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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「シャーロック・ホームズ」Sherlock Holmes (2009 ワーナー)

2010-04-14 | 洋画

Sherlockholmesposter01 アーサー・コナン・ドイルが生んだ名探偵シャーロック・ホームズのキャラクターにインスピレーションを受けたオリジナルストーリーを、「スナッチ」のガイ・リッチー監督が映画化。19世紀末のロンドン。ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr.)と医師ワトソン(ジュード・ロウ)の2人は、怪しい黒魔術の儀式を行い、若い女性を次々と殺害するブラックウッド卿を逮捕する。だが、処刑されたはずのブラックウッドが蘇り、再び殺人事件が発生する……。

 確かに、シャーロック・ホームズは登場する。ワトソンも(ジュード・ロウは老けたなあ)レストレイド警部もアイリーン・アドラーも、そして“あの人”もちゃんと出てくる。ホームズとワトソンが住んでいるのはベイカー街だし、ハドソン夫人に迷惑をかけている設定や、ワトソンの婚約者とホームズがうまくいっていないあたり、コナン・ドイルの原作に子どものころに耽溺した身としてはうれしい限り。

 でも、ロバート・ダウニー・Jr.が主演しているから言うわけではないが、ドイルのホームズというよりも、「アイアンマン」の19世紀版だろこれ。驚異的な身体能力で敵とたたかい、常にへらず口を叩いてひんしゅくをかうあたり、まるで胸にアーク・リアクターが装着されているかのようでした。最後の最後に真の悪役が登場する展開までいっしょ。大ヒットしたものだから速攻で続篇の製作が決定したことまでそっくりだ。

 もちろんドイルの「シャーロック・ホームズ」にしても、厳密な意味でのミステリとはほど遠く、現代の冒険小説に近い性格なのでそのことに文句はない。でも、もうちょっと地味な事件にできなかったものか(^o^)。

「スナッチ」(ブラッド・ピット主演)でセンスのいいところを見せたガイ・リッチー(マドンナの前の亭主です。結婚したときはどこの馬の骨かと思ったものだけど)が今回も快調。でも「スナッチ」は最高だったのに、次の「スエプト・アウェイ」が大コケしたリッチーが、こんな大作に起用された方が不思議。ハリウッドのルールはよくわからん。まるで宮藤官九郎かタランティーノの作品のように、時制を自在にあやつるあたりのキレはあいかわらずだったので、正解だったとは思うんだけどさ。

さて、続篇では“あの人”をブラピでやろうとまことしやかに囁かれているのだとか。それは……それはいいかも!

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わたし怒ってます~阿久根PART9

2010-04-13 | 社会・経済

PART8はこちら

<阿久根市長>報告会に乱入 反市長派議員に「ばーか」

3月30日 毎日新聞

 開会中の3月議会に出席を拒んでいる鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(51)が29日夜、反市長派議員による議会報告会に“乱入”。議員らに「市政には参加させない」などと言い放ち、議員らと一時もみ合いになった。

 報告会は市長宅から数十メートルの公民館であり、反市長派議員10人と約80人の市民が参加した。市長は開始前、「反対派がうそを言うかも」と、出席理由を説明していた。

 報告会で議員から市長の出席拒否を非難する声が出ると、市長が突然マイクを握り、市職員の高給批判など自説を展開。ヤジを浴びながら約5分間話し続け、壇上の議員に「あなたたちは市政に参加させません」と言い放った。帰り際に市長が議員を「ばーか」と罵倒(ばとう)したため、もみ合いになる一幕もあった。

 竹原市長は今月4日以降、本会議と予算特別委員会の出席をすべて拒み、委員会では一部の課長に答弁拒否を命じるなど混乱が続いている。【馬場茂、福岡静哉】

……また阿久根ネタでもうしわけない。どんどんレベルが下降しているので特集するのもしんどいのだけれど、ひとつだけ指摘しておきたい。

 この阿久根市のような事例って、他の市町村では存在しないのだろうか。阿久根はあまりにあからさまだし、幸か不幸か市長自身がブログを活用しているために全国から注目されているが、本当にここが全国最低レベルの首長なのか?

