ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
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猛暑の劔岳:AⅢからAⅡにかけての急斜面(2)

2018年10月15日 00時56分59秒 | Weblog
劔岳南壁のAⅢを過ぎたあたりだっとと思う。
あのシュルンドがパックリと口を開けて待ち受けていた。

ピッケル2本を確実に雪面に深く刺し、それを滑落防止対策として身を乗り出しシュルンドを覗いてみた。
予想していた以上のオーバーハング状態だった。
ここを下る方法は3つ。
1 ザイルをピッケルで固定し、一人が更にそのザイルを持ちテンションをかけ、もう一人が下まで下降する。

2 オーバーハング状態の上部の角をピッケルでほぼ直角状態になるまで削り取り、Wアックスとキックステップで垂直の雪壁を下る。

3 シュルンドの左右どちらかの端に通れそうなポイントがあればそこを利用して通過する。

できれば3の方法が最も楽であり安全だ。

先ずは平蔵の頭側(向かって右)から探るが、直射日光がまともに当たっている部分でもあり、表面上は通れそうだったが、内部に空洞がある可能性が高かった。
更には暖められた岩肌との隙間がもう一つのシュルンドになっている可能性も見過ごせなかった。
「いや、こっち側はかなり危険だと思う。南壁側を探そう。」
そう言って本峰の南壁側へと移動しルートを探した。

幸いなことに幅数メートルだけシュルンドになっていないポイントがあり「ここなら・・・」と思えた。
だが雪面の内部までは分からない。
「賭け」の様な感じもしたが、自分が通過してみることにした。
「落ちたらヘルプだよ(笑)」
と笑って言ったが、内心穏やかではなかった。

一歩一歩ゆっくりと一気に全体重を掛けないように下った。
緊張はあったが距離は10メートルにも満たない。
半分程通過したところで「これなら行けそうかな・・・」と思った。
AM君にはシュルンドの手前で待機してもらい、自分が通過できたら後から続くように言った。

何とか無事通過。
「ふ~っ」思わず大きく息を吐いた。


AM君にGOサインを出し南壁側まで移動させた。


シュルンドのすぐ上をトラバースするAM君。
ここはゆっくりと急がず移動するに限る。
もしシュルンドに落ちれば、その下は岩の絨毯が待ち構えている。
骨折、打撲だけで済めばまだラッキーだろう。

ほどなく合流し、再び自分が先行して下った。


行動している時にはよく分からなかったが、こうして後から写真で見てみるとそれなりの斜度であることが分かる。


Wアックスとキックステップでの下降だと、やはり時間の割には距離が稼げなかった。
「くっそうー、なかなか(安全なポイントまで)着かないなぁ。」
ぼやきが出た。
それでも滑落するよりは安全を最優先すべき区間であることは分かっている。


AM君もゆっくりと下降を続けている。

今はある意味「我慢」の時。
AⅡあたりを過ぎればもう少し楽になる・・・はず。