前号繰越。イラク攻撃直前クミアイ情宣シリーズ最終回です。もちろん、アメリカ批判は(不幸なことに)これから何度もやることになるのですが……
浅井氏の講演はつづきます。
核兵器開発が疑われたあのとき、実はアメリカは北朝鮮の核関連施設に奇襲攻撃をかけようとしていたことが報道されています。当然、その足がかりは日本になるはずでした。そして北朝鮮の報復の対象もまた日本に。しかしそのとき日本には【有事法制が無かったので仕方なく】カーター=金日成会談によって収束に向かった経緯があります。また整理してみましょう。
有事法制推進派の認識とその問題点
他国から攻められたときに備えがなかったらどうなるか → 他国から攻められて有事がはじまるのではない
備えあれば憂いなし → 備えがあると有事をもたらす
自分さえ平和であればいいという一国平和主義ではいけない → 日本が有事体制を作らないことこそが国際平和に貢献する
……つまりこの核疑惑の際に、日本における有事法制の不備が軍事行動の足かせになっていることを痛感したアメリカは、その整備を日本に要求し、再軍備をめざす日本の勢力がそれにのった、という構図が見えてきます。ヒートアップするイラク情勢にくらべ、北朝鮮問題は一時の興奮状態を脱した感がありますが(マスコミはあいかわらず騒ぎまくっているとはいえ)、逆に有事法制推進派はこの興奮が残っているうちに法案成立をもくろんでいると言えます。
浅井氏は主張します。ブッシュ=小泉に共通する部分として、経済に有効な手段を打ち出すことができず、支持率が下降気味である彼らがやっきになって戦争に突き進む意味をよく考えることと、主権者として、国際社会や子どもたちのためにどんな国にしていくべきなのかを判断し、有事法制にきちんと反対の声をあげるべきだと。
最後に参加者から興味深い質問がありました。
「いったいどうして日本はこんなアメリカにいつも追随するのでしょう」と。
官僚出身の浅井氏は明快に答えてくれました。
「どこの会場でもこの質問は受けます(笑)。ものすごく単純化して言えば、戦前の天皇崇拝が、アメリカ崇拝に置きかわっただけ、と言えますね。官僚の世界で言えば、外務省に限らず、霞ヶ関ではとりあえずアメリカの言うことをきいておこうという空気が醸成されていて、新人の頃は日本の独自性を、との気概を持っていたとしても、次第にその空気になじんでいってしまうんですよ。その方が確実に出世も早いしね。
ただし、アメリカ崇拝に置きかわったといっても、また日本の崇拝の対象がコロッと変わる可能性もあるわけだから、深いところではアメリカは日本をパートナーとして信用しているわけじゃないんです。これはおぼえておいてください。」
60年ほど前、まさしく悪の枢軸国だった日本に、アメリカがそう簡単に心を許すものか、ということだろうか。産業構造において、戦争の存在が前提となっている連合国が。
※「学者として、きちんと検証できることしか言いたくはないけれど……」との前提で浅井氏は、イラクへの攻撃が、莫大な石油の貯蔵量の確保とその安定した供給、つまりアメリカが石油取引のイニシアチブを握るために行われるのではないか、との意見に「……否定はできませんね。」と発言した。
※学校に勤務するものとして、有事法制と少子化の方向が交差する地点が「徴兵制」であることは認識しておかなければ。