作目の「望郷編」が一番好きだ。その幕切れのシーンが印象深い。思うところがあって,「額に汗して地道に暮らさなきゃ」と固く決意した寅さん,浦安の豆腐屋で地味なかたぎの生活を始める。だが,そこの娘(長山藍子)に振られて,これも長続きせず,また元のヤクザ稼業に戻ってしまう。その旅先で,一旦杯を返してかたぎにさせた舎弟ののぼると再会する。喜びあった二人がはしゃぎながら,言葉を交わす。
「兄貴! かたぎになったんじゃねえのかよ。ちっとも変わってねえよ!」
「バカヤロウ! 徐々に変わるんだよ。一遍に変わると身体に悪いじゃないかよ!」

 少年事件を担当していると,更生しようと決意を固めて少年院を退院した少年が,最初は,張り切ってウソのように生真面目に仕事を始め,周りをすっかり喜ばせていたが,しばらくするうち,何かが原因で,夜遊びが再開し,生活を乱して,ついにまた,小さな非行を起こす,ということがある。そんな少年に出会うと,私は,いつもこの映画のシーンを思い出すのである。 

 またまた村上春樹で申し訳ないが,好きな小説「ダンス・ダンス・ダンス」の中にも,主人公の次のようなセリフがある。
「僕はとても不完全な人間なんだ。不完全だし,しょっちゅう失敗する。でも学ぶ。二度と同じ間違いはしないように決心する。それでも二度同じ間違いをすることはすくなからずある。どうしてだろう? 簡単だ。何故なら,僕が馬鹿で不完全だからだ。そういう時にはやはり少し自己嫌悪になる。そして三度は同じ間違いを犯すまいと決心する。少しずつ向上する。少しづつだけれど,それでも向上は向上だ」(講談社文庫「下」117頁118頁)
(蕪勢)


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