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昨日見た新国立劇場の「象」。まず舞台一面の4トンもの衣類に圧倒される。登場人物は常に不安定な足元に立つことを強いられ、それが別役戯曲の世界観にも通じている。2010年の上演からの舞台装置で、特に震災を意識したものではないようだ
登場人物は、パタリと倒れると、この衣類の山の中に同化して、一瞬にして舞台装置の一部になってしまう。そこが斬新。暗いのでうっかり潜伏している役者の足を踏んでしまうこともあるそうだ。役者が舞台で怪我をしないように、新国立劇場の研修生が全ての衣類のファスナーやボタンを外しているという。凄い作業量だ
何と言っても、主役の大杉漣さんの熱量に圧倒される。そして、ジュノンボーイの木村了君も失礼ながら意外な健闘。私たち夫婦の大好きな神野三鈴さんが、大杉さんの妻役で、不思議な存在感を放っている。神野さんが舞台の衣類を抱き上げて子どものようにあやすシーンは、別役原作には無いが、心に残る。
大杉さんが、舞台後のトークショーで、役者は舞台での表現が全てで、舞台で出し尽くしたら早く帰りたい、トークショーなんてやりたくない旨を発言し、司会者を困らせていた。笑
別役実の「象」の初演は1962年、私の産まれた翌年。今回公演のパンフレットで、別役さんが初めて「象」というタイトルの理由を踏み込んで明かしている。キーワードは「寂寥感」である。  (くまちん)



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