事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

日本の警察 その14 交通警察

2008-01-02 | 日本の警察

Carranger3 その13「マル暴」はこちら

交通違反については「この1冊」で既に「My交通違反・My交通事故」という不穏当な特集を組んでいる。今回は「日本の警察」シリーズの一環として、取り締まる側の事情を調べてみよう。

 一年のなかで、わたしたちドライバーが慎重になった方がいい時期は以下の三つ。

①春と秋の交通安全運動期間

月末

年度末


 交通安全運動期間中は文句なし。テントをはり、のぼりを立て、警察の威信にかけて違反の摘発に血道をあげている。それでは月末や年度末はなぜ?

 答は「ノルマ」「歳入確保」だ。

このシリーズの最終回あたりでやろうと思っているのは、警察というのはとにかく上下関係が厳しく、上の言うことには絶対服従の傾向があること。そして警察署長たちは“他の署に負けないように”取締り件数の目標をかかげて署員にハッパをかける。で、署長の言うことは絶対だから署員は渋々出かけることになる。

 しかもこの目標は月ごとに「駐車違反○件」「速度違反○件」「信号無視○件」と違反の種類ごとに定められているとか。未達となれば翌月に上乗せされる署もあるというからおそろしい。こうなると月末や年度末があぶない理由はわかりますね。ノルマ、という表現を使わなくても、封建社会の警察では「目標」すなわちノルマなのだろう。

Car もうひとつ「歳入確保」はこんな理屈。違反者が納めた反則金は、まず歳入として警察庁に集められる。そこから総務省にわたり、地方交付金として各自治体に交付される。自治体はその交付金で標識や信号機、カーブミラーなどを整備するルートになっている。そして、この歳入はおそろしく細かく予算化されているのだそうだ。それだけでなく、前年度の取締り実績が翌年度の警察予算確保のための実績として評価される仕組み。

 こりゃ、意地でも“歳入予定どおりに”違反を取り締まらなければならないわけだ。しかも、標識などを整備する会社が警察OBの天下りとなると……なんだかなあ。要するに、たとえこちらが安全運転をしても、警察の都合で引っぱられてしまうのではないかという事実は、わたしたちを激しくいらつかせるではないか。

その15「また交通警察」につづく。

※画像は、彼らもいちおう交通警察だろうか「戦う交通安全!」のフレーズが笑わせ、戦隊もので最低視聴率を更新した「激走戦隊カーレンジャー」。

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日本の警察 その13 マル暴「県警対組織暴力」

2008-01-02 | 日本の警察

その12「またまた公安」はこちら

Kenkeivssoshikiboryoku  映画に出てくる○暴(マルボー)とよばれる組織犯罪担当の刑事に共通しているのは、どっちが暴力団だかわかんねーぞ、と言いたくなるルックス。ワッパをかけて連行していく画像をみても、どっちが逮捕されてるんだか(笑)。

 特に東映の場合、やくざが主人公のときは菅原文太や松方弘樹が暴力団側を演じ、一転して警察側から描くとやくざが悪役連中によって演じられる【交代制】なので、どっちがどっちなのかはますますわかりにくい。

 しかし現実にもやっぱりマルボーと暴力団はそっくりなのだそうだ。現代の警察は市民警察を標榜しているからソフトな対応が求められているけれど、マルボーの場合はなにしろ相手が相手ですから(T_T)。

 先日、酒田警察署に児童が描いたポスターを持っていったんだけど、生活安全課でわたしを応対した少年係と「お客さんだよーっ!」と大声を出していたマルボーでは、これが同じ課の人間なのかと苦笑してしまうぐらい違ってました。

 さて、マルボーといえば例外なくドラマでは“腐敗する”ことになっている。これは彼らの捜査方法に由来すると考えられる。暴力団関係の事件が起こった際に、マルボーはまず【背景】を考察する。あの組のしのぎにこの組がからんでいて……という具合。要するにやくざ以上に組情報に精通しているわけ。そのために日ごろから関係者とコンタクトをとっているので、“転ぶ”機会は必然的に多くなる。

 しかも犯人逮捕より秩序の維持を優先する態度は公安と共通しているので(確かに、市民への被害を考えるとわからないでもない)暴力団との人間的貸し借りも日常的。借りが多くなれば、捜査情報の漏洩ぐらいは平気になってしまうかも。そうなれば向こうへの転職は近いわけだ。