 たとえば、わたしが前に住んでいた狛江の市長は、バカラにはまりこんで30億だかの借金をつくって雲隠れ。いまは出家の身という怒濤の人生を送った人だが、しかし阿久根の場合は市への悪影響という意味で、それ以上ではないかと思う。

 なぜなら、狛江の場合はトンデモ市長というわかりやすいロールを演じてくれたからまだしも、阿久根の竹原市長は“悲劇のヒーロー”を気どっているし、市民のなかにはそれに同調している層が確実に存在するからだ。「ばーか」なのはもちろん市長の方だけれど、彼の罵倒に快哉を叫んでいる連中がいることで、阿久根はなお沈んでいく。文句なく、現時点で最低の首長ではないか。その証拠に……PART10につづく

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「賢者の贈り物」 石持浅海著 PHP NOVELS

2010-04-13 | ミステリ

56977502 数々の寓話を石持浅海らしい

「頭でっかちな」

「人を人とも思わない」

「コンセプトのためならキャラなんかどうなってもいい」

姿勢で語った短編集(笑)。やっぱり面白いよー。磯風さんという登場人物がどの作品にも出てきて、これが座間味くんにも増して人間味がなくていい。

たとえば「ガラスの靴」というシンデレラのパターンは、鍋パーティをひらいた翌朝、アパートに残っていた女物のサンダルひとつ。独身男性は三人の候補からその持ち主を推理しなければならない……

まず設定が無理矢理、展開も無茶、そしてこんなことを考える女の子と結婚してだいじょうぶなのかお前は、とかいうツッコミは石持の場合は無意味なわけね。またしても石持版「机上の推理」を堪能するしかない。やっぱり、面白かった。

ハートウォーミングなストーリーを書くにしても(書きたかったわけだ。へー)、どこか理屈っぽくなるこの作者を、わたしはやっぱり好き。版元がPHPってあたりも意表をつきました。

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「わが家の歴史」(フジテレビ)第三夜

2010-04-12 | テレビ番組

Eikuranana09 第二夜はこちら

三谷幸喜がいろんなメディアで(例によって)かましているように、このドラマは「やっぱり猫が好き」の変奏曲ではないし、「三丁目の夕日」の否定ではない……ことにするのはやっぱり無理でしょう。

あの人はサービス精神のかたまりだからさまざまな発言をメディアに合わせて行うが、ここだけは嘘だと思う。少なくとも、「ALWAYS」へのむき出しの対抗心がひしひしと感じとれる。おれはもっとうまくやれるぞ、という紳士的な宣言が陰にあるのではないか。そうでもなければ運動会に収斂させるあのラストはなかなか。

映画で意識したのは「悲情城市」と「ゴッドファーザー」か。西田敏行の死は、なにもそこまでアル・パチーノの最後を引用しなくても(笑)

それ以上に三谷幸喜が下敷きにしたのは、ミニシリーズという形をとった「ROOTS」だろう。クンタ・キンテのあれね。脆弱だったNETが、テレビ朝日と名を変える時点でかました“ぶち抜きオンエア”こそ、「わが家の歴史」でもっともやりたかったことなのだと思う。勝ち組であるフジテレビでこんな冒険を成功させた以上、三谷に怖いものはなくなったろう。

井上ひさしの死が伝えられたこんな日に、これだけのドラマを見ることができてしあわせ。おそらくは「しょせん紙芝居ではないか」とする批判は多く出るだろう。でも、それがどうしたのだ。面白い紙芝居をつくるために、どれだけの才能が必要だったか。三谷幸喜に心残りがあるとすれば、それは井上ひさしにこの作品を見てもらえなかったことだろうか。

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龍馬伝~第15話「ふたりの京」

2010-04-11 | テレビ番組

Baishou03  第14話「お尋ね者龍馬」はこちら

前回の視聴率は18.5%。そうかあ、このあたりでしばらく推移するのかな。今回は自分がピンチ。「ザ!鉄腕!DASH!!」のソーラーカーだん吉の最終回に心ひかれたから。でも、新シリーズが始まりそうだったので安堵。酒田にも回ったらしいあの頃、ちょうど海岸線の学区にいたのでシンパシーありありだったので。あ、結果的にいまでもいるんだけど。

