日本裁判官ネットワークブログ

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「気骨の判決」を読みました。

2008年09月23日 | 
 終戦直前に,翼賛選挙無効の判決を出した吉田久大審院判事の人となりと当時の情勢をかなりわかりやすく書いた,読みやすい本でした。(NHK記者清永聡著,新潮新書)
 
 そのような裁判官がいたことはうっすら知っていましたが,改めて当時の裁判官を取り巻く国策協力強要の雰囲気といつ爆撃の犠牲となるかわからない中で,敢然と百名以上の証人尋問を鹿児島で実施し,昭和20年3月1日に鹿児島2区衆議院選挙無効判決をしたその気迫には圧倒されました。東条英機と闘った裁判官の副題もオーバーではありません。

 自分がそのような気合いと信念を持って裁判官生活を送っていたか,と聞かれると穴に入りたい気持ちです。

 その中で,当時の書生から正義とは,と聞かれて,吉田判事が「倒れているおばあさんがいれば,背負って病院に連れて行ってあげるようなことだ」答えたというエピソードが挿入させていましたが,気負いのない,しかし足が地に着いた発言として,大変感心した次第です。

 他方で「かく解することは,いわゆる国策に合するものというべし」と判決理由に臆面もなく書いた裁判官もいたと紹介されていましたが,いろいろな意味で考えさせられる本でした。

 まだお読みでない方には是非お薦めしたい一冊(680円)です。
                       考え込む「花」