「膝上の前方の筋肉を使うような運動を、
まだもうちょっとできるな、少し物足りないな、という程度に、
できるだけ毎日したほうがいいですね」
昨日の帰り際の若先生の言葉である。
3日分を1度にやるよりは、1/3日分でもいいから毎日やるほうがいいらしい。
なるほど、言われて納得の理屈だ。
それでは、せっかく集中治療でよくなった血の巡りを少しでも維持するべく、まずは風呂上りにストレッチ。
――あれれ、前屈で胸が膝小僧につくよ! 昨日まで痛くてできなかったのに。
開脚して前屈はさすがに、いきなり床に胸がベッタリとはいかなかったものの、
長座して前屈ならラクラク。
拍子抜けするくらいすんなり腰が曲がる。
鍼ってマジですごいかも。
――人間のカラダって一体どこまで硬くなれるんだろ…
腰から上は首までガッチガチ、
腰から下は爪先までむくみっぱなし。
さすがにこの冬の寒さは、カラダに堪える。
てことで、鍼治療へGO!
本日は初めての若先生診療。
効いてる鍼は、悪いとこほどビリビリと痛みが走る。
「ここ、深いなぁー! ごめんねー、痛いけど、ここをなんとかしなくちゃねー…」
左肩と腰の集中治療。
最後の仕上げ、腰から脳天まで痛さが突き上げる。
と、目の前にチラチラッと星が瞬き、軽い吐き気とともにすぅっと視界に影がおりて来た。
――先生、ちょっと気分が悪いよぉ…
すぐさま足を上げて寝かされ、足元にヒーターを当てながらふくらはぎ辺りに鍼を打たれた。
「今日は少し刺激が強かったから、“気”が上にのぼっちゃって貧血が起きました。
いま、下のほうに誘導しましたから、このまま少し休んでいてくださいね。」
1~2分もすると、血の気が引いていた足元に、みるみる体温が戻り、あっという間に吐き気が治まった。
何もなかったみたいにスッキリして、軽くなった全身の体温は、家に帰りつくまでの寒風にも負けずに残っていた。
鍼灸道ってすごい。
おそるべし、中国四千年の歴史。
嵐から一夜明けて。
IWな仕事っぷりの人々を冷静に分析してみると、どうやら原因は2つあった。
一つ、物事を俯瞰できない
二つ、相手の立場を想像できない
業務フローや、直面している出来事の、全体を把握できない。
自分の仕事や動きが全体のストーリーの中のどこにあたるのか、自分のところまではどんなストーリーがあって、自分の後にはどんなストーリーが控えているのかを、知ることができない。
たとえて言えば「ド近眼」。
自分を客観的に見られない。
自分の言葉や行動が関わった人たちにどんな影響を与えるのか、自分がそうすることで自分以外に何が起こるだろうか、相手や全体に不都合が生じないだろうか、それは独りよがりでなく理にかなっていることだろうかと、推し量ることができない。
たとえて言えば「ひきこもり」。
「ド近眼」の「ひきこもり」が机を並べている。
中身を知らない人には、黙々と仕事してるように見えるのかもしれない。
中身を知る者にとっては、『各自が独り言を言っている集団』に過ぎない。
まともな組織の仕事に、そんな情景はありえないと思うが、何か間違ってるか。
大学本部の人事課に問い合わせをした。
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質問:特任教授の所属変更に伴う事務手続きについて
①現在学内の別部署に所属する特任教授を4月から本プログラムの特任教授として採用します。
②また、現在の本プログラム担当特任教授については4月以降、引き続き本プログラム担当特任教授ですが、他大学が本務となるため、勤務日が大幅に減る予定です。
これら2件の人事異動に伴い必要な一連の事務手続きを、具体的に教えてください。
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回答が来た。
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回答:
①H20年度雇用更新手続きが <URL> にありますので、そちらを参考に配置換の連絡票を研究科事務係へお送りください。
②勤務条件等が変更になりますので、勤務日、給与等の条件を確認して、継続雇用の連絡票を研究科事務係へお送りください。
ご不明のところがありましたら人事課任用係までご連絡ください。
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要は、自分で調べて、これだと思う書類作って出せ、と。
てゆっか、それが「ご不明」だから訊いてんだけどっ。
むかつきながら指定されたURLを開く。
「雇用の更新」と「勤務時間等変更」と「人事異動連絡表様式」(←メールと違う「表」の字だし!)という3つの項目がある。
それぞれのサイトから「連絡票」と思われるファイルをダウンロードしたら、6種類6ファイルあった。
項目により、ファイル名の頭が「H19」「H20」「H18」と異なる。
で、ファイルの中身は「H19」も「H20」も「H18」も同じ。
ただ、各々、フルタイムと短時間勤務とで2様式ずつあって、フルタイムのファイルには、人事の言う「配置換」の記入例がない。
――・・・・・・(ヒイラギ、無言の大噴火)
受話器を取り、久しぶりに吼えた。
――1つの手続きをするための書類がどれかを「具体的に」教えてと質問したら「ここにあります」と言われたサイトに、異なる6つの書類があって、そのうちどれを使えばいいのかまたいちいち質問しないと答えられないってゆうのは、一体全体どうゆう神経なのかっ。それが本来は人事課の事務職員がやるべき仕事を教職員にお願いする態度かっっっ!!
しばらくすると、人事課から泣きが入った研究科事務係からメールが来た。
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人事課任用係から連絡があり、新規雇用と勤務の変更があると伺いました。
新規雇用についての人事課からのメールを転送しますので、ご参照下さい。
どうぞよろしくお願いいたします。
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だ・か・ら。
いくら言葉遣いを丁寧にしたからって。
頭にくる原因になったメールとファイルを、そのままどっちゃり転送って。
なんかのイヤガラセかね?
