事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

タイガー&ドラゴンを読む

2008-01-16 | 本と雑誌

Tg 宮藤官九郎著 角川文庫 上巻820円 下巻780円 

組長(鶴瓶):「ええかどんちゃん、ワシは借金返したら山崎(長瀬智也)を堅気にしてお前にくれてやるて、そう伝えた筈や。そらぁ事件起こして務所入ったけど、きっちり罪償って出てきたんや、家族やったら何を差し置いても迎えに行くんが筋やろが!」
どん兵衛(西田敏行):「…………」
組長:「そんな事も出来んと何が師匠や、やっぱりあかん、お前とは今日限りや」
小春(銀粉蝶):「そんな……今さっき水に流すって言ったばっかりでしょ?」
どん兵衛:「……俺だって迎えに行きたかったよ」
組長:「なんやて?」
どん兵衛:「俺だって笑顔で迎えたかったよ!今だって行きたいよ、そこに座ってたんだよ、三年前まで、そこに座って一緒に笑って、ご飯食べてたんですよ……なんでいないの?あんたのせいだろ、あんたらヤクザがウチの小虎をね、可愛い弟子を下らない争い事に巻き込んだんでしょう!だからいないんでしょう」
組長:「……」
どん兵衛:「いくら家族だと思っても……家族じゃないから、逢いたい時に逢えないから……だから辛いんですよ」

Story05_01 ……脚本単体で読んでも泣けてくる最終回「子別れ」の、西田敏行がみごとな演技を見せた場面。ううう泣ける。疑似家族である師匠と弟子だからこそ、家族の愛をまったく知らないで育った小虎へ無条件に愛情をそそぎこめる設定。宮藤官九郎の、間違いなく最高傑作であることがこの脚本集で再確認できる。

 この本には、各回のネタになった落語も掲載されていて趣深い。高校時代に興津要の著作で(講談社文庫だったかなあ)古典落語に耽溺した身からすると、花色木綿のオチなんかは懐かしかった。先日、三遊亭圓生の芸談を読んでいて気づいたのだが、『師匠が遊郭の女郎との心中に失敗した』明治生まれの圓生のような、落語の世界と地続きな人ならともかく、若い落語家にとって古典を自分のものにするのは至難の業なのだと思う。だから自分なりのアレンジが必要になり、その工夫がもうひとつの芸を生み出す。伝統の継承。宮藤官九郎が今回やりとげたのも、そうした芸の最新版であることもまた、納得させられたのだ。さあ今度はDVDだ!

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