事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

THE LAST SAMURAI その2

2008-01-30 | 洋画

Samurai02  前号繰越。さて、その渡辺謙。ゴールデングローブ賞にノミネートされたし、アカデミー賞の助演男優賞まで狙えるのではないかとまで言われている(残念な結果にはなったが)。さすがに、みごとなサムライぶり。陰鬱な保守主義者の表情だけでなく、そこはかとなくユーモアまで漂わせている。つまり、ハリウッドのなかでも、いつもの渡辺謙なのだ。これは驚異。

 なぜ、そんなことが驚きなのかというと、わたしは「ラストサムライ」を観ながら、また悪い癖が出て別の映画を思い浮かべてしまっていたのだ。日本の俳優がハリウッドのルールに振り回された映画……言うまでもなく「ブラックレイン」(リドリー・スコット監督)である。

 この映画で日本のやくざサトー役を演じた松田優作は、撮影中に膀胱癌が発症していたにもかかわらず、鬼気迫る演技でハリウッドの注目を浴び、世界に羽ばたこうとしたその瞬間に亡くなってしまった……ことになっている。優作のファンであるわたしは、しかし「ブラックレイン」における彼の、エキセントリックに目をむきだし、マイケル・ダグラスを喰ってやろうとした演技を、なんか違うんじゃないかと感じていたのだ。「探偵物語」(テレビの方のヤツね)や「大都会PARTⅡ」で見せた軽い演技こそ彼の本領だから、そっちでやってくれと無理を言うつもりはない。でも、「得体の知れない日本人」を、コンセプト丸出しで熱演する松田優作に、「ああハリウッドはただの怪物が欲しかっただけなのかな」と、少し寂しくも思ったのである。

Sato  優作がミスキャストだったとまで主張するわけではないが、サトー役のオーディションを受けた俳優は4人。松田優作、萩原健一、根津甚八、そして小林薫だった。彼らのこの役に対する情熱はすさまじく、ほとんどテンパった状態でのオーディションになったらしい。しかし、小林薫はわたしの好みではないけれど、ひょっとしたらヤンキーの刑事であるマイケル・ダグラスを、軽く冷笑するサトー像を作り上げてくれたのかも知れないと思ったりもする。そうなっていたら、ハリウッドにおける日本人俳優のポジションも、今とは違った形になっていたのではないかと……

 しかし今回の渡辺謙の「天と地と」の無念を晴らすかのような(実際、彼は白血病で降板したあの映画へのリベンジだと考えていたらしい)好演で、日本が、単にハリウッドに奉仕する市場だけの存在から脱却できるのかもしれない。あ、また続きます

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THE LAST SAMURAI その1

2008-01-30 | 洋画

Thelastsamurai  米軍のイラク攻撃を憂い、自衛隊派遣に異を唱える情宣を午前1時に書記局に送ったその日に「ラストサムライ」。誇りのために無用な戦いに突き進む最後の侍たちの映画。組合の支部長がこんな映画で泣いちゃいけない(笑)、なんて意地を張りながらも、実は3回くらい涙が流れてしまった。

 娯楽映画として、まずは一級品。トム・クルーズについては、俳優として以前に、製作者としてまず優秀だと思っている。いい意味で商売人。ビジネスと芸術性の融合に果敢にチャレンジしているし、くせの強い監督と次々に組み、それなりの成果を上げているんだから、映画人として業界の評価も高いだろう。なにしろ毎日毎日自宅で映画を見まくってるってんだから狂いっぷりも板についている。ニコール・キッドマンを捨て、ペネロペ・クルスに走った経緯から、家庭人として大嫌いという読者もいるようだが。

 そのセンスの良さは、この映画でも十分いかされている。このご時世に、いったい誰がわざわざ自分の金を使って「武士道」なんて得体の知れないものを映画化したいと思うだろう。そして驚くことにこの無謀な試みは質的にも興行的にも成功し、クルーズの名はまた上がることになった。

 それにしてもさすがハリウッド。【開港してまもない横浜の雑踏】こんな脚本にすればわずか1行にすぎないシーンが、やたらに威風堂々とそびえ立つフジヤマのもと、ディテールに徹底的にこだわって大規模に再現されている。サムライたちの集落の日本家屋の完璧さといい、日本の時代劇の箱庭のようなセットに慣れた目からみれば、資本の威力を思い知らされるというもの。だからこそ逆にわずかなミスをあげつらう向きもあるようだけれど、マコやジェームス繁田しか日系の俳優はいないのかっ!と歯がみしていた“変な日本”しか描けなかった時代からみれば、長足の進歩ではないか。インディアンの虐殺(これってベトナムのことも露骨にシンボライズしている)のトラウマに悩む主人公という設定といい、少しは異文化を尊重しようという機運がハリウッドにも定着して……ま、北米に次ぐ巨大なマーケットである日本を無視できない事情もあるんだろうけどさ。 