久しぶりに晴れて紅白の梅もふっくらと咲いた静かなバレンタインデーの昼下がりにヒイラギの胸のうちで吹き荒れたIWの嵐。
でも逆鱗バロメータはまだ最高レベルに達してはいない。
てことは。
IWな仕事ばっかしてるみなさぁ~ん、災害予防は平時から心がけたほうがよいですよ~。
穏やかそーに見えて、実はヒイラギ、むかついた相手を社会的に抹殺した前科数犯ですから。
一日の締めくくりには、他人にもいい仕事をしてほしい。
いいかげんな気持でハンパな仕事されて、それこっちにフォワードするだけされて、とっとと定時退社されちゃった日には、わけもなくブルーな気持で家路につかなければならないのはこっちなんである。
言いたいことだけ言いっぱなしのメール送りつけてすぐいなくなっちゃった某大手旅行代理店の若ゾー君。
それってどうなの?
しかも「○○先生、△△先生、明日中に至急」という内容のメールが、なぜかヒイラギ宛て。
当事者たちが“CC”になってるって、どゆこと?
思わず「ちゃんと本人たちに宛てて送りなおしなさい」などと説教めいた返信を送る。
で、送ってからふと思ふ。
――なんで業者の新人教育までやってんだろ?
こういう仕事、なぜかこっちがヤな気分になるんだよな・・・。
あぁぁ、せっかくいい仕事してる人たちに協力してもらって、いい仕事で充実した一日だったのにな。
なんと言うても、仕事でポカやったときでんな。
ほんの数年前までは、どんなに激務だろうと、いくつ仕事を同時進行していようと、
「しまったっ! 忘れてたっ!!」
なんてことは皆無なのが当たり前、スーパーカンペキが売りだったのだが。
最近ちと調子っぱずれな仕事人ヒイラギ。
コレ次やんなきゃ、やんなきゃ、と頭の片隅に置いたまんま丸まる3週間。
そりゃイカンだろ、われながら。
「スーパー」も「カンペキ」も取れつつある仕事人ヒイラギのせめてものプライド。
言い訳はすまい。
4月から分別のしかたが劇的に変わる東京のゴミ。
区によって違うルールで分別することになる東京のゴミ。
でもルールの違う区から収拾して同じ焼却所で処理する東京のゴミ。
燃えるプラスチックとリサイクルするプラスチックと。
まったく同じプラスチックも、汚れの有る・無いで分別は違う。
でも行き先は結局同じ?
嗚呼、この春からは、仕事してる間だけじゃなく
家でゴミ出しする時間まで、
IWな毎日になるってことか。
ファン歴は軽く四半世紀を超える、忌野清志郎“完全復活祭”@日本武道館に、知人から招待された。
すずめ百までRCを忘れずというか、RCの魂百までというか、すぐに久しぶりに家に帰ったみたいにどの曲にも体が反応し、歌が唇をついて出てくる。
往年のKing of Rock'n Roll Band『RCサクセション』のオリジナルメンバーがドラムとギターでがっちり脇を固め、これまた往年のKing of Hard Rock Band『VowWow』からキーボードが、ホーンセクションには言わずもがなのBlueday Horns。何もかもが懐かしい。
さまざまな疑問を、憤りを、悲しみを、
そして喜びを、優しさを、溢れるばかりの愛を、
誰にも真似のできないあの声で力の限り歌いシャウトするキヨシロー。
これだけのバンドマンたちが、
日本武道館の客席を埋め尽くすだけのファンたちが、
このライブを企画し実現してくれたスタッフたちが、
そして何よりも一番近くにいるファミリーが、
キヨシローの闘病を案じ、応援し、復活を信じ、喜び、祝った。
みんなの胸にある気持はひとつ。
終盤、キーボードが静かに奏でるハーモニーにのせて、キヨシローが語り始める。
「いまこの武道館は平和です。
いまここにいるオレたちはみんな平和です。
それなのに、このサツバツとした世界からは、戦争や紛争や貧困がなくならない。
そこでみんなに訊きたいことがある――」
気持はひとつだから、もうみんな、泣きそうになってる。
そこでひと息おいてキヨシローがいつもの言葉を叫ぶ。
そう、このキヨシローのいつものメッセージこそ、30年も経ったいまでも、彼が日本一のKing of Liveとして君臨し続けている理由だ。
「愛し合ってるかい?」
これほど端的な、平和へのメッセージがほかにあるだろうか。
そして、これほどの伝道師を、天が見放すわけなどないのだ。
オペラの仲間内の打ち上げがあった。
本番から早や一週間、皆それぞれの感想も冷静さを取り戻しつつ、音楽仲間ならではの意見や思いを熱く語り合った。
つみれ鍋をつつきながら、語る、語る。
店長さんから「ラストオーダーです」と声かけられて時計を見れば、飲んで食べて喋りに喋った3時間半。
やっぱり、オペラ歌うのが好きなんだなぁ、と自覚も新たに店を出れば、歩道が白くなっていた。
見上げた街灯の光を風に吹かれて斜めに横切る雪、雪、雪・・・
今年のオペラ本番も雪だった。
――本日の雪は、「真っ白な気持でまた今日からがんばれ!」てことかな。
そんな感傷にひたりつつ帰宅したら、仲間に誘われ思わずウンと言ってしまった『Carmen』の譜面が届いていた。