ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

猛暑の劔岳:猛暑!

2018年10月16日 22時40分58秒 | Weblog
AⅡの南壁を過ぎても急斜面の雪渓は続いており、しばらくはフェイスインでの下降を強いられた。
喉も渇く。
それもかなりの乾きだった。
頻繁にハイドレーションで水分補給はするが、生ぬるい水では「焼け石に水」の様な感じにさへ思える程体内は火照っていた。
それでもまだ緊張感の方が暑さを上回っていた。

時折ピッケルで雪面を掘り、比較的綺麗な雪の塊を手ですくっては口にした。
とにかくこの氷のような冷たさが嬉しい。
内部から体を冷やしてくれるようだった。

そんなことを繰り返しながら下降を続ける。
「いつかはこの斜度も終わる。それまで頑張ろう・・・」
そう自分に言い聞かせ三点支持でゆっくりと下りた。

ルンゼのポイントがだいぶ近づいてきたあたり、「もう大丈夫だろう」と判断しフェイスアウトの体勢で下山した。
体への負担がかなり減り、スピードもアップ。
そして何よりも緊張感からの解放だった。


この先の岩場で小休止を取ることにした。
早朝4時にスタートし、ここまで行動時間は10時間近くが経っている。
想定した行動時間は12時間だが、このままでは13時間、いやそれ以上の時間を要してしまうかも知れない。
焦りはあったが、これから剱沢雪渓の登りが待っている。
最後の最後できつい登りがあるだけに体力は温存しておくべきだと思い、あくまでも一定のペースで下山を続けた。


下から見上げた平蔵谷雪渓。
見上げただけではその斜度のきつさは分からない。

岩の上にへたり込むように座った。
水分、塩分、カロリーを摂取するが、気休め程度にしか思えない程体がきつかった。


だが、まだ一服するだけの余裕は残っていた。

岩の上に寝ころんでの一服。
「ここまでくればもう難所は終わったね。あとはちょっとダラダラと下りてダラダラと登って終わりかな。」
「腹減りました。それにこの暑さには本当に参りますよ。」

この時はお互い笑っていたが、これからまだまだ雪渓は続く。
太陽の照り返しが厳しい状況下で、これ以上体を干されたら果たして・・・。

「さぁて、平蔵の出会いまで行くか」
覇気のない声だったが、難所を越えたという安堵感だけは間違いなくあった。


平蔵谷と剱沢雪渓との合流地点。通称「平蔵の出会い」。

予定ではあと2時間程でテン場まで着く。