さて、今回の「龍馬伝」は福田靖らしさ爆発。
龍馬(福山雅治)と加尾(広末涼子)の初体験(ほんまかいな)と、人斬り以蔵(佐藤健)の二人目の暗殺をシンクロさせる露骨ぶりが、いかにもいかにも。

龍馬との別れを告げる加尾が、建前である京都弁と、本音である土佐弁を使い分けるあたりもいかにも。時代の怒濤が、龍馬にも加尾にも、そして以蔵にも、もう子どものころのような平和な日々は訪れないと知らしめる安寧の一日。

暗殺者である岡田以蔵が、まるで中村主水のようなコスチュームになるあたりは、京都の寒さを感じさせて効果的。誰も必殺シリーズを江戸のお話だとは思ってなくて、撮影場所である京都を意識しているしね。次第にこれから、以蔵の暗殺の方法も洗練されていくのだろう。京都を去る加尾が、いかにも京風のお辞儀をして土佐に向かうように。

いよいよ次週からは江戸に舞台がうつる。どうやらこのドラマでいちばん人気が出ているのは貫地谷しほりらしいので、今度こそ視聴率はアップか。うーん20%ジャストと読みました。

第16話「勝麟太郎」につづく

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「オー!ファーザー」 伊坂幸太郎著 新潮社

2010-04-11 | ミステリ

51yzviobl7l  主人公は高校2年生の由紀夫。恋多き母親のせいで、4人の父親を持つ身だ。ギャンブル好きで、直感で生きている鷹。格闘マニアの中学教師の勲。元ホストで女に目がない美形の葵。いつも本を読んでいて思索的な大学教授の悟。このなかの誰かが、由紀夫の本当の父親らしいが……

 今回の英語題名は「a family」。日テレで若き石立鉄男が主演してもおかしくないようなテイスト。この一家が県知事選がからんだ奇妙な事件にまきこまれ、いかに解決(っていうか)していくかが一応のストーリー。

 4人の父親たちのキャラは明らかにビートルズを意識していて、それぞれの特殊能力(陽気なギャングほどではないけれど)によって息子を守る過程は、笑わせると同時にかなり泣かせもする。

 前半でばらまいた伏線(電線、手旗信号、「E.T,」の着メロ、ドッグレース……)が後半にキチンと刈り込まれるあたりの手際はさすが伊坂幸太郎。ただ、あまりにうまく収束するものだから、小さくまとまりすぎじゃないかとも思える。伊坂もいささか(シャレじゃないです)そのあたりは認識していたようで、単行本化するのに三年もかかってしまっている。その反省をもとに書かれたのがあの「ゴールデンスランバー」なのだから、この若き作家は日々成長しています。

 にしても、ジョン・レノンを彷彿とさせる「鷹」の警句はおみごと。

「あのな、大人の役割は、生意気なガキの前に立ち塞がることなんだよ。煩わしいくらいに、進路を邪魔することなんだよ」

「恰好好い大人の大半は雀荘に集まってんだよ」

「それはこのレース場に限ったことじゃねえよ。社会全体がそうなってんだって。見た目は、優しく、平和で、みんな平等みたいに見えるけどな、中を見てみりゃ、勝ち負けと不平等の横行する、きな臭い賭場みてえなもんだ」

……父親になりたてだった伊坂が、息子に言い聞かせたいことを鷹に代弁させているのがよくわかる。気持ちのいい、父と息子の物語。それにしたってオヤジ4人ってのはしんどいけど。

