沈まぬ太陽 後篇

2009年10月29日 00時05分00秒 | 沖縄現地情報

私は、昭和26年生まれだから、映画の舞台になっている昭和30年代の労働闘争は、実際に見ていないので、実感は湧かないが、「日航機御巣鷹山墜落」、「カネボウ会長(伊藤淳二氏)の日航の会長就任」、「その後の、度重なる日航のスキャンダル」などは、私でも良く知っている。

渡辺謙が演じる恩地元には、実在のモデルがいる事も、原作の連載時から耳にしていた。
モデルは、小倉實太郎氏で、アフリカ写真家としても有名な人らしい。
山崎豊子さんが、「大地の子」の執筆が終わり、気分を入れ替えるために、アフリカへ行った時のガイドとして、出会い小倉さんのあまりにもすごい人生を知り、小説のモデルとしてお願いしたらしい。

この映画を見て、ここでも、多くの政治家達と天下り官僚が、日航から、お金を絞り取っていたかが良く理解出来た。
伊藤淳二会長以前の会長はお飾りであり、社長は官僚の天下り。
航空業界の事は、会長も社長も何も知らない(ましてやビジネスも知らない人達)。
だから、当時の役員達が好き勝手をやっていた。
国営航空というプライドの高さも民間のような柔軟な体質ではなかった!
映画では、それを組合の委員長の渡辺謙が正しているような絵になっているが、それは、ままりにも組合を良く書き過ぎている。
あの当時の「国鉄」の組合のストや活動を知っているが、「日航」も似たり寄ったりだろう(日産の組合委員長が経営を牛耳っていて、後の経営危機まで陥った事も似たり寄ったり)。

▲<組合関係者が見たら泣くだろうカッコイイ組合委員長と副委員長>

歴代の社長と会長の名前を羅列する(初代から年代順、()内は前職)。
社長⇒柳田誠二郎(日銀副総裁)、松尾静麿(航空庁長官)、朝田静夫(運輸次官)、高木養根(副社長)、山地進(総務次官)、利光松男(副社長)、近藤晃(専務)、兼子勲(専務)、新町敏行(副社長)、西松遥(取締役)
会長⇒藤山愛一郎(日商)会頭、原邦造(旧三井財閥幹部)、植村甲午郎(経団連副会長)、伍堂輝雄(日経連専務理事)、松尾静麿(社長)、小林中(アラビア石油社長)、植村甲午郎(経団連名誉会長)、堀田庄三(住友銀行会長)、 花村仁八郎(経団連副会長)、伊藤淳二(鐘紡会長)、渡辺文夫(東京海上火災保険会長、山地進(副会長)、兼子勲(社長)。その他にも、西村雅彦演じるJALホテルの会長等々・・・。
そうそうたる、仕事の出来ない人達のオンパレード今日まで、最先端業界で競争が激しい業界で残れたのは、国が守っていたからだと思う(良い意味でも悪い意味でも)。

▲<事故以前の滑稽に描かれている経営陣達>

▲<第二組合を作り組合潰しを画策する経営陣。出世と交換で、とり込まれて行く行天四郎>

映画では、ソックリさんにしないで、映像はぼかしているが、本物は以下の通り。
加藤剛(中曽根首相)、小林稔持(金丸福総理)、小野武彦(橋本龍太郎運輸大臣)、品川徹(瀬島龍三)だ。

▲<首相室で、各人の思惑が交錯して行く>

▲<国会の場で、日航問題が野党から出る。それを仕掛けたのは答弁する運輸大臣。これで、日航会長の解任が決まり、恩地元の人生もまた変わって行く>

昭和の経済復興時の熱いパワー、日本が最も輝いていた時代。
それの裏側を山崎豊子さんは、この作品で描き切ったと思う。
物語の時代は1980年前後ですが、またもこの映画で、不毛の政財界が描かれている。
現代の日本と変わらないことに、日本の政財界のレベル(=国民のレベル)の低さに情けなさ感じる。
この点で、この作品の役割は十分果に果たせたと思う。


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