ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

猛暑の劔岳:贅沢言ってたらきりがない

2018年08月13日 00時03分24秒 | Weblog
何ということだろうか。
7月早々に梅雨が明けてしまったではないか。

例年夏山に登るのは7月の最終週と決めていた。
理由は一つ、「山に登るなら梅雨明け十日」と昔から言われているからに他ならない。
これには根拠がある。
梅雨が明けるのは7月20日前後であり、その直後の十日間が最も天候が安定しているからだ。
夕立も殆ど無く、絶好の登山日和に恵まれる確立が極めて高い。
だが今年に限っては天候が全く読めない状況となってしまった。

「梅雨明けがこんなに早いんじゃ7月最終週なんて言ってもあてにできない。」
とは言え既に仕事のシフトも決まっており、今更変更はできない。
あとは天気の神様に祈るしかなかった。


さて、今年の劔岳は7月24日の仕事終了後に車で一路扇沢まで行き、いつもの車中泊。
25日は室堂からテン場までであり、実際のアタックは26日となっている。
いくつもの天気予報サイトで週間予報を確認したが、まずまずの天候に胸をなで下ろした。

扇沢の駐車場に着いたのが深夜の3時頃だったが、無料駐車場が比較的空いていたことに少々驚いた。
いつもはほぼ満車状態であるだけに、ラッキーというよりは拍子抜けである。


朝一番のバス(?)に乗り込みいざ室堂へ出発。
まだ眠い・・・。
でかいあくびが何度も出てしまった。
なにせ今日は緊張感のないテン場までの縦走だけに、「よっしゃ!」と気合いが入るはずもなかった。


黒部ダムの放水を見てもあくびが出るばかり。
情けないと思いつつも出るものは出てしまう。

まだ8時前だというのにダムの上を歩けばコンクリートの照り返しがきつかった。
「暑くなりそうだなぁ。雷鳥坂でバテそうだ。」
そんなことを考えながらケーブルカー、ロープウェイを乗り継ぎ、9時には室堂に到着した。

細かな登山計画書を提出し、表へと出た。
「暑っちぃ~!」
夏は暑くて当たり前であるが、その当たり前の暑さが今年に限っては半端ないものとなっている。


天然の湧き水をハイドレーションに入れ9時30分にターミナルを出発。
「どこか途中で朝飯を食べよう。」
AM君にそう言い、いつもの石畳の道を歩き始めた。

歩き始めてまだ5分も立たぬうちにもう汗が落ち始めた。
「こりゃ雷鳥坂は厳しくなるな・・・」
そう思っていると、なんとも可愛い子供達の声が聞こえてきた。
山を見ては「うわぁー」、花を見ては「きれー(綺麗)」。
そのはしゃぐ声に癒されながら歩く。

実はこの子供達、扇沢からずっと一緒であり、「可愛いなぁ」と思っていた子達である。
その子達の両親に承諾を得て、後ろ姿の写真を撮らせてもらった。


無辜な幼子の写真ほど愛らしいものはない。

「どこまで登るんですか?」
お父さんから聞かれ「今日はあの山の向こうのテント場まで行き、明日は劔岳を越える予定です。」
そう言って指さしたのはごく小さく見える「剱御前小舎」。
「え~っ、あの山を越えるんですか! その大きなリュックを背負って・・・」
登山をやらない人から見ればとんでもないことに思えるのだろう。
「まぁいつもの事ですから。写真撮らせていただきありがとうございました。おかげで癒されました。」
お礼を言いお辞儀をして分かれた。
子供達に向かい手を振ると、小さな手のひらを小さく振って応えてくれた。
「おっしゃ! 元気もらったかな♪」

すぐにミクリガ池へと到着した。

思っていた以上にまだ残雪があり、ホッとした。
ミクリガ温泉の建物には「ソフトクリーム」の旗が靡いている。
何とも魅惑的な文字にそそられたが下山まで我慢だ。

ほどなくして剱の姿が見えてきた。
「このあたりで飯を食べようか」
朝起きてから既に4時間近く過ぎてしまっているだけに腹が空いている。
おにぎりとパンだけの朝食だが、ハイドレーションの水はかなり冷たく乾いた喉に嬉しかった。


「今年も来たでぇ~!」

剱に登る回数はもう二桁となっている。
飽きない。
何度挑戦しても飽きのこない山だ。

それにしてもこの暑さ、何とかならないものだろうか・・・。
そりゃぁ贅沢言ってたらきりはない。
ないけど「ここまで・・・」と思わざるを得ない暑さは初めてかも知れない。
「まっ、降られるよりはいいけどなぁ。」

あくびは相変わらず出る。
次第に足元に高山植物が見え始めたが、それでも眠いものは眠かった。