 さて、話題の渡辺謙なのだが……(長くなりそうだからPARTⅡへ)

※劇中に、未亡人役の小雪と、彼女の夫を殺したトムとのセックスシーンはない。このハリウッド娯楽映画方程式からの意図的な逸脱は正解。

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悪質な行為。

2008-01-30 | ニュース

勝手に昼休みずらし「一杯」、常習の高校教諭懲戒免職

Beer  大阪府立高校の男性教諭(50)が、2年半にわたって勤務時間中に飲酒していたことが分かり、府教委は19日、「公務員の職務専念義務に反し、信用を失う行為」として、懲戒免職にした。
 昼休み中などの飲酒が常習化していたうえ、同僚に見つからないよう、勝手に昼食時間をずらしていたといい、府教委は「あまりに計画的で悪質」とあきれている。
 府教委によると、教諭は園芸科担当。2001年6月ごろ、昼休み中に近くの中華料理店で、昼食を取りながらビールを飲んだが、その際は店内に同僚がいたため、以後は昼休み以外に週1、2回ずつ、午前中の授業の空き時間や午後の授業がない日に同店などで飲酒していた。飲むのはビール大瓶1本と決めており、最近は注文しなくてもビールが出されていたという。
 昨年11月に投書が寄せられ、府教委が調査。教諭は「酒に強い自分にとってビールは酒ではないので、校内でなければ、飲んでもいいと思った。授業前には飲んでおらず、処分は不服だ」と話しているという。
(2004/1/19/23:48 読売新聞)

 これはもう誰が読んでも裏がある事件。飲酒に関して寛容きわまりない日本において、しかもあの大阪で(笑)昼食時にビールを飲んでいたぐらいで懲戒免職だよ。まあ、さまざまな小細工をかましているし、“注文しなくてもビールが出”てくる(笑)ぐらいだから確かに悪質ではあるけど。

 朝日はもっと微細に描写していて、「同僚と目があって(1回目は)飲むのをひかえた」なんてことまで載っている。
 いったいこれ、誰のリークで発覚し、誰がニュースソースになっているんだろう。おそらくは同一人物なんだろうが、こんなに大きな記事になってしまったのは……

・その高校内の人間関係が複雑に入り組んでいて、この教諭が何らかの血祭りにあげられた。ニュースが詳細なのは対立派から数多くのチクリがあったから。
あるいは
・この園芸科の教諭は正真正銘の札付きで、飲酒以外にもあまたの悪行を重ねていたためにこんな始末になった。

……どっちも正解かもしれない。しかし量刑の重さは意外なほどだし、ニュースバリューに比して記事がでかいのは、近年の公務員憎悪が背景にある以上のものが感じられる。肌触りのよくない、いやな記事だ。

Beer2  まあそれにしたって“酒に強い自分にとってビールは酒ではないので”はいいよね。自動車通勤者が少なかった昔は、小中学校にも授業が終われば机の引き出しからポケット瓶を取り出して勤務時間中から口に含むような豪傑も多かったというし(年輩者にいわせると、宿直制度の存在がその辺をルーズにさせていたらしい)、考えてみればフランス人なんかランチでワイン飲んでるじゃん!

……なんていう理屈が通る時代でもなし、か。でもさー、タバコは吸えねー酒も飲めねーじゃあ、学校なんてところがやってられるかってんだよなぁ(笑)。
 さて、半分冗談はともかく(半分は本気かよ)、警告のために唐沢俊一本人提供による飲酒トリビアをどうぞ。

女房を質においても  
  唐沢俊一 2003/10/16 (木) 10:34
・肝臓の代謝能力は、夜に最も大きくなる。朝酒が夜の酒に比べ酔いやすいのはこのため。
・昔の酒はアルコール度数が強くなかったので、酔うにはかなりの量を飲む必要があった。白楽天は、能率的に酔っぱらうために朝酒を勧めている。

身体にもよくなかったんだね。ちなみにわたくし、退職後のモットーはもう決まっています。【午後5時になるまでは、絶対にお酒を飲まないこと】
自信ねー。

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