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裁判員制度,船出のドラが鳴る

2008年11月24日 | 蕪勢
 裁判員候補者名簿に登録されたことを通知する「お知らせ」が,いよいよ今月末に最高裁判所から発送される。
 この通知を受けた人(名簿に登録された人)の中から,来年度の裁判員が選ばれることになるのである。
 裁判員裁判の事件が起訴されると,裁判所の方で,この名簿登録者の中から裁判員候補者(50人から100人程度)を抽選で選出し,裁判の始まる6週間前までにこれらの候補者に選任手続期日のお知らせ(呼出状)を送付する。この呼出状を受け取った人(50人から100人)は,その期日に裁判所に出頭して,辞退事由があるかないかの審査などを受ける。そして,その中から,実際に裁判に関与する裁判員6人が選ばれる(何人かの補充裁判員いわば補欠選手が選ばれることもある)。裁判員らはその日から裁判に臨むことになる。
 ある新聞社(共同通信)の統計によると,全国平均でみると,
  有権者数 1億0392万4309人
  来年度の裁判員候補者名簿に登録される人 29万5036人
名簿登録の確率 352人に1人 

 裁判員裁判となる事件は,昨年度の統計によると,全国で2643件あった。この数字を基礎に,1事件につき,裁判員6人と補充裁判員2人を選ぶとすると,8人×2643=2万1144人
 来年度(昨年と同じ数の事件があったとして),実際に裁判員・補充裁判員となるのは,全国で2万1144人と計算される。
 これを全国有権者数との割合でみると,4915人に1人
 名簿登録者との割合でみると,約14人に1人

 来年度,裁判員に選ばれるのは,およそ5000人に1人。この数字をどうみるか。宝くじなみとは言えないまでも,けっこう「難関」といえるだろう。
 この「難関」を「突破」された方々が,人生における希に貴重な経験の機会が得られた,と前向きに受け止めて,よき裁判のために尽力されることを願わざるを得ない。(蕪勢)

2 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-11-28 12:03:00
352人に一人なら障害をもつ裁判員候補者も一万人に近いことになります。14人に一人となれば裁判員は700人強。各種の障害に対する配慮体制が十分かということは別としても、先日の毎日新聞の報道では、地方を含めると宿泊が必要になる場合が少なくないそうですが、支給される宿泊費は定額。障害によってはどこにでも泊まれるとは限りません。一方で階段しかないので最寄の駅から乗れないのでタクシー利用ということもあります。また聴覚障害者の場合は移動には問題ないようですが、単独では宿泊を拒否されるというケースが少なくありません。
こういうことへの備えはあるのでしょうか? 宿泊の可能性にしても、一新聞社の調査が先行するようではお寒い限りです。
裁判員制度のプラスはあるとしても、実施を延期した方がいいのではないかという気もしてきました。
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追伸 (Unknown)
2008-11-28 14:45:59
私が心配するのは、障害者等いろいろな面で後々「面倒」な候補者に対して、「善意」で辞退を勧めるような事態が生起しないかということです。第14条第3項の拡張です。このブログを読むような方にはその危惧はないでしょうが、しかし他の裁判官については何とも言えません。私の危惧のようにならぬよう、周囲を監視してくださるようお願いします。
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