ミスター・ピーノの【見るが勝ち通信】その105
私の知り合いであるミスター・ピーノさんは 海外滞在が長く、
外国語にもご堪能な方ですが、 一週間程度で
物凄い量のものを 見る、読む、聴く。
私も見習いたいと思っております。
ピーノさんからいただいているメールマガジンを
ご本人の承諾を得てこのブログに転載しているものであります。
読者の皆様、感想等ございましたら
私が責任を持ってお伝えしますので
ぜひコメント欄にお願いします。
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◇週末は、京都宇治市の平等院に行ってきました。 1052年(960年前)に、
藤原頼通が父(藤原道長)から引き継いだ別荘を寺院にしたもので一般的
には10円玉の「表」のデザインとして有名です。 「鳳凰堂」の阿弥陀如来像
を間近で見るには、時間予約制で別途拝観料(300円)が必要になります。
3mほどある阿弥陀如来像と内部に描かれた絵の説明が担当の女性から
約15分あり、たった20分の拝観ですが見応え充分でした。 山本藤吉本店
の生茶ゼリィ「抹茶」は凍らせた竹に入った夏向けスイーツ(720円)で美味。
http://www.tokichi.jp/tenpo/cafe2.php
◇残暑の厳しい京都で、中学と高校で一緒だったTさん(旧姓)と能楽師の
ご主人と夫婦二組、4人でイタリア料理。 ほぼ1年半ぶりの会食で、今回は
赤ワインのボトルを2本持ち込み、シェフのおすすめコースを堪能。 スペイン
で行なわれた能公演の際、打合せの下見と本公演のときに日本大使館が
用意した料理とワインの質の違いの話で爆笑になりました。二次会は前回
と同じ祇園のお茶屋さんに行き、舞妓はんの姿を眺めながら店のオーナー
兼女将さんから「the Center of 祇園」に関する興味深いエピソードを拝聴。
http://www.smn-tisaneria-kyoto.jp/
◇山下達郎のバックバンドで、1980年代から'90年代にかけてドラムを叩い
ていた青山純の姿を映画で見て、高校時代のTを思い出しました。幼いころ
からバイオリンを習い、彼の所属していたバンドのドラムが青山クン、ベース
が中原クン(ポータブル・ロック、ヤプーズ)で、杉並公会堂隣の新星堂本社
に当時貸しスタジオがあり、リハーサル現場を見に行きました。 Tはその後、
「ふきのとう」や「喜多郎」のバック・ミュージシャンとして、全国ツアーに参加。
名古屋公演終了後の打ち上げの飲み会に何度か紛れ込みましたっけ(笑)
◇先週チラッと触れた糸井重里さんの書籍は、「3.11」で被災した日本製紙
石巻工場でつくられた紙が使われており日本製紙といえば、この間名古屋
から大阪に転勤されたTさんが勤める会社で、彼とは毎月一度中日新聞社
主催の懇話会で、よく同じテーブル席の隣同士でした。 自社の「かわら版」
に、入手したアナログ・レコードプレーヤーを紹介しており、Miles DavisのLP
『COOKIN'』(オリジナル版)を置き、自分がさりげなく大阪のビッグバンドの
トランペッターであることを暗示し携帯アドレスはY社製モデル名を転用(笑)
【ダンス】
■コンドルズ 「Knockin' on Heaven's Door」(焼津文化会館、12/08/31
★★★★) 1年ぶりの焼津公演で 3月の東京公演以来半年で新作を披露。
俳優業で忙しい小林顕作(コントの脚本担当)は映像で出演。 15名による、
9個のドアを使ったダンスとコントでスタート。 スクリーンに焼津港を写し出し、
地元特産の「黒はんぺん」を使ったり、自殺志願の4人組による間の抜けた
ズサンな強盗計画とその顚末、人形劇でのラップ・トリオとさまざまな物語。
主宰する近藤良平のソロは、両手を羽ばたくように大きく広げ、跳躍と弧を
描くダンスが印象的で、ラストも素晴らしく、5列目の良い席でSさんに感謝!
