ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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石の本2

2012-06-22 11:16:42 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「石の本2」です。だいぶ前に「石の本」というタイトルで一度書いております。ブログ記事も200を越えた頃から話題も重複してくるように成ってきました。そろそろ減速の時期に入らなければならないのかも知れません。

今日の石の本はつい最近発刊された図鑑です。「岩石・鉱物・化石」(小学館の図鑑NEO)です。

私は小学生の頃から図鑑には慣れ親しんで来ました。小学校低学年の頃は「動物図鑑」に夢中になりました。その頃は図鑑の絵の世界に入り込んでいたかもしれません。一冊の図鑑を何度も眺め、その一冊だけで知的欲求を満足させていました。

小学校高学年になる頃は理科の「地球図鑑」の世界にはまっていました。鉱物趣味の芽が出てきた頃です。その頃は昭和40年代です。大人の世界では石ブームが起きていました。小学生の私も石の世界に興味を持ち始めていました。ただ、その頃は多感な頃で、石以外にも興味の対象は多かったと思います。

その頃の「岩石・鉱物・化石」図鑑はまだ自宅の書庫に残っておりますが、久々に見直すと、見覚えのあるページに懐かしさを覚えます。

さて、新刊の図鑑です。正直、驚いています。児童向けの図鑑ながら実によく出来ています。何が良いかと言うと、まず出ている標本のレベルが高いです。一級品クラスの標本が多数載っています。さらに最新の情報がしっかり出ています。それは大人でも十分に満足できるレベルになっております。さすがに一流出版社の図鑑だと思いました。最近の児童はこのような図鑑を読んでいるのか!と感心しました。

お店には小学生のお客さんもいます。彼らがショーケースを見つめる眼差しは大人よりもはるかに真剣です。彼らの目はいつも輝いています。そんな彼らはそのような図鑑から知識を得ているようです。彼らの話を聞いていると時折、びっくりする事があります。今の児童たちはレベルの高い情報収集をしているのです。

石の世界も確実に進化していると思いました。彼らが大人になる頃には鉱物趣味も進化しているでしょう。明るい未来の予感がします。

もう一冊、石の本です。それは「オカルト万華鏡」(流水りんこ)というマンガです。その第一話がパワーストーンの内容になっています。作者も石マニアのおひとりのようですが、パワーストーンに関るお話になっておりました。未読の方は是非どうぞ。

岩石・鉱物・化石 (小学館の図鑑NEO)
萩谷 宏,堀 秀道,平野 弘道,籔本 美孝,大花 民子,大路 樹生,甲能 直樹
小学館
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球体2

2012-06-21 13:15:47 | 日記・エッセイ・コラム

今日は球体2です。ずいぶん前に球体の話題を一度書いておりました。

今朝のNHK「おはよう日本」を見ていると、今度の土曜日にBSプレミアムで放送予定の「体感!グレートネイチャ 白亜の絶景 秘められた謎に迫る~カザフスタン~」の予告編を放送しておりました。その中で巨大な球体状の石が出て来ました。その球体状の石は「月刊 たくさんのふしぎ 石の卵」に出てくるニュージーランドのモエラキ村の海岸に転がっている「ドラゴンの卵」という石にそっくりです。さらに先日「世界ふしぎ発見」(カリフォルニア)で見た丸い石にもそっくりです。世界には至る所で巨大な球体状の石が発見されています。

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九頭竜川のノジュール

上の写真は店に置いてある九頭竜川のノジュールです。中には恐らく何かの化石が入っているように思われます。化石はノジュール状になって産出するケースが多いです。何かしらのコンクリーション作用が起きてその外形が球体状になっていくようです。洞窟の中に見られるケーブ・パールも同じような成長過程を取っているようにも思えます。

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ロシア ダルネゴルスク 産の菱鉄鉱(Sideraite)

菱鉄鉱の中にも球状結晶に成るものがあります。上の写真の菱鉄鉱を見ると、表面の雰囲気から一皮剥けた様子が見て取れます。この球状結晶は針状・放射状結晶によって出来る仕組みではなく、タマネギのような多層膜構造になっているように思えます。

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ブラジル ミナスジェライス州 Urcum鉱山産のストーク石(Stokesite)

これは錫とカルシウムを含む珪酸塩鉱物です。珍しい鉱物で直径1.5cm位の小さいながらもほぼ球状の美しい形をしています。その表面を見ると小さな結晶の集合体である事が分かります。どのような成因でこのような球体状になったのでしょうか?ストークス石はジョージ・ガブリエル・ストークスの名から来ています。ストークスは流体力学で貢献された物理学者であるので、もしかすると流体力学的な成因なのかも知れません。

球体には様々な成因が考えられます。

まずは針状・放射状結晶です。そういえば、雪の結晶も-五〇℃程度の気温で水蒸気量が極端に多い場合には針状・放射状結晶になるそうです。氷点下の世界は非常に面白いです。-259.1℃以下では水素分子も固体になるそうです。(因みにヘリウムは26気圧、-272.2℃で固体になるそうです。)

次に思いつく球体の成因としては「回転」でしょうか。ポットホールに出来る球形の石は「回転」で球体になっていきます。球体状の氷の話は氷のテーマの時に書いた気がしますが、恐らくその丸い氷も波の回転作用で丸くなったと思われます。

そして、タマネギのような多層膜状の成長です。

それから、液体的には表面張力があります。水銀やシャボン玉や無重力中の水滴等は球体になります。

ミクロ的には電子の形はほぼ球体であるとされています。

マクロ的に惑星や恒星は球体です。

世界は球体で満ちています。

ただ、完全な球体は存在しません。古代ギリシアの哲学者プラトンは「球形は最も完全な形である。」と言ったそうです。人間は可能な限り真球に近い球体を造り出す事はできますが、その精度がいくら高いとしても、それは完全な球体とは言えません。完全な球体はイデアの世界でしか存在しないのです。

