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鉱物の部屋へのいざない

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グロッタ2

2015-01-19 11:08:36 | 日記・エッセイ・コラム
今日は「グロッタ2」です。一昨日の続きです。

一昨日のブログを書き終えた後に、店内にもうひとつグロッタ(人工洞窟)を思わせるものがあった事に気づきました。それが下の写真です。








天井の穴から何か幾何学的な虹色の金属結晶がのぞいております。その正体はビスマスの結晶です。これは石華工匠さんが製作したビスマス人工結晶の晶洞です。ビスマス結晶は分離されたものならよく見かける事があるとは思いますが、このように鍋の形態が残っているものを見る機会は少ないと思います。まるで鉱物の産状を見ているかのようです。これを見ているとこれも一種のグロッタではないかと思ってしまいました。グロッタのミニチュアと言うべきでしょうか?これを見ているとビスマスを溶かした鍋の内壁から人工結晶が成長していった様子がうかがえます。そして、見ようによってはグロッタのミニチュア版であるように思えてきます。

人工結晶の話題は過去に何度か書いたと思いますが、このビスマス人工結晶は初登場だと思います。

人工結晶と言うと、もうひとつ、人工胆礬(Chalcanthite カルカンサイト)の存在を忘れてはなりません。その硫酸銅の結晶のブルーの鮮やかさは非常に美しいので、それが天然のものではないとしても、安価なので、お値段以上に人気が高いと言えます。その写真を撮ろうと思いましたが、残念ながら、全て売れてしまって現在店には残っておりません。

その人工胆礬を集合住宅の1DKの部屋全体に結晶させた芸術作品があった事をご存知でしょうか?その驚異の部屋はロンドンのイスラム人街にあるようです。そこは青の洞窟(グロッタアズーラ Grotta Azzurra)とも言うべき雰囲気のある芸術家がつくった人工的な芸術作品なのです。そもそも芸術作品とは人がつくったものなので本質的に人工的なものです。ただ、その作品は作品と呼ぶにはあまりにもスケールが大きく、部屋全体が人工胆礬の結晶に覆われています。それは結晶好きで洞窟好きには無視できないとんでもない作品だと思います。その作品の理念や製作工程は一冊の「SEIZURE」(ROGER HIORNS 2008年)という洋書に載っております。その本を取り寄せて、さらっと読んでみると、それは作品そのものよりもその製作過程のパフォーマンスが作品であり、そのアイデアがコンセプチャルアートなのではないか?と思えて来ました。写真を見る限り、個々の人工胆礬の結晶は美しいのですが、その全体像は暗く不気味な感じがします。その空間に実際に入っていないので本当のところはわからないのですが、その印象は本来神聖な空間であるはずのグロッタと言うよりも、グロテスクな空間と言った印象が強いのです。そう言えば、グロテスクの語源はグロッタから来ていますので、元々そのような意図があったのかも知れません。

人工結晶を作品に取り入れる芸術家は日本にもいます。小林健二、吉岡徳人、等々、彼らの作品も人工結晶を自らの作品に取り入れておりました。物質の結晶化作用は芸術作品に成り得るのでしょうか?何となく微妙な感じがします。

「グロッタ」に関して、天然と人工、結晶化と芸術について想いを巡らせてみました。

追記:人工胆礬の画像がみつかりました。





コメント
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