http://www.condors.jp/
【映画】
■最強のふたり <原題 Intouchables>(★★★★☆)
事故で全身麻痺となった富豪(フランソワ・クリュゼ)と介護役として雇われ
た黒人青年(オマール・シー)との交流を描いた内容で実話がベースです。
主役のF・クリュゼが笑うとダスティン・ホフマンにチラッと似ていて、階層も
人種も音楽の好みも異なる二人の会話が可笑しく、お互いの家族の事情
を語り合い、使用人の同僚たちともジョークを通して徐々に親しくなります。
フランス映画の良質な面(対話、ジョーク、室内楽、カフェ等)が盛り込まれ、
見終わったあとのほのぼの感が、しばらくのあいだ心に残る、そんな映画。
公式HP ⇒ http://saikyo-2.gaga.ne.jp/
■あなたへ (★★★☆)
高倉健の 6年ぶり主演作。亡き妻(田中裕子)の遺言で、散骨のため富山
から長崎まで、ワゴンカーで向かうロード・ムービー。 旅の途中で知り合う
自称元教師(ビートたけし)と山頭火の話になり、イカ飯の販売員(草剛、
佐藤浩市)を手伝い、漁港の食堂で働く母と娘(余貴美子、綾瀬はるか)に
起きた出来事に触れ、それが結末のオチになります。 この映画では語られ
なかった多くのことが、すべて観客の想像に委ねられており、そんななかで
大滝秀治の存在感ある漁師の演技には圧倒され、2人の会話が見所です。
公式HP ⇒ http://www.anatae.jp/
■闇金ウシジマくん (★★★)
真鍋昌平のコミックを映画化。 「10日で5割(トゴ)」の利息を取る悪徳金融
業者の社長丑嶋(山田孝之)の厳しい取立てと、イベントサークルの主催者
としてビッグになろうとする“チャラ男”(林遣都)の姿と、母親の借金の利息
返済のため、気軽なバイトとして出会い系カフェで働き始める娘(大島優子)
の三者三様。 表ざたにはなりにくいエンコウや恐喝現場を再現しています。
警察による検挙と、立件・逮捕に向けた取調べも、結局は中途半端なまま、
ズル賢い悪い奴らだけが生き延びるという、まさに反面教師的結末ですね。
公式HP ⇒ http://ymkn-ushijima-movie.com/
【Book】
■平川克美 「移行期的乱世の思想」(PHP研究所、12/05/01 ★★★★)
『移行期的混乱』(筑摩、2010)に続き、わたしたちが意図してきたこととは
別のかたちの結果(現在)に対してどのような態度をとりうるのかがテーマ。
西欧先進国におけるデフレ現象と、アメリカ的収奪システムの破綻の中で、
日本には守るべき貴重な技術があることを知る必要があると指摘。 そして、
縮減思考や縮減モデルが蔓延し始めており、そこからどうすれば回復する
のかは、それをみる人(観客)がそこに加担するしかないと主張しています。
これから小さなコミュニティが起こり、「家族」がひとつのキーになると予測。
http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-80387-6
移行期的乱世の思考 | |
平川 克美 | |
PHP研究所 |
■小沢昭一 「ラジオのこころ」(文春新書、12/08/20 ★★★☆)
TBSラジオの番組で語った10篇を収録。 ラジオから彼の声を生で聞くのと、
文字となり文章で読むのとでは、おそらく、細かいニュアンスが伝わらない
ような気もしながら読み始めましたが、その点は全く問題なし。AKB48から
「秋葉原」、なでしこジャパンと「大和撫子」、「むかし婦人会、いま女子会」、
「缶詰」と作家の「館詰め」、「暖簾(のれん)」の考察から「男子厨房に入る」、
「母乳」から「お墓」、宮坂さんを訪ねて長野県岡谷市への旅レポート。著者
の口ぐせは「ボケが進んで」だそうで読むうちに彼の言葉の世界にドップリ。
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166608720
ラジオのこころ (文春新書) | |
小沢 昭一 | |
文藝春秋 |
【オマケ、今週の気になった言葉】
■この世には色んな 「ヘヴン」があります。 十代の頃に夢見た「ヘヴン」。
違う国の違う文化の人が見てる「ヘヴン」。打ちのめされた後に見えてくる
「ヘヴン」。誰かと一緒に見る「ヘヴン」。犬の散歩をしながら見る「ヘヴン」。
でも、そのどれもが結局は、立ち止まったり、回り道をしたりしながら、たっ
たひとつの、同じ幸福に向かっているような気がします。
(by 近藤良平 「Knockin' on Heaven's Door」公演配布チラシより)
「夢」「幻想」「あこがれ」「希望」の意味を含む「ヘヴンHeaven」という考えは、
『青い鳥』(メーテルリンク作、童話劇)ではありませんが、それは追い探し
求めるものではなくて、日常の見過ごされがちな身近な生活のなかにあり、
それらはすべてひとつの同じ幸福に向かっている、という近藤さんの言葉。
久しぶりの再会・会食は、近況報告を通して、お互いの現在の立ち位置を
確認しているようなところがあります。 日常のなかの非日常の時間であり、
年に数回あるかないかのことですが、とても懐かしく楽しいほんのひととき。
お互い連絡をしょっちゅう取り合っているわけではないのに、たまに会うと、
決して後ろを振り返るわけではなく、年を重ねた現在を冷静に受け止めて、
自然な会話になります。長い付き合いになると裏も表も分かった上で見栄
を張ることもなくなり、ただただ飲んで食べて語り合うのが「現世のヘヴン」。
では。