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米先住民の人口激減、DNAで分析

2011-12-07 | 先住民族関連
National Geographic News December 6, 2011

Ker Than
 約500年前にヨーロッパ人と初めて接触したアメリカ先住民たち。新たな遺伝子研究によるとその後、人口が半数にまで激減したという。ヨーロッパ人が「新大陸」にばらまいた疫病、先住民の虐殺・奴隷化が壊滅的な影響をもたらしたという歴史的な説明の科学的な裏付けとなる。
 研究チームは当時と現代のミトコンドリアDNAの標本を使って、アメリカ先住民の人口履歴を計算した。ミトコンドリアDNAは母親から子に受け継がれるDNAである。
 分析データによると、アメリカ先住民の人口のピークは約5000年前。最低レベルまで減少したのは約500年前で、クリストファー・コロンブスが「新大陸」に到達してわずか数年後、ヨーロッパによる大規模な植民地化直前の時期に重なる。
 研究チームの集団遺伝学者ブレンダン・オファロン氏は、「初期の犠牲者の多くは病気が原因のようだ。病気が拡大するスピードは、ヨーロッパ人入植者の移動よりも速かった可能性がある」と推測する。オファロン氏はアメリカ、シアトルにあるワシントン大学在籍時に今回の調査を実施した。
 例えば、1500年代前半に「新大陸」に到達した最初期のスペイン人であるフランシスコ会修道士トリビオ・デ・ベナベンテ(Toribio de Benavente)は、「当初は多数の先住民が住んでいたメキシコだが、天然痘が大流行し、ほとんどの地域で半数以上が死亡した」と書き残している。
 病気の影響は特定の町や地域に限られるのではないかと疑う歴史家もいたが、今回の研究によると死亡率の高さは広範囲に共通していたようだ。
◆最近の人口減少を特定
 さらに、現代のアメリカ先住民は、ヨーロッパ人との接触以前の先住民よりも互いに遺伝的特徴が近いと判明した。最近のいずれかの時点で人口規模が減少したことになる。
「例えば、小さな村に住む2人に共通の祖先は何世代前になるか尋ねると、それほど昔ではないと答えるはずだ。一方、大きな村なら、かなり遡る必要があるだろう」とオファロン氏は説明する。
 これまでの遺伝子研究では、アメリカ先住民の人口が最近減少したという証拠は見つかっておらず、今回の結果とは矛盾が生じる。
 しかし従来は、正確な時系列の確定に欠かせない当時のDNAを対象としていなかった。「ある研究では人口規模の減少を1000~2000年前と推定しているが、それでは先住民の歴史と整合性がとれない」と同氏は述べる。
 新研究はDNAに基づいているが、統計分析を使用しており、決定的な証拠とは限らない。特定のシナリオの可能性が高まったに過ぎないという。「我々の手法では何千もの系統を推測した。系統の全体的な特徴を調べれば、事実の解明に近づくだろう」とオファロン氏は期待している。
 今回の研究は「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に12月5日付けで掲載された。
Illustration by Richard Schlecht, National Geographic

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20111206002&expand&source=gnews

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