昨日は定休日だったので、ブログもお休みにしました。今日は一昨日の話題です。
一昨日、関西のSさんが出張の帰りにお店に立ち寄られました。Sさんは日本の鉱物趣味の第一人者です。ご来店は2回目となります。次のサンダーバードまでの待ち時間ということで、少しの時間でしたが、お話しできました。
Sさんとの出会いは5年前の名古屋ミネラルショーの時です。初日のオープン前の列の直前にSさんが並んでいました。どうして分かったかというと、その直前にテレビのCSのモンドTVの番組「山田五郎の新マニア解体新書」という番組で鉱物趣味のテーマの放送があり、その番組でSさんが出演されていたからです。番組を見て、すごいマニアの方がいらっしゃると思っていたところ、ご本人が目の前にいらっしゃたのです。私は初対面ながら親近感を抱き、番組を見ました、とお話ししました。その時はSさんはまだご覧になっていない、とのことでした。
Sさんは鉱物趣味歴49年の大先輩です。私は小学校時代の一瞬を除けば、せいぜい16年位のひよっこです。Sさんとお話しできること自体が貴重な体験です。
Sさんは来年お仕事の定年を迎え、いよいよ本格的に長年の夢であった私設鉱物博物館を大阪市内に設立されるとのこと。私のような云わば断舎利的なお店を持つのではなく、マニアの究極の目標である博物館の方向に行かれるそうです。うらやましい限りです。オープン時には是非とも駆けつけたいと思っております。
Sさんとお話をしていると、これぞ本物のコレクターだと思う真髄に触れる部分が多くあります。早くその博物館に行って、直にSさんコレクションを間近に見てみたいものです。
Sさんのホームページはhttp://www2.odn.ne.jp/aab06570/ です。ご覧ください。
?チューリップの蕾のようなかたちをしたペルー産のマンガンカルサイト
方解石(カルサイト)は大好きな鉱物です。比較的安価でバリエーションも豊富な為、石の華にも多くの標本があります。結晶の形が多様で、パラシェという鉱物学者は、630種類にも及ぶ異なった形態の方解石の結晶を記録しているそうです。このブログでも今後何度か登場すると思います。
今日の方解石は実は売約済みの品です。小松のSさん、すみません。取り置き中ですが、登場させました。
これは、非常に珍しいかたちをしております。石の華にふさわしい標本です。薄いピンク色をしたチューリップの蕾のような結晶からは、それが鉱物ではなく、まるで自ら植物になってしまったと思っているかのような気がします。当然、鉱物には意志はなく、それは単なる石にすぎません。鉱物と生物は関係することがないように思われます。
生物の世界では微生物と動物、植物と昆虫、コバンザメとサメ、というように共生関係の例はいくつもあります。鉱物の世界でも水晶と方解石、蛍石と水晶、黄鉄鉱と黄銅鉱、というような共生はいくつもあります。
無機物の鉱物と有機物の生物は無関係のように思えます。それが昨年アメリカのある鉱物学者が鉱物と生物の共進化という説を発表しています。地球上には多くの鉱物種が存在しておりますが、それは地球に生命が存在するからだ!という内容です。非常に刺激的で興味深い説でして、興味のある方は日経サイエンスの2010年6月号をご覧ください。
写真はアフガニスタン産のラピスラズリ(瑠璃)とラズライト(青金石)の12面体結晶です。
この鉱物は何と言っても魅力的な青色が特徴です。この石で思い出すのは宇佐見英治さんの「青金幻想」という随筆です。その随筆の中で、この石を見つけて「息が止まるほどに一瞬うつくしく思った。」と書いています。また「わが半生をふりかえってみても青春の最初の恋愛の感情をのぞいては、これほど物そのものに感応し、震撼されたことはめったにない。恋愛や美の経験の根源がそうであるように、なぜ或る石を私がそんなにうつくしく感じるのか自身にもよくわからない。恋愛は官能またはエロスの働きによってある程度解釈もしえようが、人が石そのものに感じるこの蠱惑はどこからくるのであろうか。」とも書いています。文学者らしい表現で、私はこの石を見ると共感とその随筆の事を思い出してしまいます。
また、ラズライトの結晶は菱型12面体の自形を見せます。菱型12面体は数学的な4次元の立方体のかたちです。それはスペインのナバフン鉱山の黄鉄鉱が見せるあのシャープなキューブと同様の感動があります。鉱物の魅力は色とかたちだと思います。ラズライトはその両方の魅力を兼ね備えていると思います。
↑ 石の華では石に関する書籍や雑誌も置いてあります。自由に読めます。ご活用下さい。
コミックス「るべどの奇石 弐」を読みました。めずらしい鉱物漫画として愛読しております。石屋「るべど」を舞台とした石に関わる幻想奇譚です。
今春に「るべどの奇石 壱」が発刊された時は驚きました。石の漫画はつゆねこさんの「もっと!鉱物を楽しみたい」を愛読しておりましたが、「るべどの奇石」の登場はついに鉱物テーマの本格漫画が登場したと思いました。ちょうど石の華のオープンを考えていた時と重なり、同時代性も感じました。
内容は少しおどろおどろしく、澁澤龍彦さんや種村季弘さんが読まれたら、さぞお喜びになったであろう、と思います。今回の「弐」では、ほんのりいい話が多いのですが、編集の意向も反映しているのかもしれません。今回は特に「滅度」が良かったです。洞窟の風景に対して「この光景を美しいと感じ涙を流す、そんな生き物はこの地球上に人間しかいない」というせりふ。名場面です。
昨日はお世話になっているY館長がご来店されました。Y館長は第一級の鉱物趣味の先輩です。Y館長が購入される鉱物標本はこちらも納得の標本ばかりです。Y館長に内緒で購入リストを挙げてみます。
石の華のオープン時に購入していただいたものは福島県石川地方の母岩付鉄電気石の巨晶と岐阜県苗木地方のトパーズの美晶でした。
昨日は石川県恋路海岸の薄紫色の霰石の巨晶、富山県黒部市宇奈月のきれいな十字になっている十字石、北海道の稲倉石鉱山の菱マンガン鉱の巨大美晶、長崎県東彼杵郡波佐見の遊色が現れるオパール、カナダのアキャスタ片麻岩、いづれも一級品ばかりです。特にオパールは見た目は白っぽい中に自ら遊色を見つけ出しました。
標本たちもうれしい限りです。Y館長、ありがとうございます。