ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

遺愛石

2013-05-30 13:09:15 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「遺愛石」です。

「遺愛石」とは亡くなった方が生前に愛していた石の事です。私は「遺愛石」とは年配の愛石家が多い水石の世界の事だと思っていましたが、先日、鉱物趣味の世界の「遺愛石」を相次いで目にしました。

そのひとつは雑誌「ミネラ No.23」で見た「三河の鉱物コレクション」です。それは鳳来寺山自然科学博物館の前館長であられた横山良哲さんの「遺愛石」の数々です。それらは三河地方の鉱物を代表する一級品ばかりでした。

私は十年位前に、一度、鳳来寺山自然科学博物館に行った事があります。その日は横山良哲館長の鉱物教室があり、その教室目当てで行った記憶があります。横山良哲さんによる展示品の解説と食い違い石や中央構造線の話は興味深く、しっかり記憶に残っております。今回、「遺愛石」を見て、お亡くなりになった事実を知ってしまいました。

もうひとつは「教授を魅了した大地の結晶 北川隆司 鉱物コレクション200選」(東海大学出版会)です。こちらも立派なコレクションの数々で、結晶鉱物好きにはたまらない鉱物が満載でした。私の知らない方のコレクションでありながら親近感が湧きましたし、「遺愛石」となる事で初めて目にすることが出来たコレクションだと思うと何となく複雑な気持ちにもなりました。

「遺愛石」には持ち主だった方の審美眼が付着しています。それらの「遺愛石」には、純粋な石そのものの持つ物語に人間的な物語性が付け加えられています。

「遺愛石」には地質学的な歴史と共に人間的な歴史が加わっていくのです。

そういえば、「前島鉱物標本室」というラベルの標本があります。標本市場では有名らしいのですが、その方の事はよく知らないまま、大量の「遺愛石」が流通しているようです。

それらは普通の石には変わりないのですが、それが「遺愛石」である事を想うと何となく感傷的にもなってしまいます。

そう、石の寿命は人間の寿命とは次元が違うのです。「遺愛石」はこれからも幾たびも流転を繰り返し、人間的な歴史を積み重ねていくのだろうと思います。

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