Kenkei  でも、警察からやくざへの転職はつらいらしい。警察からは裏切り者あつかいだし、組の内部では心底信用してもらえず……そんな悲哀を、名脚本家笠原和夫がみごとに描いたのが「県警対組織暴力」。

 菅原文太が“昔気質”な刑事を演じ、秩序とはやくざ同士のバランスの均衡をとること、とばかりに暴走する。

 刑事になったのは「拳銃を撃てるのはやくざか警察だけ」だったから。彼を批判する教条主義的キャリアが梅宮辰夫。さっさとケツをまくって民間企業に逃げ込むあたり、さすが実録。

その14「交通警察」につづく。

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日本の警察 その12 またまた公安

2008-01-02 | 日本の警察

Nsystem  

その11「また公安」はこちら

 さて、一市民として平穏な生活をつづけるあなたも、公安の目を逃れて生きることはできない。もっともわかりやすい例がNシステムだろうか。

 本来は交通秩序維持のために設けられたはずの、あの自動車ナンバー自動読取装置は、一基1億円もする高額装置のくせに、全国津々浦々に設置されている。

 あ、この時点でオービスとまちがえている読者もいるかも。あれは自動速度違反取締装置ですからね。オービスは速度違反をしているクルマを選択して(一般道路では30km/h以上、高速道路では40km/h以上の速度超過)撮影するが、Nシステムはのべつまくなしにすべてのクルマのナンバーと運転席、助手席を撮影している。

 犯罪捜査に活躍していることはもちろんだけれど、公安がターゲットの生活習慣や旅行地を知るために利用しているの“かもしれない”。断定できないのは、目的外使用は絶対にしないし、データも保存していない建前だから。まあ、やってないわけがないわな。

 しかしこれはすごい話ではないだろうか。主要幹線を通るすべての自動車利用者を“犯罪予備軍”扱いしてデータ化しているのだ。確かに犯罪捜査で、特に広域捜査においてNシステムはかなり有効らしいが、しかし気味が悪くありませんか?常に、上から監視されているという思いは、公安にたいするイメージ同様、どうもざらつきを感じさせる。

 話はNシステムにとどまらない。たとえばあなたが、市民運動として

・産直運動、食品の安全行政の充実強化を求める運動

・大気汚染・リゾート開発、ゴミ問題への取り組み

・死刑廃止や人権擁護の取り組み

・いじめ・不登校問題

・日の丸・君が代反対

・弁護士による司法改革

……などに関わっていたとしたら、あなたは【調査対象】となっていることが考えられるのだ(「近畿公安調査局作成国内公安動向関係業務計画」による)。

 つまりこういうことだ。公安とは、1911年に警視庁の警視総監官房高等課から特別高等課を分離したことにはじまる、いわゆる特高警察の直系なのだと言える。わたしたちが気づかないところで、彼らの活動は今も静かに行われている……

その13「マル暴」につづく。

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日本の警察 その11 また公安

2008-01-02 | 日本の警察

Miyamotokennji

その10「公安」はこちら

さて、その公安の捜査方法の典型として“協力者”がある。

 『対象』である極左、極右、宗教団体のなかに、家庭的あるいは経済的に弱みがあり、同時に有能であると考えられる人間に対し、弱みにつけこんで(組織のなかで不遇であるとの不満に乗ずるなどして)仲間に引き入れる。

 露骨な情報提供などは最初は要求せず、人間関係の構築がまず行われる。たとえば対革マルなどの場合は、大学の生協に架空の会社の肩書きをでっちあげて潜入する。

 もっとも多く使われるのは美人局(つつもたせ)のように女性を提供してからめとる手法らしい。その女性も協力者なのかな。あるいは公務員なのか。協力者が組織内でステップアップするにつれて情報の価値は高まるわけなので、公安はほとんど献身するかのように協力者との関係を深めていく。協力者が亡くなったとき(自殺することも多い)、墓前で泣き崩れる公安関係者もいるそうだ。

 さて、問題はこの『対象』なんだけど、今にいたるも最大の存在は日本共産党。暴力革命路線をみずから否定し、カリスマだった宮本顕治の死亡記事すら赤旗の一面トップを飾らなかったなど、すっかり市民政党になっている(まあ、いろいろと問題はあるとはいえ)共産党の情報収集こそが公安の最大の仕事。すべての警察志望者が入学する警察学校において(ほぼ10%が途中で脱落していくらしい)、今でも徹底して行われるのが反共教育。時代おくれもいいところでしょう?もちろん末端の職員は共産党がいまさら暴力革命に走るとは誰も思っていないけれど、予算獲得のために上層部は危機感を今でもあおりつづけているのだ。なんだかなあ。