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放射状結晶4

2012-06-19 13:28:05 | 日記・エッセイ・コラム

今日はいよいよ放射状結晶4、球体です。

放射状結晶が3次元的に成長すれば、それは球形になります。

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インド産のトムソン沸石(Thomsonite)

上の写真は針状・放射状結晶の集合体が球状になったものです。この写真の裏側にはもう少し小さめの結晶の欠けた跡が付いており、円形の放射状の形を残しております。

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インド産の中沸石(Mesolite)

この標本は晶洞の中に二つの針状・放射状の球状結晶が並んでいます。二つは同じ環境で同じ時間を掛けて成長したと思われる双子の結晶です。

沸石類の鉱物は放射状の球状結晶になっているものが多いように思えます。形態的には魅力的な沸石。ただ、沸石は種類が多く、沸石の見分け方は難しく、それらの違いの理解は、かなりの経験を要すると思います。

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インド産の剥沸石(Epistilbite)

小さな晶洞の中に絶妙のサイズで出来た剥沸石の球状結晶です。このような標本には自然の妙を感じざるを得ません。

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インド産のガイロル石(Gyrolite)

ガイロル石の名前はギリシア語のgyrein(回転する)からきています。その球状結晶をよく見ると、葉片状の縁がまとまりながら回転するように絡まっているようです。

そういえば、ブドウ石の結晶もその外形は球体の形をとりながら、ガイロル石と同じような表面表情が見て取れます。

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モロッコ産の葡萄石(Prehnite)

この球形の葡萄石の表面はガイロル石の表面に似ています。ガイロル石の方は母岩にくっついているため劈開面の表情は分かりませんが、この葡萄石の裏側からは、やはり針状・放射状集合体であるという事が分かります。

ただし、針状・放射状の形態以外にも球体になる仕組みがあるようです。

ちょっと話はそれますが、白山紋石のような球顆流紋岩の紋もなぜ球状になるのか?前から不思議に思っていたのですが、ある写真を見て、「もしや!」と思った事がありました。その写真とは「月刊 たくさんのふしぎ」の「石の卵」の中で見た火山の写真です。その火山は火砕流をおこしながら噴火しています。噴火した溶岩は山の斜面を転げながら落ちて行っています。そうです!回転も球体の形を作る要因です。白山紋石の球顆の成因が回転から来ているのかは分かりませんが、球体を形作るひとつの要因は回転であり、その可能性もありそうだ、と思いました。

放射状結晶から球体の話に横滑りしてしまいました。

次回は球体そのものの話題にしようと思います。




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放射状結晶3

2012-06-18 11:18:12 | 日記・エッセイ・コラム

放射状結晶は花模様から円(丸)の形になり、今日は半球状になります。

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アメリカ アーカンソー州 産の銀星石(Wavellite)

美しい半球状の結晶が大小並んでいます。中には半球状の結晶部分が欠けて針状・放射状結晶が円形になっているものも見えます。よく見ると、一番大きな半球状結晶の表面にも小さな円形の針状・放射状結晶が見て取れます。

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インド産の中沸石(Mesolite)

半球状の針状・放射状結晶の集合体をなしている中沸石の結晶です。沸石グループも種類が多い鉱物ですが、このような半球状の結晶になるものが多い鉱物です。

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イタリア産の方解石(Calcite)

方解石にも半球状の結晶になるものがあります。方解石の結晶形態は非常に多いのですが、どうしてこのような半球状の結晶になるのか?不思議で、その成因を考えるのも楽しいものです。この半球状の表面は微細な結晶面の集合体になっています。明らかに上の沸石の表面とは違った質感です。これは放射状結晶の仕組みとは違った仕組みで出来ているように思われます。

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インド産の蛍石(Fluorite)

蛍石の中にも半球状の結晶のものがあります。この半球状の蛍石も針状・放射状の結晶とは思えない別のメカニズムが働いているように思えます。それがどのようなメカニズムで半球状になるのか?私はまだよく理解していません。

そういえば、積雪造形の中に半球状冠雪があります。半球状冠雪の成長の仕組みは分かっています。もしかすると同じような仕組みが働いているような気もしますが、それはどうなのでしょうか?

「最小限の力で最大限の効果」、「最小資源による最大容積/機能」。バックミンスター・フラーの言葉です。フラーの「ジオデシックドーム」も半球状です。

鉱物結晶の世界でもフラーの言葉と同じようなシステムが動いているような気がします。

明日は、いよいよ放射状結晶の球体へ向かいます。








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放射状結晶2

2012-06-17 11:23:42 | 日記・エッセイ・コラム

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上の写真はアメリカ・イリノイ州産のパイライトサンと呼ばれている放射状黄鉄鉱です。以前、「円盤」のテーマの時に別の紫がかった円盤状集合体パイライトサンの写真を出したのですが、その標本からはそれはクラゲの化石ではないか?というイメージを受けました。上の標本からは純粋な鉱物結晶のイメージを受けます。きれいな丸または円形で針状・放射状の結晶集合体からは生物的なイメージは生じません。それはやはり鉱物結晶なのだと思います。

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アメリカ アーカンソー州 産の銀星石(Wavellite)

放射状結晶の美しいものは円形の丸い形になります。

上の銀星石はその典型です。その劈開による断面は特徴的な質感があります。この銀星石は燐灰石が変化してできる二次鉱物で、リン酸塩鉱物のひとつです。銀の成分はありません。

両方とも二重の円形・針状・放射状結晶になっており、独特な結晶の美が感じられます。

鉱物の放射状結晶は円形から半球状へ、さらには球状の形態へ、次元が高まります。

それらは明日に続きます。

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