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「わが家の歴史」(フジテレビ)第二夜

2010-04-10 | テレビ番組

Horikitamaki08 第一夜はこちら

金かかってんどー。って感がビシバシしている第二夜です。
でもそれだけじゃなくて、長澤まさみが演説会で歌うシーンで微妙なハウリングが入ったり、演出もこまかい。

あふれるほどの有名人との遭遇で派手になっているけれど、八女家の物語は、お妾さんである長女(柴咲コウ)に経済的に頼りながら静かに進む。

佐藤浩市が演じているからわかりにくくなっているが、それこそ昭和時代のドラマなら、鬼塚の役は憎々しい悪役であってもおかしくない。裏読みがすぎると言われるのを承知でいえば、金の心配を庇護者に丸投げし、その上で(下で?)右往左往する八女家の姿はアメリカと日本の関係そのものだ。で、それがどうした、と開き直っているのが三谷幸喜のスタンスなのだと思う。そう考えれば、西田敏行が演じる父親が、吉田茂を信奉しているのも理解できるではないか。

山本耕史ついに登場。
「大晦日に除夜の鐘は何回つくか」を得々と語る(108回じゃないと主張)あたりの意地の悪さをみごとに演じています。やっぱりいいですわこの役者は。

今回の白眉は古川ロッパを演じた伊東四朗。ロッパが晩年に身体にタオルをまいて痩せた身体をカバーしていた挿話など、すでに“史実”の世界だろうか。

民放のドラマをこれだけぶっ続けに見たのは久しぶり。いやはやこんなにCMって多かったっけ?いや、それがダメだってんじゃなくて、カップヌードルライトのお姉さんにクラクラしてたんですけど(笑)

第三夜につづく

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うまい店ピンポイント~ラーメンの町鶴岡「鈴木そば」

2010-04-10 | 食・レシピ

Suzukisoba03 「鈴木屋」特集はこちら

あれは十数年前。酒田から旧松山町に通っていたわたしは、同僚から「(旧)平田町には、すごく有名なラーメン屋がある」と知らされた。名を「鈴木そば」。

どうして有名かというと、その量と、浮いている背脂で麺が見えなくなるほどの脂っぷり。もってくるおばさんの指が常にどんぶりに入っているために、ついたあだ名が指ラーメン(笑)。そしてなにより、オリジナルな味のためだ。三日月軒をはじめとしたあっさり系中心の酒田で、その味はダントツに変わっていたので。

で、好奇心旺盛なわたしはさっそく行ってみた。開店直前のその小さな店には、すでに行列が。思いっきしオヤジ中心(^o^)。おー、これが指ラーメンかぁと得心。

その後、いろんなことがあってその店は閉じてしまったが、味をいま酒田に伝えているのが弟子筋のケンチャンラーメンであり、そしてこの、鶴岡の鈴木そばなのだとか。なにしろこちらには、平田の鈴木そばの娘さんが嫁いでいるというのだから血統書付きだ。で、例によって行ってみました。

グランドエルサンの斜め向かいあたり。交差点の角っこにあるものだから駐車には苦労する。オモテには「テレビの取材お断り」の貼り紙が。ひー、気難しい店主だったらどうしよう。

お昼過ぎに行ったのに客は満杯。みんな「小」とか「中」とオーダーしているが、どう考えても他の店の「中」「大盛り」に該当しているので注意。

出てきた「中」は、なにもそんな親の仇じゃないんだから、と言いたくなるほどたっぷりな量。スープも表面張力でかろうじてどんぶりにおさまって……こぼれてます(笑)。トレイがついていてよかった。運んできたのが平田生まれのお嫁さんなのだろう。伝統は進化しながら生きている。

さてお味は。

なつかしの平田鈴木そばの流れが確かにここに。かなりこってり。でも背脂は記憶よりも……あ、それはメニューにあるこってりラーメンで再現されているのかな。今度はそっちをたのんでみよう。

セルフでどんぶりをカウンターに返し、お勘定。「どーもありがどの!」ありゃ、店主は意外にフレンドリーなのでした。ホッ。

次回からは余目篇に突入。

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「わが家の歴史」(フジテレビ) 第一夜

2010-04-09 | テレビ番組

Shibasakikou04 8時間!