Shokowithpolice  だから常に解体候補№1だった公安調査庁(いまは社会保険庁がトップだろうが)にとって、オウム真理教や北朝鮮拉致問題は、むしろ「首がつながった」と喜ぶ事態だったと思う。実際、喜んでいたそうだ(T_T)。

 まあ、対象のなかには『労働組合』ってのもあるんだけど、これだけ長い間組合の役員をやってると、こりゃ息子と娘は警察には就職できそうにない(^o^)。

 さて、オレと違ってみなさんは“まっとうな市民”だから公安とは無縁な生活を送っていると?とーんでもない。実は……以下次号「またまた公安」につづく。

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日本の警察 その10 公安

2008-01-02 | 日本の警察

20060707koukakukidoutai

その9「警察庁から来た男」はこちら

 公安。このことばをネットにのせただけでざらついた気分になる。どこかで、国家権力がこのことばを常に検索しているのではないかと。盗聴は彼らの得意技だし、ネットの検索ぐらいは確実にやっていそうだ。

わたしたちが公安の存在を意識するのは、例外なく彼らが不祥事をおこしたとき。“その存在がオモテに出てくる”こと自体が彼らにとって一種の敗北。

 なにしろ印象悪すぎ。彼らを映像で見ることができるのは、たとえば「A」。おなじみ森達也がオウム真理教信者の日常を追ったこのドキュメンタリーでは、路上で信者に接触してもいないのに、中年の捜査官はつき倒されたふりをして大げさに痛がってみせる。転び公妨という手法だ。冗談のようだが、ほんとにやってるんですよ。

 あるいはまたしても「踊る大捜査線」。大杉漣が演じた公安部の捜査官は青島に「あんたらイメージ悪いよぉ」と軽口を叩かれながらも決して笑みをうかべたりはしない。「攻殻機動隊」の公安9課も、笑ってる場合じゃない職場だが。

 公安、と一口に言っても、その所属はさまざまだ。全国の自治体警察には警備部があり、そのなかに公安は内包されている。ひとり警視庁だけが公安部として「部」あつかいなのは前にお知らせしたとおり。首都の治安維持が重い任務だから、ということになっている。実は強大な権力(と金)をもっているのだけれど。

 他にも「内閣調査室」「公安調査庁」などがあり(後者は朝鮮総連がらみでとてつもなく“オモテに出て”しまった)お互いが微妙な関係を保ちながら捜査を続けている。

 しかしその捜査方法なるものがすごいのである。刑事警察は、犯人を文字通り“捜す”のが捜査だが、公安の場合は「目星をつけて」「徹底的に張りつく」、いわゆる見込み捜査が主流なのだ。犯人逮捕が優先事項ではない、というか。こりゃあどう考えてもお互い相容れるわけがない。お互いが、お互いを軽蔑しあっている理由がこんなところでも理解できる。

 出世は刑事より公安の方が早いと言われているが、実際には公安のストレスは相当のものらしい……以下次号「また公安」につづく。

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日本の警察 その9 「警察庁から来た男」

2008-01-02 | 日本の警察

Joekeisatsutyo  「うたう警官」は、この稲葉事件に象徴される北海道警の腐敗を背景にしている。

 腐敗だけでなく、その腐敗が『同じ部署に長い間在職したことが原因だ』として職員の能力・経験を無視して強引な人事異動を行った混乱もまた、このすぐれた警察小説シリーズ(「うたう警官」「制服捜査」「警察庁から来た男」)をつらぬくテーマになっている。

 さて、「うたう~」と「警察庁~」の共通する主人公は、単純に異動させればいいと考えた上層部に不満を抱く刑事、佐伯。

 彼は人身売買にからむおとり捜査にかり出された経験があった。佐伯はアパートの一室で変死している婦人警官をめぐる捜査の過程で、稲葉事件(名はさすがに変えてある)に関係したとされる津久井刑事が犯人とされ、事実上の射殺命令が出たことに疑問を抱く。津久井は、佐伯のパートナーとしておとり捜査に加わっていたのだ。

 あいつが、犯人であるはずがない。そして判明したのは、津久井が翌日、道議会百条委員会で証言する(=うたう)ことになっている事実だった……

 警察官という職業が変わっているのは、仕事の一環として格闘技の鍛錬を日々続けているということだ。自衛隊や、一部のスポーツ選手をのぞいてこんな職業は他にない。

 その結果どうなるか。
 ほとんどの警察官が、柔道の寝技のやりすぎで“耳がつぶれている”というのだ。ほんとか?(笑)

