先日テレビで「千の風になって」を聞いた。よい歌だったので,早速CDを買ってきた。「私のお墓の前で泣かないでください。そこに私はいません。眠ってなんかいません。千の風になって,大きな空を吹きわたっています。」というような歌詞である。愛する家族を失った人達が,この歌で悲しみの中から立ち上がることができたという感想を述べていた。この歌を聴いて,元裁判官の杉本順市さんのことを思い出した。退官後弁護士になって間もなく,弁護士会の行事で中国視察に行かれて体調を崩され,全く予期しない形で突然逝去された。1991年4月に退官され,その年の8月のことである。「友は風となり」という,杉本さんが多くの人から慕われていたことがよくわかる追悼文集が刊行された。その中に,三森エイ子さんという人が,「さよならなんていいません」という一文を寄せられ,その中に「人間を やめたる友は 風となり 地球をそよと あやして居らむ」という短歌が書かれていて感動した。「千の風になって」を聞いたとき,この短歌を思い出したのである。逝去された人達が,お墓の中で眠っておらず,風となって,大空を吹きわたり,残っている我々のことを心配してくれていると思うと,自分も頑張らなければと思うし,少し悲しみも和らぐように思う。先頃竹中省吾裁判官が逝去された。これまで,私が親しくしていただき,先輩裁判官であり,見識ある優れた裁判官として尊敬していた人が4人も,自ら死を選ばれた。やりきれない思いである。その事情は人のよって異なるが,いずれも仕事が余りにも過酷であるという裁判官が置かれている現実が背景にある。このような悲しいことはもうこれ以上起きてほしくない。死への衝動は,ときにあり得るが,どんなことがあっても,家族のために,生き続けなければと,しみじみ思うのである。(備前武蔵)
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