いくらなんでもそれだけの長丁場は……三谷幸喜の最新作だ、つきあってみよう。フジテレビ開局50周年特別企画を、主役を柴咲コウでかまそうというあたりに気合いを感じる。西田敏行は意外なほど退いた役だったし、あふれるほどの有名人との遭遇も、八女(やめ)家の長大なストーリーにはほとんど影響しそうにないあたりがいい(笑)。

佐藤浩市、山本耕史、鈴木砂羽の「新選組!」組の活躍にとにかく期待。第一夜はさっそく佐藤と砂羽があの大河ドラマそのまんまの役柄で笑わせてくれる。外面はどうあれ、弱さをかかえつづける芹沢鴨と、愛した人間に限界知らずに愛情をそそぐ強い女……なつかしいですな。

ま、そんなことを言いつつも、猫を抱えながらボーっと見ていて思ったことは「いやー榮倉奈々って、マジで背が高いんだなあ」とか「高倉健を小栗旬にやらせようと考えたヤツはえらい」とか。8時間をすごすには、特にフジテレビにチャンネルを合わせながら(死語だけど)すごすには、正しい態度ではないかと……すんません言い訳です。

大河ドラマでは抑制されていた「~のちの、○○である」というフレーズの連発も、無名の一族の物語にはフィットする。おそらく、三谷幸喜もほんとうは「新選組!」で、やりたくてやりたくて仕方のなかったことなのだと思う。いやー気持ちいい。

第二夜につづく

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「シャッターアイランド」Shutter Island(2010 パラマウント)

2010-04-09 | 洋画

Theshutterisland01 「ミスティック・リバー」のデニス・ルヘイン原作の同名小説をマーティン・スコセッシ監督&レオナルド・ディカプリオ主演で映画化。1954年、失踪した女性患者の謎を探るためにボストン沖の孤島に建つ犯罪者用精神病院を訪れた米連邦保安官テディ・ダニエルズ(ディカプリオ)に次々と不可解な出来事が起こる。

……もしもあなたがディカプリオのファンなら、そしてスコセッシの映画がお好きならば、なるべく早く劇場にかけつけることだ。よけいな情報を仕入れる前に。まっさらな気持ちでこの作品に向き合えば、それだけ楽しむことができる……かなあ。

 ってことでさっそくよけいな情報をバンバン提供しましょう(笑)。どう語ってもネタバレになりそうなので慎重に。

 かまえとして、完全な密室から女性患者はいかにして消え失せたか、を連邦保安官であるディカプリオが捜査する過程を描いている。ところが、その回答は“密室の中だけが正常で、外の世界の方がゆがんでいた”形になっている。わけわかんないですか。よかった。ネタバレになってないな。

 どんでん返しが連続する展開に、観客の半分は激怒し、半分はニヤリと笑うことでしょう。スコセッシの作品のなかでは「ケープ・フィアー」に肌合いが近いかもしれない。ロバート・デ・ニーロのそっくりさんが重要な役で出てくるし。

 オープニング、ディカプリオが船酔いに苦しんでいること自体が作者の罠。そのあたりは周到なんだけど、この島(Shutter Islandという名前もひっかけになっています)に猛烈なハリケーンが襲ってくる事実との関連がちょっと弱い。それに、名監督ではあるけれど、スコセッシはやはり不器用で、ホラーには向いていないんじゃないか。イーストウッドが同じルヘインの「ミスティック・リバー」をクールに撮った手際に遠くおよばない。

 それからね、パラマウントピクチャーズジャパンは、立ち上がったばかりだから気負っているのはわかるけど、超日本語吹替版(芸人を使うわけじゃなかったんだね)とやらをぶちあげたり、「結末を絶対に話さないでください」なんて字幕を上映前に流したり、どうも意欲が空回り。特に、「しぐさや表情にご注意を」って字幕はなあ。おそらくはラストのディカプリオの行動に注意を向けたかったんだろうけど、はっきりと、よけいなお世話です。あ、オレはそんなこと言えないのか。

 音楽は「ラスト・ワルツ」つながりでロビー・ロバートソン。エンディングに流れるのはダイナ・ワシントン。スコセッシは相変わらず音楽には強い。

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