 だから佐伯と津久井がおとり捜査官としてリストアップされたのは、警察官には珍しく彼らの耳がつぶれていなかったから、という設定。

Joeseifuku  笑ってしまうような理由だが、これ、マジなのだと思う。佐々木のバックには数多くのディープ・スロート(内部情報提供者)がいるらしく、作品に厚みを与えている。

 つまり、彼らディープ・スロートたちも、道警に絶望し、あるいは立ち直ってほしくて北海道在住の作家である佐々木に“うたって”いるのである。その意味で「うたう警官」はみごとなタイトルなのだけれど、文庫化にあたって「笑う警官」に改題されたのは、いったいどうしてだったのかなあ。

※ネットで検索して判明。版元の角川春樹が、「うたう警官」ではポピュラリティを得にくいと判断したからとか。春樹が角川書店の社長のときに、同タイトルのマルティン・ベックシリーズ(全部読みましたぁ!)をヒットさせたことも遠因だと作者本人が語っている。それに、佐々木に「マルティン・ベックシリーズみたいな小説を書きませんか」と申し出たのはなんと角川春樹だったのだ。これはびっくり。

その10「公安」につづく。

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日本の警察 その8 「うたう警官」(笑う警官)

2008-01-02 | 日本の警察

Laughingpoliceman 謹賀新年。で、ものすごく久しぶりに「日本の警察」シリーズを。
警察小説が豊潤な2007年をふりかえることになりそう。

 今野敏(「隠蔽捜査」「ベイエリア分署」シリーズ)は、心情的に警察擁護の立場をとっているので、多少の捜査の行き過ぎは仕方がないという描き方になっている。

同時に、マスコミへの嫌悪もあからさまで、「一日早くスクープをものにすることに何の意味がある」と、おそらくは同じ警察小説の書き手である新聞記者出身の横山秀夫に冷笑をあびせている。結局は商売人であるマスコミに期待なんかする方が間違っている、というわけだ。わたしもスクープ合戦には懐疑的だけれど、そこまで言うかなあ。

 警察からネタをもらうために、夜討ち朝駆けで記者が職員の自宅までおしかける悪習は、逆に警察の暗部に目をつぶることで“貸しをつくる”土壌を生んでしまった。だから警察の不祥事の多くは内部告発でしか表に出ない結果になっている。組織の情報を公開する(うたう)ことが、警察官にとって最も忌むべき行為になっているのは、それだけ内部が腐っている証拠でもある。

 今回とりあげる佐々木譲著「うたう警官」は、北海道警を舞台にした「稲葉事件」と呼ばれる不祥事がモデルになっている。その事件をネットからひっぱると……

Inaba 2002年7月、道警の幹部警察官である稲葉圭昭(当時警部)が覚醒剤使用、営利目的所持(密売容疑)、拳銃不法所持で逮捕された事件のこと。

稲葉被告は当時、警察官の職にありながら、ロシア製の短銃や100グラムもの覚せい剤を不法に所持していたとして逮捕。北海道警察本部の前代未聞の不祥事として大々的に報道された。

続いて発生した8月17日の飲酒運転による交通事故の車中には、稲葉被告と交際していたとされる道警銃器対策課の女性巡査部長と、稲葉容疑者の長男(元警察官)、そして元暴力団組員が同乗していたことが発覚。後にこの女性巡査部長の自宅からも、覚せい剤の吸引用パイプが押収されている。

稲葉被告を逮捕に追い込む供述をした人物は8月29日、札幌拘置所内で謎の“自殺”。そのおよそ1カ月前には、監察官室での取調べを受けていた稲葉被告の元上司も、札幌市南区の公園内トイレで首を吊って自ら死をとげている。

こうした一連の事件で、世間から疑惑の的となっているのが、一部の警察官と暴力団との“黒い交際”。とりわけ稲葉元警部の過去の捜査実績には、覚せい剤やけん銃だけを押収して逮捕者を出さない、いわゆる“クビ無し”や、「ヤラセ捜査」疑惑が取り沙汰されている。
そして2004年の11月30日に服役中の稲葉は道警の裏金事情、裏金捻出システムを札幌の弁護士に暴露したのである。

……ここから、北海道警の裏金問題が噴出する。以下次号「警察庁から来た男」につづく。

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