写真はアフガニスタン産のラピスラズリ(瑠璃)とラズライト(青金石)の12面体結晶です。
この鉱物は何と言っても魅力的な青色が特徴です。この石で思い出すのは宇佐見英治さんの「青金幻想」という随筆です。その随筆の中で、この石を見つけて「息が止まるほどに一瞬うつくしく思った。」と書いています。また「わが半生をふりかえってみても青春の最初の恋愛の感情をのぞいては、これほど物そのものに感応し、震撼されたことはめったにない。恋愛や美の経験の根源がそうであるように、なぜ或る石を私がそんなにうつくしく感じるのか自身にもよくわからない。恋愛は官能またはエロスの働きによってある程度解釈もしえようが、人が石そのものに感じるこの蠱惑はどこからくるのであろうか。」とも書いています。文学者らしい表現で、私はこの石を見ると共感とその随筆の事を思い出してしまいます。
また、ラズライトの結晶は菱型12面体の自形を見せます。菱型12面体は数学的な4次元の立方体のかたちです。それはスペインのナバフン鉱山の黄鉄鉱が見せるあのシャープなキューブと同様の感動があります。鉱物の魅力は色とかたちだと思います。ラズライトはその両方の魅力を兼ね備えていると思います。